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【生前贈与 】
生前贈与について説明しています。生前贈与とは、亡くなる前に子どもや孫などへ財産を贈与することです。相続税対策として生前贈与を選ぶ場合の注意点やポイントについてまとめています。

2019年2月2日 土曜日

不動産を生前贈与する際に気をつけるべきポイント

「不動産を生前贈与したいけれど、何か気をつけておくべきことはあるのかな?」なんて、疑問に思っていないでしょうか。

不動産は高額となることが多く、何か注意しておいたほうが良いと考えている人が多いはずです。

実際、何も考えずに不動産の生前贈与を行ってしまうと後悔してしまうケースも少なくありません。

したがって、不動産を生前贈与する際に気をつけるべきポイントを確認しておくべきです。

ポイントをおさえて、後悔のない不動産の生前贈与を行いましょう。

不動産の生前贈与

不動産の生前贈与とは、土地や建物などの不動産を生きている間に誰かに贈与することです。

この場合、贈与税という税金が発生することがあります。

贈与税は贈与する財産の金額に応じて異なるので、高額な財産を贈与したいと考えているときには注意しながら行ったほうが良いです。

また、相続で財産を譲り受けた人がその相続開始前の3年以内に亡くなった人から贈与を受けているなら、贈与を受けた財産の価格をその人の相続税の課税価格に加算することになっています。

このことは、生前贈与の加算といいますが、加算された財産の金額に対応している贈与税の金額は、加算された人の相続税の計算上では控除されるので覚えておくと良いでしょう。

贈与税は、相続税を補完する役割の税金だとされています。

死亡による財産の移転があった場合には、相続税で税金を納めてもらうのが本来の形であるため、相続開始前3年以内の贈与による財産の移転は相続税の課税価格に加算するのです。

ちなみに、生前に贈与された財産を加算するケースでは、相続の段階ではなく贈与の段階での価格が加算する金額となります。

また、贈与税は課税される財産が大きくなるほど高い税率が適用されることも覚えておくべきです。

この制度は超過累進課税制度という名前がついています。

税率は最低で10%、最高で55%です

最高の税率になると受け取った財産の半分以上を税金で納めなければならないので、節税できるならしておくといいでしょう。

生前贈与とは

そもそも生前贈与とは、持っている財産を生きている間に誰かに贈与することです。

自分の生きているうちに配偶者や子供たちに財産を渡しておきたいというときには、生前贈与を行うことが良いとされています。

ただし、贈与には贈与税という税金がかかるので注意しておかなければなりません。

贈与税の申告をするときには、贈与をした人の所在地ではなく、贈与を受けた人の所在地を管轄している税務署に贈与税の申告書を提出します。

贈与を受けた額が基礎控除以下であるのであれば、贈与税の申告は必要ありません。

贈与税の基礎控除の金額は、1年間に110万円となっています

したがって、1年間で80万円の贈与を受けたとしても、贈与税の申告はしなくて大丈夫です。

しかし、贈与税の配偶者控除や相続時精算課税制度というような特別な制度を利用したいと考えているのであれば、贈与税の金額が0円だとしても贈与税を申告しなければなりません。

