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お金や不動産以外を相続する場合について説明しています。墓地や仏壇、ゴルフ会員権、自動車、保険金、株式、会社、宝石、貴金属などを相続する場合の注意点やポイントについてまとめています。

2019年1月28日 月曜日

相続財産に貴金属のある場合の相続税評価の仕方

一定額以上の相続が行われる場合には相続税を支払う義務があります。

貴金属も例外ではなく、相続した際にしっかりと相続税評価を行い、その貴金属の価値を調べる必要があります。

今回は相続財産に貴金属のある場合の相続税の評価の仕方について、わかりやすく説明していきます。

相続財産の種類

相続財産とは、遺産相続の対象になる財産のことです。

相続を受けるというと一般的に現金のイメージが強いのですが、それだけではなく所有していた家や車なども相続の対象です。

また被相続人に借金があった場合、借金も相続の対象になります

例外を除き、基本的には非相続人に関するもののほとんどは相続の対象になりますので、相続財産の種類は豊富です。

相続財産の種類

  • 金融関係

現金、小切手、預貯金、株式、国債、有価証券、売掛金、貸付金等

  • 不動産関係

家、土地、山林、借地権等土地や不動産に関する権利

  • 動産

車、家具、宝石、貴金属、骨とう品

  • その他

著作権、特許権、漁業権、電話加入権、賃貸契約の権利

金融関係などはそのまま相続税評価額になりますが、不動産や動産、その他の権利などはそれぞれ相続財産として相続税評価を行う際に知識や計算が必要になりますので、注意しましょう。

例えば、不動産では住宅用または投資用など使用目的の違いや不動産がコンクリート製であるのか木材なのかなど使用建築材の違いによっても、減価償却費の計算が異なります。

相続を放棄するかそのまま相続するか決められる期間は3か月、相続する場合には相続税の手続きを行うまでの期間は10か月です

非常にハードなスケジュールになりますので、事前に相続税評価価額の計算方法等を理解しておくことが大切です。

個人で行うことももちろん出来ることですが、専門家に依頼する方も多くいます。

その場合でもある程度の書類などを揃えておく必要がありますから、しっかりと知識を身に着けておくと安心でしょう。

マイナスの相続財産

  • 借金

消費者金融からの借り入れ、銀行などからの借り入れ等

  • 未払いの税金

住民税等滞納がある税金すべて

  • 未払い金

医療費、家賃等未払いの状態のもの

相続財産とは遺産相続の対象になる財産のことですが、このように必ずしもプラスになるものだけではなく、マイナスになる相続財産というものもあります。

相続というとどうしても利益が生じるものというイメージが強いですが、実際に相続により借金を背負うことも珍しいことではないのです。

財産を相続することでマイナスになることが明らかな場合では、相続の放棄を行うこともできます。

相続の放棄とは、全体の相続を行わないということです。

家だけは手元に残したいから、それ以外の相続を放棄するというようなことはできません

財産相続は基本的に単純承認と言って、申請を行わない場合には特別な手続きなく相続することができるようになっています。

そのため、相続の放棄を行う場合には非相続人が亡くなってから3か月以内に、相続の放棄手続きを行う必要があります

こうした手続きの関係もあり、相続財産を詳しく理解しておくことは大切です。

相続財産とはお金に変えることが出来るものすべてと覚えておくと良いでしょう。

相続のできない財産

  • 墓地や仏壇、ご香典等の葬儀に関する祭祀財産

相続のできない財産というのは、相続することができないために手放さなければならない財産という意味ではなく、相続の対象にならない財産のことをいいます。

つまり相続税評価を行い、相続税に関係しない財産ということになります。

この祭祀財産は遺言書に記載がない場合には相続人の中の1人が相続することになります。

慣例的に決まっている場合が多いですが、誰が管理するのか決まらず揉めてしまった場合には、家庭裁判所に祭祀継承者決定のための調停を依頼することができますので安心です。

