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【生前贈与 】
生前贈与について説明しています。生前贈与とは、亡くなる前に子どもや孫などへ財産を贈与することです。相続税対策として生前贈与を選ぶ場合の注意点やポイントについてまとめています。

2019年2月7日 木曜日

住宅の生前贈与を制度を使って効率よく行なう方法

生前贈与は、さまざまな場面において利用することができる制度です。

生前贈与にはメリットも多く、相続よりも生前贈与を選択した方が節税対策としてよい場合があります。

また、住宅に関する生前贈与の制度を利用することで、効率よく節税を行うことも可能です。

では、住宅の生前贈与を制度を使って効率よく行うにはどうすればよいのでしょうか?

今回は生前贈与の概要から、生前贈与による住宅相続の効率のよい節税対策まで、さまざまな角度からご紹介いたします。

生前贈与とは

生前贈与とは、贈与者(財産を渡す人)が選んだ受贈者(財産を受け取る人)に、贈与者が生きている間に財産を贈与することをいいます。

このとき、贈与する金額を自由に決めることができます。

また、暦年贈与の制度を利用すれば、1人あたり年間(1年を1月1日から12月31日までとして)110万円以下であれば、非課税で受け取ることができるので、節税対策として生前贈与を行うケースもあります。

また、生前贈与を行っている場合でも、贈与者が亡くなったときは、3年前まで遡った分は生前贈与とみなされず、相続と考えられるため、相続税が課税されるという決まりがあります

生前贈与での贈与税額はどのくらい?

生前贈与には、暦年贈与の制度以外にも一定の条件を満たせば非課税で贈与を受け取れる制度がありますが、基礎控除を超えた金額には贈与税という税金が加算されます。

生前贈与をした際の贈与税額は、下記の表を使うことで計算することができます。

贈与税の速算表【一般贈与財産用】

基礎控除の課税価格

200万円以下

300万円以下

400万円以下

600万円以下

1,000万円以下

1,500万円以下

3,000万円以下

3,000万円超

一般税率

10%

15%

20%

30%

40%

45%

50%

55%

控除額

10万円

30万円

90万円

190万円

265万円

415万円

640万円

贈与税の速算表【特例贈与財産用】

基礎控除の課税価格

200万円以下

400万円以下

600万円以下

1,000万円以下

1,500万円以下

3,000万円以下

4,500万円以下

4,500超

特例税率

10%

15%

20%

30%

40%

45%

50%

55%

控除額

10万円

30万円

90万円

190万円

265万円

415万円

640万円

上記2つの表は、国税庁のホームページ「財産をもらったとき 暦年課税 暦年課税の計算<計算方法>」の贈与税の速算表【一般贈与財産用】と贈与税の速算表【特例贈与財産用】を元に作成しています。

この2つの速算表と下記の計算式を用いて、一般贈与または特例贈与財産のどちらかを受け取った場合の贈与税を算出します。

[基礎控除後の課税価格] × 税率 − 控除額 = 税額

※国税庁のホームページ「財産をもらったとき 暦年課税 暦年課税の計算<計算方法>」の「1 贈与により一般贈与財産又は特例贈与財産のいずれかのみを取得した場合」より引用

たとえば、一般贈与を受け取ったときに基礎控除後の課税価格が1,000万円だった場合、この計算式に実際の数字をあてはめてみましょう。

このとき、利用するのは、贈与税の速算表【一般贈与財産用】の基礎控除後の課税価格1,000万円以下に該当する一般税率と控除額を確認し、計算式に代入します。

すると、下記のような計算式になります。

1,000万円×40%-125万円=275万円

一般贈与の場合の基礎控除後の課税価格が1,000万円の場合、贈与税の速算表【一般贈与財産用】から一般税率が40%であることがわかります。

そして、控除額が125万円であることがわかります。それらを計算式にあてはめて計算すると、税額は275万円となります。

このように、生前贈与の税額は、簡単に計算することが可能です。

生前贈与をすることになった場合は、贈与税の速算表【一般贈与財産用】と贈与税の速算表【特例贈与財産用】と計算式であらかじめ税額を求め、どの程度の贈与税が掛かるかを確認しておくとよいでしょう。