贈与税の申告期限や納付期限は、贈与を受けた年から次の年となる2月1日から3月15日の間となっています。

申告期限までに申告しなかった場合や、実際に贈与を受けた金額より少ない金額で申告した場合には本来の税金以外に加算税がかかるので注意が必要です。

また、納税が期限に遅れた場合も追加の税金が必要となってきます。

納税が期限内にできなかった場合は、納税が遅れている金額に対してペナルティのような要素を持つ延滞税がかかるのです。

したがって、加算税や延滞税がかからないように気をつけておきましょう。

生前贈与のメリット

生前贈与を行うことによって、相続税の節税が行えることがあります。

贈与税には基礎控除という制度があるのでそれを上手く活用すれば相続税もおさえることが可能です。

相続税を節税するためには、贈与税の基礎控除となる1年間に1人あたりで110万円の控除金額を活用することが良いとされています。

たとえば、配偶者と子供2人の合計3人に対して110万円ずつ10年間の期間で贈与を続ければ、3,300万円もの贈与が税金をかけずに行えるのです。

もしも合計人数が3人で5年間の贈与だったとしても、1,650万円もの贈与に税金がかかりません。

ただし、このような連続している贈与は連年贈与と呼ばれ、定額贈与として判断される可能性があります

毎年贈与税の無課税の範囲として、身内の1人に110万円を10年間贈与し続けた場合、税務署は10年間にわたって1,100万円を受け渡すという権利を1年目に贈与したものだと考えて、その1,100万円を贈与税の課税対象とすることがあるのです。

贈与税の課税対象は、不動産以外にもあるので、不動産の贈与税を下げたければ他の財産をできるだけ無課税で贈与しておくことが重要となりえます。

したがって、税務署から連年贈与と判断されないためには、贈与する金額を毎年同じだけの金額にしないことや、贈与するタイミングを毎年変えること、贈与を行う度に贈与契約書を作って個別の贈与だと考えてもらうことなどがあるので覚えておきましょう。

不動産を生前贈与するメリット1:「住宅取得等資金の贈与税の非課税」の適用

では、実際に不動産を生前贈与するとどのようなメリットが得られるのかについてご紹介したいと思います。

まず一つ目に、不動産を生前贈与することで「住宅取得等資金の贈与税の非課税」の適用対象になる点が挙げられます。

「住宅取得等資金の贈与税の非課税」というのは、平成27年1月1日~令和3年12月31日に両親・祖父母などから、自身の住居の取得を目的として資金を贈与された場合、要件を満たせば限度額内の贈与税を非課税にできる制度のことです。

この制度を利用する場合の非課税限度額は、消費税率10%なら契約締結日が平成31年4月1日~令和2年3月31日であれば省エネ等住宅で3,000万円、それ以外の住宅で2,500万円です(非課税限度額は契約締結日や消費税率、省エネ等住宅かそれ以外か、などの条件によって変わります)。

さらに、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」が適用された後の残額には、基礎控除の110万円、あるいは相続時精算課税の特別控除2,500万円が適用可能です。

仮に3,000万円の「住宅取得等資金の贈与税の非課税」の適用を受けるとすると、「非課税枠3,000万円+(基礎控除額(110万円)もしくは相続時精算課税特別控除(2,500万円))」、つまり最高5,500万円までが非課税となるのです。

「住宅取得等資金の贈与税の非課税」を使うには、受贈者要件および家屋の新築・取得または増改築等の要件(床面積、増改築の工事費用など)を満たす必要がありますが、生前贈与によって不動産を譲り渡すことで贈与税の非課税枠を使うことができれば、それだけ節税が可能となるのです。

 

不動産を生前贈与するメリット2:「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」の適用

婚姻関係が20年以上となる夫婦間で不動産の生前贈与が行われた場合、110万円の基礎控除に加えて、最高2,000万円までの「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」の適用が受けられます。

生前贈与の実施から3年以内に相続が発生した場合、生前贈与を受けた財産は相続財産として相続税の課税対象となりますが、配偶者控除の適用を受けた財産はこの対象になりません。

この「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」を受けるには、「生前贈与が夫婦の婚姻期間が20年以上経ったのちに行われたこと」という要件以外にもいくつかの要件を満たす必要があります。

まず、配偶者より生前贈与を受けた財産が、 人が住むことを目的とする不動産、または居住用の不動産を取得する目的で贈与された金銭でなくてはなりません。

また、生前贈与を受けた年の翌年3月15日までに、生前贈与を受けた者が実際にその生前贈与された住宅もしくは金銭で取得した住宅に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであるということも必要です。

現在住んでいる住居に今後も住む予定があり、婚姻関係が20年以上ならば、生前贈与によって配偶者控除適用の検討をしてみることをおすすめします。

 