相続のできない財産として相続税も必要ありませんが、他の相続財産同様、相続トラブルが起きた場合には裁判手続きを利用することができるのです。

貴金属の相続税評価方法

相続財産の中に貴金属がある場合には相続税評価を行う必要があります。

この相続税評価とはどんなものかと言いますと、相続税を計算する際に必要となる金額です。

全体でどれくらいの財産を相続したのかによって、相続税を支払う義務があるのかどうか、また支払う義務がある場合にはどれくらい支払う必要があるのかが決定されます。

そのため相続財産では1つ1つその価値をはっきりさせていく必要があります。

貴金属の相続税評価は、売買実例価額または精通者意見価格等を参酌して評価することと決められています。

購入した際の金額または、専門の方にどれくらい価値のあるものであるか鑑定してもらうことで相続税評価を決めるのです。

貴金属の相続税評価方法

1.購入時の金額

2.専門家の方に鑑定して貰った金額

3.金の場合には相続開始時点の金の小売価格による

1.購入時の金額

その貴金属の購入した時期が分かっている場合などでは、通帳などに購入費用が残っていることがありますので、その金額を貴金属の相続税評価とします。

2.専門家の方に鑑定して貰った金額

購入した際の金額が分からない場合には、専門家の方に現在の価値を鑑定して貰います。

この現在の価値が貴金属の相続税評価になります。

貴金属の場合は購入から時間が経過している場合でも減価償却は行われませんので、こうした方法にて相続税評価を行うことになります。

貴金属の中でも特にブランドものの場合では、購入時にはそのデザインに価値があったため高価だったものの、現在では購入時より価値が低くなってしまっているものも多いです。

そのため、できるだけ専門家の方に鑑定をして貰い、現在の価値を正確に知ることがおすすめです。

しかし、専門家の方に鑑定を依頼するためには費用が発生する場合も多く、どちらがよりお得であるのかはしっかりと考えておかなくてはなりません。

貴金属の鑑定は購入店または買い取り専門店などで行われているため、個人で鑑定することはできませんが、鑑定する場所が定められているわけではないので、自由に鑑定を依頼することができるようになっています。

3.金の場合には相続開始時点の金の小売価格による

貴金属の中に金が含まれている場合には、当時の購入金額ではなく相続開始日の金の価格によって相続税評価を行います。

相続開始日の金の価格は、日本地金流通協会によって発表されていますので、自分自身で調べることができます。

日本地金流通協会による金の価格は買い取り価格と小売価格の2種類が記載されていますが、小売価格が金の相続税評価になります。

ただし、金の割合などが不明の場合には、専門家の方に鑑定を依頼しなくてはなりませんので注意しましょう。

貴金属に金が含まれている場合には100%金であることは非常に珍しいことですので、計算には注意が必要です。

※5万円以下の貴金属の場合

貴金属と言っても100万円もするものもあれば1万円のものもありますよね。

それらすべてを鑑定して貰い相続税評価を行うのは大変です。

貴金属がたくさんあるがどれもそれほど価値が高いものではない場合、1つ1つ相続税評価を行うのではなく全ての貴金属を家庭用財産として評価する方法や、貴金属一式5万円などと言うように1つにまとめてしまうことができます。

貴金属の相続税の税率・計算例

貴金属の相続税の税率や計算例が知りたいと考えている方は多いです。

しかし、相続税の税率は相続する財産すべての合計額によって異なるものになりますので、貴金属だけの相続税の税率や計算は行うことが出来ないと言えるでしょう。

つまり、貴金属が1,000万円でも100万円でもそのほかの状況が違えば、相続の税率や計算例は異なることになるということです。

1,000万円の貴金属を相続しても相続税が必要ない方もいれば、100万円の貴金属を相続して相続税を支払う人もいるというわけです

相続財産のすべてを合計することで相続税の税率が変化しますので、貴金属だけ相続税が高いとい心配は一切ありませんので、相続税では特定の財産だけ特別税率が高くなると言う仕組みではないので安心です。

相続税の税率を計算するためには相続税が発生する仕組みを理解しておく必要があります。

相続した財産には税金の掛からない範囲が定められています。

税金の掛からない範囲は基礎控除額と呼ばれ、相続した財産がこの基礎控除額を超えた場合には相続税が掛かる仕組みです。

相続する財産が基礎控除額以下であれば、相続した財産を申告する必要もありませんので、相続に関する税の手続きは一切必要ありません。

ただし、相続した財産のすべての手続きが不要なわけではなく、名義変更などの手続きを行う必要はあるので注意が必要です。

相続税の基礎控除額

3000万円+(600万円×法定相続人数)

