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【相続の基礎知識 】
相続について基礎知識を説明しています。相続とは、相続の手続き、生前にできる相続対策など、相続について知っておくべき情報をまとめています。

2019年6月12日 水曜日

相続税における代償金とは?

遺産相続で最もよく揉めるケースの一つに、遺産分割があります。

遺産分割の方法は3つありますが、そのうち今回は代償分割について解説していきます。

 

代償分割は、現物で分けることの難しい相続財産を一人が相続する代わりに、他の法定相続人に対して、その対価を支払うという分割方法です。

遺産分割の種類、どのような場合に代償金が発生するのか、代償金が発生するケースやよくあるトラブルについても解説します。

相続税における代償金とは?どんなケースで発生する?

代償金(代償財産)とは

親族が死亡した場合、相続が発生します。相続の手続きは、死亡から10か月以内に申告しなければなりません

その際、一番の問題となるのが、相続人の遺産分割です。故人が遺言を残していれば、原則それに従って相続が進みますが、遺言がない場合も多くあります。

 

遺産は自宅と現金のみというケースが多い中、相続人が複数名いると、それをどのように分配すればよいのか、親族間で揉めることがあります。

 

例えば、自宅には故人の配偶者と長男の家族が同居していて、今後もこれまで通り住みたいという事であれば、自宅とその土地は、配偶者と長男家族が相続することになるでしょう。

兄弟がいる場合、問題になるのが他の兄弟の取り分です。長男が家屋を相続したため、次男、三男が現金を分配・相続するとなると、家屋と現金との価値に差が生じ、それが原因で兄弟の間で不公平感が生まれることがあります。こうしたケースに対応するため、代償分割という制度があります。

 

代償分割とは、現物分割が難しい場合に、相続人が相続財産を土地・家屋などで取得し、他の相続人に対しては法定相続分の現金を支払うことで、公平性を保つ方法です

遺産の内、ほとんどが自宅であるという例は、相続の際に数多く見受けられるケースです。

不動産は金銭に換金しない限り、分割しにくい財産であるため、不動産を相続した人のみが利益を得てしまい、他の相続人に不公平感が生じます。

 

遺産が自宅等の不動産と預貯金のみの場合、相続人が不動産を相続し、他の相続人に対しては法定相続分に値する金銭を支払います。これが代償分割であり、支払う金銭を代償金或いは代償財産といいます。

遺産分割の種類

遺産分割には3種類があります。

 

【現物分割】

土地・家屋・現金が遺産であった場合、相続人の1人が土地・建物を、他の相続人が預貯金を相続します

しかし、土地・建物と預貯金の価値が必ずしも一致するとは限らないため、不公平な分配になる可能性があります。

 

【換価分割】

土地・家屋など財産の全てを現金化し、相続人全員で分配する方法です

相続人それぞれが法律に基づいて相続できます。

その一方で、住宅が遺産として残ってい場合、例えば故人の配偶者や、同居する長男夫婦等がその家に住み続けたいと希望している場合、家を換金することができなくなり、換価分割はできなくなります。

 

【代償分割】

換価分割ができない場合に役立つのが代償分割です。

代償分割においては、1人の相続人が遺産を相続し、その人が他の相続人に法定相続分の対価分の金銭を支払う方法です。

換価分割のようなケースの場合、建物にそのまま住み続けたい相続人が自宅の売却に反対するのであれば、建物を相続した相続人が他の相続人に対して代償金を支払う方法です

代償金が発生するケース

相続人が上記の現物分割や換価分割を希望しない場合、代償分割が採用されます。

遺産が預貯金のみであれば、法定相続分の相続を容易に受けることができます。

しかし、遺産とは、自宅や預貯金のみではありません。以下のようなものもあります。

  • 農業用地
  • 事業用地
  • 不動産
  • 自社株
  • 高価な骨董品や美術品

例えば、故人の事業や仕事を引き継いだ相続人が、自社株、農業用地、事業用地を相続し、他の相続人には、法定相続分の対価を支払うといったケースがあります。

自社株や仕事上の用地を他の相続人にも分割してしまうと、事業の妨げになるリスクがあるため、1人の相続人が継承するのがベストな方策です。

ただし、現物資産を相続する人が資産を十分に持っていないと代償金が支払えません。その点もチェックポイントとなります。

 

代償分割をする場合に、自分以外の相続人に渡すものは、現金以外も認められています。本人が所有している他の不動産でも問題ありません。

しかし、代償金の支払いに現金ではなく不動産をあてがった場合は注意が必要です。不動産を売却し、その売却金で代償金を支払ったと評価されるので、不動産を譲渡した側の相続人に、相続税とは別に譲渡所得税が発生します。

代償金が発生する具体例を説明する

代償金が発生する例を挙げてみましょう。

 

【例1】

長女が6,000万円分の土地を、次女が3,000万円分の建物を相続したとしましょう。

この場合、長女は次女より3,000万円分多く相続することになります。

法令では、兄弟姉妹は均等に相続することになっているので、これでは不公平になります。

従って、長女は、次女に1,500万円の現金を渡すことにより、双方が4,500万円ずつ相続することになり公平な分割となります。

 

【例2】

3,000万円の現金と1億円相当の自社株を持っていた人の遺産を相続する場合で、相続人が2人います。会社の経営を引き継ぐ方が自社株を相続したいと思っています。

この場合、経営の後継者が自社株を相続し、もう1人が現金を相続します。自社株を相続した相続人は、もう1人に対し3,500万円の代償金を支払います。

 

