2019年1月28日 月曜日
宝石も相続財産の一つ、相続税評価方法はどうなる?
財産を相続する場合には相続税が掛かります。
これは宝石の場合も例外ではありません。
宝石の価値というのはその他の財産に比べて分かりにくく、どのように申請して良いのか悩んでしまう方も多くいらっしゃいます。
ここでは宝石を相続した場合に支払う必要のある相続税について、具体的な計算例を用いながら分かりやすく説明していきます。
一般動産の相続
宝石の相続に関する情報を調べたものの、法が見つからないと悩まれている方も多くいます。
相続は基本的に財産の種類によって税額に変動があるため、宝石と言う言葉は用いられずに一般動産の相続として説明が行われているケースが多いのです。
そのため、宝石の相続税に関する情報は非常に難しいものと感じてしまわれる方が増えてしまうので、宝石は一般動産であることをしっかりと理解しておく必要があります。
財産は4種類に分類されており、不動産、動産、債権、無体財産の4つです。
さらに、財産の種類によって細分化されていき、相続に関する税額が決定する仕組みになっています。宝石の場合は動産の中でも一般動産と言う種類の財産になります。
ですので、宝石の相続について考える際には一般動産の相続を知る必要があります。
一般動産の相続は課税対象です。
一般動産には宝石の他に自動車や家具などが当てはまります。
一般動産の相続が行われた場合は財産評価基本通達に基づいて財産の評価を行い、相続税を計算する必要があります。一般動産の財産評価は財産評価基本通達の129において“一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。
(引用:https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/06/01.htm)
税に関する情報は非常に言葉が難しく書かれていることが多いのですが、この財産評価基本通達も例外ではありません。
つまり、宝石の購入金額が分かっている場合にはそれを優先して考え、分からない場合には専門家の方に現在の価値を評価してもらいましょうと言うことです。
購入した時期から相続するまで期間があり、新品の時と同じ価格ではなくなるため、減価償却が認められている動産については、その分を引いて今の価値を求めることになります。
この減価償却方法についても財産評価基本通達の130において耐用年数省令が規定している耐用年数によって定率法を用いて計算することが決められています。
定率法とは、未償却残高×定率法の償却率によって減価償却費を求める方法になります。
そのほかには定額法と言って一定年数同じ額が償却されていくというものもあります。
定率法の特徴は、償却額が償却を始めたころが大きく、徐々にその割合が減っていくというところにあります。
そのため、一般動産の耐用年数を調べ計算する必要や定率法の償却率を調べる必要はありますが、計算式を理解していれば複雑な計算を行うわけではないので安心です。
- 減価償却の計算式
未償却残高×定率法の償却率=減価償却費
未償却残高とは前年度の金額のことで、計算スタート時は購入時の金額になります。
宝石の相続税評価方法
宝石の相続税評価方法では、宝石の価額を知る必要があり、一般動産の相続税評価方法と同じです。
購入金額が明らかな場合にはその購入金額にて、そうではない場合は専門家に依頼しどのくらい価値のあるものなのかを評価して貰う必要があるのです。
宝石の購入店が分かっている場合は購入店で、そうではない場合には宝石を取り扱っている買い取り業者などで価値を評価して貰うことができます。
宝石の価額を知る方法
- 購入した際の金額
- 専門家に依頼し現在の価値を評価して貰う
- 宝石を売却する際にはその際の金額
専門家に依頼し現在の価値を評価して貰うためには、鑑定費用が発生する場合もありますので注意しましょう。
一般動産の中には減価償却の発生するものもありますが、宝石の場合は減価償却の対象ではないため、純粋に宝石の価額によって相続税評価が行われます。
宝石の価額が100万円だからといってすぐに相続税が発生するわけではありません。
宝石の価額が1000万円でも相続税が発生しない方もいれば、宝石の価額が10万円でも相続税が発生する方がいるのです。