不動産を生前贈与するメリット3:将来不動産の価値が上がり、相続税が高くなる可能性があるとき

不動産を相続によって取得した場合、相続税は相続発生時の不動産の評価額を基準にして計算されます。

しかし、あらかじめ不動産を生前贈与しておけば、相続税額の算定には生前贈与を受けた時点での評価額が使われます。

将来的に不動産の価値が上昇し、相続税が高くなってしまう可能性が考えられるとしても、早めに生前贈与しておくことで不動産価値を低く抑えることができるのです。

不動産を生前贈与する場合、利用可能な制度として「相続時精算課税制度」があります。

「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の父母、もしくは祖父母から、20歳以上の子・孫に対し生前贈与を行った場合に利用できる制度です。

子・孫に生前贈与を行う場合、贈与税として生前贈与を行った金額から特別控除の2,500万円を差し引いた額に対し一定の税率(20%)が課税されますが、支払った贈与税は相続税額から差し引くことができます。

将来的に価格の上昇が見込まれる不動産を持ち続けて、いざ相続が発生したときに高い相続税を払うことになるリスクを回避するためにも、価格の低いうちに生前贈与することは、価格上昇分の相続税を節税できメリットが大きいといえます。

ただし、生前贈与する際に相続時精算課税制度の利用を選択したら、その後に選択を取り消すことはできませんので注意しましょう。

 

不動産を生前贈与するメリット4:収益性のある不動産を生前贈与し、収益を相続ではなく直接相続人のものにする場合

賃貸マンションや賃貸ビルなど、家賃収入が発生するような収益性のある不動産を所有している場合、その家賃収入は相続財産となり、相続税の課税対象に含めます。

ところが、このような収益性のあるマンションやビルを子や孫に生前贈与しておけば、家賃収入は蓄積されず相続財産とはみなされませんし、収益を直接的に子や孫など相続人のものにすることが可能となるのです。

不動産を生前贈与するにあたって相続時精算課税制度を利用した場合、相続発生時に贈与を受けた不動産も相続財産に含められることになりますが、家賃収入は相続人のものとして課税対象から外されるので、生前贈与せずにマンションやビルを持ち続けたケースと比べて相続税を節約できます。

さらに、生前贈与によって取得した賃貸ビル・マンションから発生する家賃収入は、相続税支払いの原資として利用することもできます。

しかし、生前贈与によって収益性のある不動産を贈与する場合、注意の必要な点もあります。

親から子へ賃貸マンションなどを生前贈与する時に、預り敷金や預り保証金などの債務を一緒に贈与してしまうと、負担付贈与(受贈者に一定の債務を負担させることが条件となる財産の贈与)とみなされ、不動産の評価額が生前贈与を行った時点での時価となってしまうのです。

贈与によって不動産を取得する場合、一般的に路線価や固定資産税評価額を基に評価額が決められ、その評価額は時価の7~8割程度となっています。

そのため、時価での評価額となると、相続時精算課税制度の特別控除2,500万円を超えてしまうケースがありますので、生前贈与を行う際に時価が高いようであれば、預り敷金や預り保証金は建物所有者から受贈者(子や孫)へ別途支払い、通常の生前贈与として負担を付けない贈与を行うとよいでしょう。

 

不動産を生前贈与するメリット5:被相続人の死後の相続人同士のトラブルを防ぐ

被相続人が生前に不動産を生前贈与し、名義変更を見届けておけば、相続人が不動産を巡り「争族化」しなくて済みます。

相続の場合には、生前贈与と違い、不動産は相続登記しないままでも、相続税の申告のように期限やペナルティーが設けられていませんので、被相続人名義のまま置いておくことができます。

しかし、相続人が土地や建物を持て余していた中、急に購入の申し出があった場合などは、相続人名義にしておかないと売却できませんので、相続登記から始めなければならず、タイミングを逸してしまうかもしれません。

また、複数の相続人がいた場合に、その相続人が亡くなってしまうと、さらにその相続人がいることになるので手続きが複雑化します。

さらに、不動産を全ての相続人が相続分に応じて共有している状態になりますので、債務を抱えた相続人の持ち分が差し押さえられたり、共有の登記が行われたりして共有持ち分を売却されてしまう可能性もあるのです。