【例3】

故人の遺産のほとんどが事業用不動産だった場合で、相続人が複数人いるケースです。

この事業用不動産は、事業を継ぐ相続人が一人で相続したがっています。

結果、事業の後継者たる相続人が不動産を相続し、他の相続人には、代償金を支払うことで合意しました。

 

このように、代償金は、相続の対象が分割しづらい不動産や株などの財産である場合に、しばしば適用されます

代償金をめぐってトラブルになる場合も

代償分割をし、代償金を支払うことで、全ての問題が解決するように見えますが、実際にはトラブルが発生することもあります。

代償金が支払われないケース

通常、代償分割を行う際には、代償金がきちんと支払えるかどうかを確認するために、預貯金の残高を表す通帳のコピーや残高証明書を提示します。

しかし、実際は一時的な預金残高ですから、偽装することも可能です。

これにより、実際には支払能力がないにもかかわらず、資産の共有持分移転登記手続きが行われてしまえば、代償金が支払われないことがあるのです。

 

このトラブルを防ぐには、共有持分移転登記手続きと代償金の支払いを同時に行うことが重要です。そうすることで、代償金が支払われないということは起きません。

また、先に相手の代理人口座に支払いをしてもらい、その上で手続を進めるという方法もあります。

 

最終手段として、代償金の支払いをしないことを理由に、不動産を差し押さえすることもできます

もちろん、これはあくまで最終手段ですから、その前に双方でトラブルがないような手続き方法を選択しましょう。

評価方法がトラブルになるケース

不動産を代償分割する際、必ず行わなくてはならないのが、不動産の評価です。

不動産の評価方法は多用であるため、これが相続人の間でトラブルとなることが多々あります。

 

また、評価方法が決まったとしても、それを評価する不動産会社や専門家によっても金額が異なる場合があるため、会社の選定も揉める原因となります。

これを防ぐためには、第三者である専門家に相談をし、きちんとフェアな評価方法を双方で確定させ、穏便に代償分割する必要があります

相続の分配や相続税で困ったときは専門家へ相談を

相続のトラブルはたくさんありますが、中でもこの代償分割におけるトラブルは非常に多いです。不動産のように価値が画一でなく、双方の意見によって判断が分かれるポイントがたくさんあることが原因です。

このような場合は、迷わず専門家や相談できる機関に話をするのが懸命でしょう

 

ここでは、実際に相続税で悩んだ際にどのような機関や専門家に相談できるのかをご紹介していきます。

税務署

税務署は、最も相談しやすい機関と言えます。

国が運営しているため、信頼ができること、無料で相談に応じてくれること、いつでも相談できることがメリットです

一方で、難しい計算が必要な場合や、長時間の相談が必要な場合は、税務署に相談することは向いていません。

また、税務署は国が運営しているため、正確な知識は得ることはできますが、実際にどのように節税対策を行うべきか、相続税を圧縮する方法などは教えてもらうことができません

法テラス

通称法テラスと呼ばれる、日本司法支援センターという機関をご存知でしょうか。

もとは国が設立した機関であり、法的なトラブルが発生した際に、解決の方向性を示してくれる存在です。

 

窓口でも電話でも相談することができ、同じ問題であっても3回までは無料で相談に応じてくれます。法テラスはあくまで問題の解決をしてくれるというより、どうすれば問題が解決するのか糸口を探してくれる機関です。状況の整理ができていない場合に利用するのも有効です。

 

法テラスには、弁護士や司法書士を雇うために金銭面で壁にぶつかった場合に、それらの費用を立て替てくれる制度があります。金銭的に困った状況でも相談を受けることをおすすめします。

税理士

税理士は税務の専門家ですから、当然今回のような代償分割のケースにも対応してくれます。

税理士は、相談に乗ってくれることはもちろんのこと、税務の代行をしてくれたり、書類の作成を行ってくれたりと、実生活でなかなか時間のとれない忙しい方には便利なサービスを提供してくれます

 

また、税理士に相談することで、代償分割における節税対策の方法や、実際に相続人同士でどのように話し合いを進めていけば良いかなど、実践的なアドバイスもらえることがあります。

司法書士

司法書士は、様々な暮らしの問題を解決してくれる法律専門家です。司法書士の業務は多岐にわたります。

例えば、土地や建物、会社や法人を登録する際に必要な「登記」を請け負ってくれ、今回のテーマである相続や遺言に関する業務も相談することができます。

 

相続の手続きに際しては遺言書の正当性を吟味する、遺言の内容を執行する遺言執行者を選ぶ手続きや、相続放棄の手続きをはじめ、代償分割に必ず必要な遺産分割協議書の作成もしてくれます。

 

税理士との違いは、税理士が税務の専門家であるのに対し、司法書士は法律の専門家です。つまり、税理士と司法書士にはそれぞれの役割があります。しかし、密接に絡む業務も多々あるため、協働して働く場合もあります。

 

いずれにしても、遺産相続では、本来誰もが円満に相続の手続きが終わることを願っています。そのためにも税理士や司法書士を含め、第三者に意見を求めて、トラブルを少しでも減らすことは重要です

まとめ

ここまで、遺産分割の一つである代償分割、代償金について解説してきました。

代償分割をする必要が出てきた場合、どんなに仲が良い兄弟や親戚であっても、トラブルが発生し、場合によってはそれ以後関係が悪くなることもあります。

 

この記事でご紹介した内容を参考に、先回りをして事前にトラブルになりづらいスキームで代償分割の手続きを進めていくことをおすすめします。

 

また、分からないことがあれば、無料で相談できる窓口や専門家もいます。自分で解決しようとせず、第三者に意見を求めましょう

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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