これは相続税の仕組みによるもので、財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合に相続税の対象になるためです。
そのため、宝石だけではなく他の財産も相続税評価を行う必要があり、相続税を支払う必要があるかどうかを調べるためにも、宝石も相続税評価を行わなければなりません。
相続税について
相続税は財産を相続したからと言って必ずしも支払う義務があるものではなく、相続した財産が一定以上の金額の場合に相続税を支払う義務があります。
そのため、相続した財産が全体でどのくらいの価値なのかどうかしっかりと調べる必要があります。
相続税が一定の金額以下の場合には申告の必要はありませんが、一定金額を超える場合では税務署に相続税の申告と納税を行う必要があります。
これは非相続人が亡くなってから10か月以内に行うことと定められていますので注意しま
しょう。
相続税の課税対象かどうか調べるためには相続した財産の価値をすべて評価する必要があります。
不動産に関する物、動産に関するものなどそれぞれ相続税評価が異なりますので気を付けましょう。
最初から精査する必要はなく概算を出し、一定額を超えるかどうか考えていくのが一般的な方法です。
- 一定額を超えた場合の相続税の計算方法
基礎控除額を超える相続による取得額 |
税率 |
1000万円以下 |
10% |
3000万円以下 |
15% |
5000万円以下 |
20% |
1億円以下 |
30% |
2億円以下 |
40% |
3億円以下 |
45% |
6億円以下 |
50% |
6億円以上 |
55% |
このように相続税は相続する財産の金額が大きければ大きいほど税率が上がる仕組みになっており、生前に相続税の節税対策を行っている方も多くいます。
特に平成27年度の相続税法の改正により、控除額が減り相続税を支払う対象になる方が増えていますので、相続税がより身近な存在になったと言えるでしょう。
基礎控除
平成27年に相続税法が改正され、このような基礎控除が設けられています。
基礎控除額以下の相続の場合では相続税を支払う義務はなく、基礎控除額を超える場合には、その超えた金額分の相続税を支払う必要があります。
基礎控除は一般的に、相続税の一定額、または相続税の基準額などと表現されることがあります。
親が亡くなり、子供2人が法定相続人になるケースで考えてみましょう。
この場合の基礎控除額の計算式は次のようになります。
3000万円+(600万円×2)=4200万円
つまり相続した財産が4200万円を超える場合には相続税が発生します。
4200万円以下であれば相続税を支払う義務はなく申告また納税を行う必要がありません。
4200万円を超える場合には、4200万円を超える金額に相続税が課税され、相続税を支払う義務が生じます。
仮に5000万円の相続があった場合には、4200万円を差し引いた800万円は課税対象になります。
1000万円以下の税率で計算されますので、800万円の10%である80万円の相続税の支払い義務が生じます。
- その他の相続税に関する控除
相続税は基礎控除が相続税を支払うべきかどうかのポイントになるため有名ですが、その他にも7つの控除があります。
- 贈与税額控除
相続開始3年以内に非相続人から贈与を受けた財産は相続の対象になります。
贈与を受けた際に贈与税を支払っている場合には、その額の相続税を支払う必要がないというものです。
生前贈与を受けた場合には、贈与税額控除を受けるようにしましょう。
- 配偶者の軽減税率
配偶者が亡くなった場合には、法定相続分または1億6000万円の軽減税率を受けることができます。
つまり、配偶者の場合は相続する財産が1億6000万円以下の場合は相続税が掛からないと言うことです。
そのため一般的な家庭では配偶者が亡くなった場合には相続税の支払いが必要になるケース
はほとんどありません。
ただし、これは軽減税率による措置ですので基礎控除以上の財産を相続する場合には申請の義務があるので注意しましょう。
- 未成年者控除
相続人が未成年の場合では、支払うべき相続税が成人になるまでの期間税額が軽減されます。
- 障害者控除
障害者の方の場合では85歳になるまでの期間は支払うべき税額が軽減されます。