このように、不動産を生前贈与しておくことは、被相続人が亡くなった後の相続人間のトラブルを回避することにもつながるのです。

 

不動産の生前贈与の注意点

不動産を生前贈与するには、贈与契約書を作成、名義変更登記の手続きをし、贈与税申告を行う必要があります。

不動産を相続するのではなく、生前贈与すれば多くのメリットがありますが、逆にデメリットといえるものもあります。

両方をしっかりと認識した上で、不動産は相続をするのか、生前贈与をするのか、もう一度検討してみましょう。

 

贈与税の申告期限は相続税の申告期限とは異なる

相続税の申告・納付期限は、相続の開始から10カ月と分かりやすいのですが、贈与税の場合の申告・納税期限は、贈与を受けた次の年の2月1日から3月15日の間です。

相続税の場合と同様に、生前贈与を行って贈与税の申告・納付期限を守らなかった場合には、ペナルティーがあります。

まずは、申告漏れをしてしまっていた、そもそも申告していなかった、隠ぺい・詐称した場合に加算税が掛かります。

■申告漏れをしていた場合:過少申告加算税

申告期限内に申告したものの、贈与を受けた不動産の記載が漏れていた場合などは、修正申告か更正が必要になります。

新たに申告した納付が必要な税額に対して「過少申告加算税」を支払わなければなりません。

その税率は10%で、この税額が期限内に申告しなくてはいけなかった税額または50万円のどちらかを上回っていた場合には、その超過分に対して15%の税率が課せられます。

■申告していなかった場合:無申告課税

生前贈与を受けたものの、期限内に申告書を提出せず、期限後に申告した場合は「無申告課税」が課せられます。

申告していなかった場合は税務調査が入りますが、その調査前に自ら申告をすると加算税率は5%、税務調査後に申告すると、納税額のうち50万円までは15%、50万円を超える部分には20%が課せられます。

■隠ぺい・詐称した場合:重加算税

申告漏れ、また申告しなかった場合に、隠ぺいや詐称などを行うと、重加算税としてより高額な税金が課せられます。

  • 過少申告加算税が課せられる場合に税金額を隠ぺいもしくは詐称した:35%
  • 無申告加算税が課せられる場合に税金額を隠ぺいもしくは詐称し申告した:40%

 

不動産の生前贈与も遺留分減殺請求の対象になる可能性がある

例えば、父親が長女へほぼ全ての金融資産や不動産などを生前贈与していた場合などは、妻や長男、次女など、法で定められた相続人がほかにいる場合は、その相続人の遺留分を侵害しているともいえます。

しかし、このような場合でも、生前贈与は法的に有効です。

遺言書が遺留分を侵害するような内容だった場合と同様に、生前贈与によって遺留分を侵害された相続人は「遺留分減殺請求」の意思表示を行い、ほかの相続人に行われた生前贈与から遺留分を取り戻すことができます。

具体的には、口頭や電話、メールなどで意思表示を行って、協議や調停、裁判などで生前贈与に対する遺留分減殺請求を行っていきます。

ただし、この請求には時効があります。

相続人が、自分の遺留分を侵害されていると知った時から1年、相続人が遺留分を侵害されていることを知らなかった場合や、相続の発生を知らなかった場合は、被相続人が亡くなってから10年です。

不動産などの生前贈与を受けた人は、10年間黙っていれば、時効になるということです。

被相続人が所有を隠していたような不動産をこっそり生前贈与された相続人などは、その生前贈与に対する遺留分減殺請求を免れる、というようなこともあり得そうです。 

 