また、生前贈与を金銭ではなく、不動産で贈与された場合、登録免許税と不動産取得税、贈与税の3種類の税金が掛かることになるので、その点は注意が必要です。

財産を生前贈与する方法

財産を生前贈与する方法ですが、基本的に生前贈与をすることに贈与者と受贈者の両者が合意していることが前提となります。

そのため、贈与者が受贈者の名義で銀行にお金を貯める名義預貯金と呼ばれるものをしている場合、受贈者が生前贈与に合意しているとみなされないこともあるので注意が必要です。

受贈者が生前贈与に合意しているとみなされないということは、贈与者が亡くなってしまった場合、生前贈与ではなく、相続だとみなされてしまうということであるため、その結果、受贈者の名義でされている名義預貯金には相続税が加算されてしまうということです。

このような状況を避けるために、生前贈与をする際には、贈与契約書など贈与が贈与者と受贈者双方の合意の元に行われていることがわかるものを用意しておくとよいでしょう。

住宅を生前贈与に使える制度

住宅を生前贈与に使える制度には、「住宅取得の際の贈与税の特例」という制度があります。

直系尊属にあたる父母や祖父母などから受贈者である子どもや孫が、住宅を購入するための資金の贈与を受ける際に、条件によって一定の金額に対して非課税になる制度のことをいいます。

ただし、平成26年以前に住宅取得等資金の非課税の適用を受けている場合は、「住宅取得の際の贈与税の特例」の適用を受けることはできないことになっています。

非課税の限度額は、住宅用の家屋の新築などに係る契約の締結日と住宅用の家屋の種類によって異なります。

契約の締結日と住宅用の家屋の種類、非課税の限度額は下記の通りです。

  • 平成27年12月31日までに締結された場合は、省エネ等住宅であれば1,500万円、省エネ等以外の住宅であれば1,000万円が非課税の限度額となります。
  • 平成28年1月1日から平成32年3月31日までに締結された場合は、省エネ等住宅であれば1,200万円、省エネ等以外の住宅であれば700万円が非課税の限度額となります。
  • 平成32年4月1日から平成33年3月31日までに締結された場合は、省エネ等住宅であれば1,000万円、省エネ等以外の住宅であれば500万円が非課税の限度額となります。
  • 平成33年4月1日から平成33年12月31日までに締結された場合は、省エネ等住宅であれば800万円、省エネ等以外の住宅であれば300万円が非課税の限度額となります。
  • また、消費税等の税率が10%の場合の非課税限度額は、上記の非課税限度額とは異なります。

消費税等の税率が10%の場合の係る契約の締結日と住宅用の家屋の種類、非課税限度額は下記の通りです。

※ただし、住宅用の家屋の新築や取得、増改築などに係る契約の締結日が平成31年4月1日から平成33年12月31日までの間であり、住宅用の家屋の新築や取得、増改築などに係る対価の額、または費用の額に含まれる消費税等の税率が10%であるときに限り、適用されます。

  • 平成31年4月1日から平成32年3月31日までに締結された場合は、省エネ等住宅であれば3,000万円、省エネ等以外の住宅であれば2,500万円非課税の限度額となります。
  • 平成32年4月1日から平成33年3月31日までに締結された場合は、省エネ等住宅であれば1,500万円、省エネ等以外の住宅であれば1,000万円非課税の限度額となります。
  • 平成33年4月1日から平成33年12月31日までに締結された場合は、省エネ等住宅であれば1,200万円、省エネ等以外の住宅であれば700万円非課税の限度額となります。

このように、契約の締結日と住宅用の家屋の種類によって、非課税限度額は異なりますが、住宅取得の際の贈与税の特例を利用することによって、大幅な節税対策を行うことが可能になります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、1年を1月1日から12月31日までとして考え、相続時精算課税を選択した受贈者がこの1年間に贈与を受けた財産の合計金額から、特別控除額である2,500万円の控除をした残額に対して、20%の税率をかけた金額が贈与税になるといった制度のことです。

また、特別控除額2,500万円は、贈与税の期限内申告書を提出した場合にだけ特別控除が適用されるので、前年よりも前に特別控除を受けている場合は、特別控除額である2,500万円からその金額を控除した残額が特別控除限度額となります。

相続時精算課税制度の場合、贈与者は父母や祖父母など受贈者から見て直系尊属の60歳以上の人しかなることができず、受贈者は贈与者から見て直系卑属にあたる子どもや孫などの20歳以上の人しかなることはできません(贈与者も受贈者の年齢も贈与を行う年の1月1日のものになります)。