- 相次相続税控除
10年間の間に2回以上の相続を受けることになった場合には、相続税が軽減されます。
- 外国税額控除
海外にある財産を相続した場合、その国の相続税を支払う必要がある場合があります。
その場合はその分の相続税は控除されます。
- 相続時精算課税制度贈与税額の控除
60歳以上の方が成人している子または孫に生前贈与する際に利用することのできる制度です。
1年間に贈与された 財産価額の合計額を基に贈与税額を計算します。
生前贈与した財産は、2500万まで贈与税が非課税になりますので、相続税を軽減することができる仕組みです。
これら控除は申請を行わなければ受けることができないものです。
こうした控除があることを知らなければ損をしてしまいます。
それぞれ申請には書類は必要ですが、こうした必要書類は年度ごとに変化している可能性もありますので、最新の情報を税務署にて確認し、書類をまとめ提出するように心がけましょう。
税に関する法や必要書類は変更することも多いため注意が必要です。
宝石相続時の計算例
宝石を相続した場合、その宝石に関して特別な計算を行う必要はありません。
宝石は減価償却できないと考えられ、その宝石の価額を調べることが必要です。
購入時の金額は非相続人の口座に情報が残っているケースもあり、購入時の金額が分からない場合には専門家に宝石の価額を査定して貰う必要があります。
宝石の価額が分かったら、今度はそのほかの財産の評価額と合算する必要があります。
相続税は合算した総額が一定金額と言われることが多い控除額を上回るのか下回るのかによって相続税の課税対象であるのか、そうではないのか分かる仕組みになっているためです。
500万円の宝石の他に4000万円の財産があったケースで考えてみましょう。相続人は子供2人であるとします。
3000万円+(600万円×2)=4200万円の基礎控除を受けることができます。
財産は宝石の価額をその他財産に合わせ4500万円ありますので計算式はこうなります。
4500万円-4200万円=300万円
300万円が相続税の課税対象となり、1000万円以下は相続税の税率が10%になります。
そのため300万円の10%である30万円の相続税を支払う必要があります。
次に500万円の宝石の他に4000万円の財産があったケースで、相続人が子供3人である場合を考えてみましょう。
3000万円+(600万円×3)=4800万円の基礎控除を受けることができます。
財産は宝石の価額をその他財産に合わせ4500万円ありますので、計算式はこうなります。
4500万円-4800万円=-300万円
この場合では財産が基礎控除額を下回っているため、相続税を支払う義務がありません。
宝石の価額が同じでその他財産が同じ場合でも、相続税の課税対象になる方とそうではない方がいるということですね。
このように、相続税は相続した財産1つの金額ではなく財産の総額で計算します。
また、相続を受ける人数などにより基礎控除額も変動するものですので、〇〇がいくらだから〇〇円の相続税を支払う義務があると言えるものではなく、しっかりと個人の状況に合わせて計算を行わなくてはならないものになっています。
まとめ
相続税というものは、1つの財産の価値だけで決まるものではなく財産の総額や相続を受ける人数によって変動するものになっています。
そのため計算が難しいと感じてしまう方も多いですが、宝石であれば専門家に価額の査定を依頼し、その金額を当てはめていくだけで良いなど、自分自身の手で計算することのできるものも多いです。
しかし、これもまた宝石が一般動産である知識などがないと難しいものですよね。
相続税を支払う義務がある場合には、その申請や納税を被相続人が亡くなってから10か月以内に行う必要があるなど、時間も限られた中で手続きを行わなくてはなりません。
10か月という期間は長いと感じる方もいるかもしれませんが、実際に相続に関する手続きを行った方の多くは時間が足りないと感じた方が多いようです。
その他の相続税に関するもの以外の手続きも並行して行っていく必要がありますので、時間的に余裕がないと感じる方がほとんどなのでしょう。
そのため相続税の仕組みを理解しておくことは大切なことになります。
相続税に関することで分からないことなどがありましたら、ご気軽にご相談ください。