不動産の生前贈与では、贈与税以外に登録免許税や不動産取得税が発生する

不動産の生前贈与を受ける人には、これまでお伝えしたきたように贈与税が課せられるほか、不動産ならではの税金、登録免許税や不動産取得税が掛かります。

■登録免許税

不動産の名義変更を行う場合に支払う義務のある国税です。

生前贈与された不動産の登録免許税は、固定資産評価額の2%の金額と定められています。

不動産を相続した場合の登録免許税率は0.4%ですので、生前贈与のほうが高いです。

■不動産取得税

不動産が所在する都道府県が課税する都道府県税です。

この税は、生前贈与のほかにも売買や交換、贈与で取得した場合に課税されますが、相続などで取得した場合には課税されません。

不動産取得税の税率は、土地と建物ともに3%です(住宅ではない建物の場合には4%)。

令和3年3月31日までに宅地を取得した場合は、その評価額の2分の1を不動産所得税の標準額とする特例があります。

また、以下の中古住宅を取得した場合にも特例があります。

  • 床面積が50㎡以上240㎡以下
  • 取得した人が自分の居住用住宅にすること
  • 新築から20年以内の住宅または新耐震基準を満たす

建築年により、控除額が異なります。

  • 平成9年4月1日以降に新築:1,200万円の控除
  • 平成元年4月1日から平成9年3月31日に新築:1,000万円の控除
  • 昭和60年7月1日から平成元年3月31日に新築:450万円の控除

 

不動産を生前贈与する方法

ここからは、不動産を生前贈与する方法を確認していきます。

贈与の際には税金がかかることはわかってもらえたと思いますが、制度を活用すれば節税できることもあるので安心してください。

制度を活用する方法を見る前に、基本的な不動産の生前贈与の方法を確認しましょう。

不動産の生前贈与を行う際には、以下の2つのことが必要です。

  • 贈与契約書の作成をする
  • 名義変更登記をする

これらのことを行えば、無事に不動産の生前贈与ができます。

それぞれのことについて、順番に確認していきましょう。

贈与契約書の作成をする

不動産を生前贈与するなら、贈与契約書の作成が必要です。

贈与契約書には、贈与者と贈与を受けた受贈者が贈与契約を結んだことを記載します。

その際には、土地や家屋の所在や面積などを書かなければなりません。

贈与契約書に書く土地や家屋についての正確な情報は、登記事項証明書の通りに書けば大丈夫なのでわからなくても安心してください

登記事項証明書では、土地なら所在や地番、地目、地積を確認し、家屋であれば所在や家屋番号、種類、構造、床面積を確認します。

ちなみに、贈与契約書に書くべき内容は土地や家屋の情報以外にもあるので注意が必要です。

たとえば、登録免許税や所有権移転登記の手続きにかかるお金は誰が負担するのかを書いておかなければ、実際に贈与をしてから揉めることになってしまいます。

したがって、「贈与者は受贈者に対し、平成30年◯月◯日までに本件の不動産を引き渡して、所有権移転登記の手続きを行い、そのために必要な費用はすべて受贈者のものとする。」などというように書いておくべきです。

書面にしてしっかりと残しておけば、不動産を生前贈与してから揉めるということもなくなります。

口約束で話しておいたから大丈夫と考えている場合も、万が一のトラブルを避けるために書面として残しておいてください。

そうは言っても、贈与の契約自体は贈与する人と贈与される人の両方の合意があれば口約束でも贈与自体は成立します。

しかし、贈与契約書を作って残しておくことで、口約束をした本人たち以外にも贈与契約を行ったことを証明できます。

たとえば、贈与税について税務署に調査されたときに、贈与契約書がなければ贈与がどのように行われたかがわかりません。

そのようなときのために、契約書として書面を残しておくことが大切です。

ちなみに、ビジネスなどの場面で契約書をよく作成している人は、収入印紙が必要になるのではないかと疑問に思ったかもしれません。

一般的な贈与契約書に収入印紙は必要ないのですが、不動産の生前贈与の際の契約書には200円の収入印紙が必要とされています。

なぜなら、不動産の贈与契約の書面は印紙税の課税対象と決められているためです。

収入印紙の金額は本来であれば取引の金額によって変わるのですが、贈与はお金を支払うことなく行われるものなので、取引金額が0円だとして収入印紙の金額が200円となります。