また、同じ贈与者から生前贈与を受ける場合、暦年贈与の制度に切り替えることはできないので、相続時精算課税制度を利用する際は、その点に注意しましょう。

暦年贈与制度

暦年贈与制度とは、1人あたり年間(1月1日から12月31日を1年間)とした場合、生前贈与を受けた金額が110万円以下であれば、贈与税が加算されないという制度です。

そのため、受贈者が数人から生前贈与を110万円もらってしまうと、110万円を超過した分から贈与税が掛かることとなります。

ですが、暦年贈与には、贈与者が亡くなった場合、生前贈与として一部の財産を受け取り、残りを遺産として相続する方が、すべてを遺産として相続するよりも掛かる税金が安くすむといったメリットがあります。

そのため、相続税の節税対策としてよく用いられる方法でもあります。

ただし、被相続人が亡くなって場合は、3年前まで遡り、生前贈与は相続とみなれさるため、贈与税が掛からなかったとしても、結果的には3年分の相続税が掛かる可能性があります。

その他の特例

相続税には暦年贈与の制度以外にも特例があります。

まず、教育資金の一括贈与という制度があります。

この制度は、平成25年4月1日から平成31年3月31日までの期間しか利用することができませんが、最大1,500万円までであれば、贈与税が加算されないといった制度です。ただし、この制度を利用できるのは、贈与者から見て直系卑属である子どもや孫であり、30歳未満であることが条件です。

また、教育資金として利用することしかできないため、教育資金の一括贈与をされた場合は、それ以外の用途で贈与された金銭を利用することはできません。

次に結婚・子育ての一括贈与ですが、1,000万円以下であれば、贈与税が加算されません。

ただし、結婚に関しては、300万円までしか非課税で受け取ることができません。

この制度は、若年層の結婚や出産を遅らせてしまう原因である将来の経済的不安を改善するため、両親や祖父母の資産を早期に受け取り、支援をしてもらえるように平成27年4月1日に非課税措置として設けられた制度です。

この制度を利用する場合は、贈与者は受贈者である20歳以上50歳未満の子どもまたは孫の名義である金融機関の口座などに一括して、拠出する必要があります。

この制度の利用にあたって、注意が必要な点は、金融機関が領収書などを元に資金の使途を調査するため、領収書などの書類をきちんと保管しておかなければならないという点です。

また、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの期間しか利用することができないので、利用を考えている場合は早めに利用するようにしましょう。

このほか、注意が必要な点は2つあり、1つ目は贈与者が上記の期間の間に亡くなってしまった場合は、贈与ではなく、相続へと切り替わってしまう点です。

そして、2つ目は受贈者が50歳になったら終了とされ、残額がある場合は、贈与税として課税されるといった点です。

結婚・子育ての一括贈与で節税対策をしたつもりでも、場合によっては相続税が掛かってしまうこともありえるので、条件の確認はしっかり行うことが大切です。

生前贈与で節税対策をする

生前贈与には、非課税となる項目が12点あることが国税庁のホームページに記載されています。

その中でも、一般の人々が利用する可能性が高い生前贈与の方法とは、暦年贈与の制度や住宅取得の際の贈与税の特例、教育資金の一括贈与や結婚・子育て資金の一括贈与などであるといえるでしょう。

暦年贈与制度は早めに始めることで、非課税で受け取れる財産が増えます。

これは、本来、相続としてすべての財産を受け取っていたら、全額に対して掛かるはずの相続税が生前贈与分は掛からずにすむからです。

また、住宅取得の際の贈与税の特例の場合、細かい条件はあるものの、一定の条件さえ満たせば、贈与税が掛かりません。

そのため、相続する際に掛かる相続税を考えると、節税になっているといえます。

これは、教育資金の一括贈与や結婚・子育ての一括贈与についても同じことがいえるので、相続税の節税対策として、これらの特例を利用するのは節税の方法としてよいでしょう。

まとめ

このように、生前贈与には種類があり、それぞれ異なった条件があります。

住宅に関しては、「住宅取得の際の贈与税の特例」があるため、この制度を利用することによって、生前贈与を効率的に行うことができます。

また、生前贈与には非課税になる制度がいつくもあり、節税対策としても優れているため、相続で財産を渡そうと考えている場合は、生前贈与という形での財産の渡し方も視野に入れてみるとよいでしょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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