次に相続する財産の相続税評価を出す必要があります。

相続税評価とは、相続した財産をお金に換算した場合、どのくらいの価値になるのかどうかを計算していくというもので、計算方法は相続する財産の種類によって異なります。

例えば、貴金属では専門家による鑑定で判明した金額が相続税評価額ですが、不動産の場合はその建物の種類により耐用年数を調べ、減価償却を行うことで相続税評価を出す必要があります。

これら計算によって導き出された相続する財産の相続評価額から、基礎控除を引いた金額がプラスになる場合になって初めて、相続税が発生します。

相続税の基礎控除額の計算は、法定相続人数さえ分かれば計算することができるものですので、まずは基礎控除額がいくらになるのかを計算しましょう。

その後、相続する財産の概算が基礎控除額相当または基礎控除額を上回るようであれば、しっかりと相続する財産すべての相続税評価を行っていくことになります。

法定相続人の数が多い場合などでは、明らかに相続する財産が基礎控除額を下回るという場合もあります

こうしたケースで法定相続人全員が納得している場合では、概算のみで相続を行うことも珍しくはありません。

相続する財産が基礎控除額を上回る場合の計算方法について説明していきます。

相続する財産から基礎控除額を引いたものを法定相続分に応ずる取得金額といい、相続税は法定相続分に応ずる取得金額にのみ掛かることになります。

また、法定相続分に応ずる取得金額によって、支払うべき相続税の税率は変わります。

相続する財産-基礎控除額=法定相続分に応じる取得金額

法定相続分に応じる取得金額

税率

1000万円以下

10%

3000万円以下

15%

5000万円以下

20%

1億円以下

30%

2億円以下

40%

3億円以下

45%

6億円以下

50%

6億円以上

55%

  • 計算例 ケース1

貴金属の相続評価額500万円、その他相続が5000万円で法定相続人が1人の場合

相続する財産-基礎控除額=法定相続分に応ずる取得金額

5500万円-3600万円=1900万円

1900万円にかかる相続税の税率は15%ですので、この場合支払う必要がある相続税は285万円になります。

  • 計算例 ケース2

貴金属の相続評価額500万円、その他相続が5000万円で法定相続人が3人の場合

相続する財産-基礎控除額=法定相続分に応ずる取得金額

5500万円-4800万円=700万円

700万円にかかる相続税の税率は10%ですので、この場合支払う必要がある相続税は70万円です。

  • 計算例 ケース3

貴金属の相続税評価額1000万円、その他相続が1000万円で法定相続人が3人の場合

相続する財産-基礎控除額=法定相続分に応ずる取得金額

2000万円-4800万円=-2800万円

この場合は相続する財産が基礎控除額を下回っており法定相続分に応ずる取得金額がマイナスになりますので、相続税を支払う必要はありません。

このように貴金属の相続税評価だけで税率や相続税の発生が決定するわけではなく、相続する財産すべてを元にして計算される法定相続分に応ずる取得金額によって課税義務が発生する仕組みになっています。

実際の計算では法定相続人が配偶者の場合、未成年の場合などによってさらに控除が受けられる可能性があります。

まとめ

貴金属の相続税評価だけで相続税が発生するかどうか、また相続税が発生する場合の税率を知ることはできません。

しかし、貴金属の相続税評価が分からないと相続税が発生するかどうか、また相続税が発生する場合の税率を求めることはできません。

貴金属の相続税評価は購入時の記録や専門家による鑑定を依頼するという方法により調べることができます。

難しい計算は必要ありませんが、鑑定する場合には時間が掛かる可能性もあります。

相続に関する手続きには期間が定められていますので、余裕をもって手続きを開始するようにしましょう。

また、相続のトラブルに巻き込まれたり、疑問点などがありましたらご気軽にご相談ください。

2019年1月28日
宝石も相続財産の一つ、相続税評価方法はどうなる?
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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