名義変更登記をする

不動産を生前贈与するのであれば、名義変更の手続きをしなければなりません。

名義変更の手続きを、名義変更登記といいます。

名義変更登記をしておかなければ、不動産を譲り渡したと自分たちでは思っていても、客観的には贈与のことがわかりません。

不動産の名義変更登記には、さまざまな書類が必要となります。

たとえば、贈与する側なら、以下のような書類が必要です。

  • 登記識別情報
  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 本人確認書類

また、贈与をしてもらう側なら、以下のような書類が必要です。

  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 住民票
  • 本人確認書類

以上のような書類を準備した上で、法務局に行って手続きを行わなければなりません。

印鑑証明書や住民票は、発行してから3ヶ月以内などの制約があるので事前に法務局に確認しておいたほうが安心です

不動産の名義変更登記は専門家でなくとも行うことができますが、手間や時間がかかってしまいます。

もしミスがあれば、何度も法務局に行くことにもなってしまうのです。

少しでも不安があるのであれば専門家に相談したほうが安心できるでしょう。

専門家に相談すれば、必要な書類の収集もできる範囲で手伝ってくれることがほとんどです。

せっかく不動産を生前贈与するなら、失敗せずに安心して行えるようにしましょう。

制度を利用して節税をする

不動産の生前贈与を行うのであれば、節税のための特例を行うと税金がおさえられるので安心です。

たとえば、相続時精算課税制度という制度があります。

贈与税の課税制度には、歴演歌税制度と相続時精算課税制度の2つの制度があります。

暦年課税制度とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計された金額から、基礎控除の110万円を控除して差し引いた残りの金額に課税するものとなっています。

相続時精算課税制度は、生前贈与による資産の移転を円滑にすることを目的として作られた制度です。

相続時精算課税制度は、贈与のときに贈与財産に対する贈与税を納税して、その贈与をした人が亡くなったときに、贈与財産の金額と相続財産の金額を元に計算した相続税額の金額から、すでに納めきっている贈与税の金額を差し引きます。

この相続時精算課税制度を利用することによって、不動産の生前贈与の際に節税できることがあるので覚えておくと良いです

なぜなら、贈与を受けた段階の不動産の価格で税金が計算されるので、現段階では安い土地であっても、将来的には値上がりが予想されるというときに相続税として納めるよりも安く済む可能性があるからです。

土地や家屋の値上がりについては素人では判断しにくいので、専門家に相談すると安心です。

ちなみに、一度、相続時精算課税制度を利用するとその後に同じ贈与者から贈与をされても暦年課税制度は利用できないので気をつけてください。

不動産の生前贈与をする際のポイント

不動産の生前贈与を行うのであれば、まずは税金についてしっかりと考えることが大切です。

何も考えないまま土地や家屋を贈与すると、贈与税が予想以上に高額になる可能性があります

したがって、できるだけ節税のことを考えながら不動産の生前贈与を行うべきです。

そうは言っても、税金のことは難しくてわからないという人も多いと思います。

特に、相続時精算課税制度を利用するべきかどうかは悩ましい問題です

不動産の生前贈与をするときは、節税や手続きについて専門家に相談しながら行うことによって安心して贈与ができるので、無理せず専門家を頼りましょう。

せっかくの財産を贈与するのに、あとあとトラブルになっては台無しです。

そのようなことがないように気をつけてください。

まとめ

不動産は高額となることが多く、生前贈与の際には気をつけておくべきポイントがあります。

実際に、何も考えずにとりあえず不動産の生前贈与を行ってしまって後悔してしまうケースも少なくありません。

しかし、不動産の生前贈与にはメリットもあるので、行ったほうが良いことも多いです。

したがって、ポイントをおさえて、後悔のない不動産の生前贈与を行いましょう。

もしも不動産の生前贈与について不安があるのであれば、専門家に相談すると安心して贈与を行えます。

2019年2月2日
孫への生前贈与で相続税対策をする方法
2019年2月2日
住宅の生前贈与を制度を使って効率よく行なう方法
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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