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【相続の基礎知識 】
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2019年5月15日 水曜日

相続財産管理人とは?|選任が必要な場合と予納金を解説

皆さんは、相続を放棄したい時、その権利に伴う義務があることをご存知ですか。

相続する人が存在しない場合や、相続を行わないとした場合などでその相続財産の管理が必要となります

例えば、亡くなった人からお金を返してもらいたい場合もあるかもしれません。

または遺言により相続財産の一部を受け取りたい場合、相続放棄された財産については誰に言えばいいのでしょうか。

そんな時に「相続財産管理人」が管理を行います。

この記事ではその相続財産管理人が必要となる場面や、何を行うのかなどについて詳しく見ていきましょう。

 

相続財産管理人とは

相続財産管理人というのは、亡くなった方に相続人がいない場合に、その方の相続財産を管理清算する人のことを指します

通常誰かが亡くなり相続の必要性が出てきた際は、民法の定めにより「相続人」が相続財産を引継ぎ管理します。

しかし独り身で相続人に相当する人がいない場合、相続人が遺産の相続を放棄した場合は、誰も遺産を相続財産を管理できません。

ですので、利害関係人や検察官が相続財産管理人を擁立するため家庭裁判所へ申し立て、相続財産管理人に遺産を管理させます。

 

相続財産管理人が必要な理由

民法940条で「相続財産の相続を拒否した者はその相続財産の管理を誰かが始めるまでは管理を継続しなければならない」と定めています

民法第951条や952条で「相続人のいない相続財産は法人とし、それに相当する時は相続財産の管理人を立てなければならない」と決められています。

相続をしないとした際でも、その相続人が財産を放棄し管理しない場合、相続人は法律違反で罰せられます

このような法律があるため相続財産管理人を擁立し、管理を進めていくことが必要なのです。

 

選任する必要がある場面

相続財産管理人の選任が必要となる場面は4つに分ける事が出来ます

ここからは、それぞれの場面について詳しく見ていきましょう。

 

法定相続人がいないとき

法律で定められた相続人のことを法定相続人と言います。

相続財産管理人はこの法定相続人が存在しない場合に必要になります

法定相続人には順位があり、下位順位の者は、上位順位の者が死亡や相続放棄をしない限り相続権はありません。

被相続人の相続手続きにおいて、選任申し立てを行う利害関係人や検察官、法定相続人が本当に存在しないのかどうか確認する必要があります。

法定相続人の存在の有無は戸籍謄本で明らかになります

したがって、亡くなった方の「生を受けてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本」を集めて確認します。

法定相続人の存否が不明な時ではなく、いないと分かっている場合に相続財産管理人が求められます。

 

法定相続人が全員相続放棄したとき

法定相続人に該当する全員が相続を放棄した場合も、相続人が存在しないとみなされ、相続財産管理人を立てる必要があります

先に述べた通り、民法940条の定めにより、相続の放棄をした人は、放棄によって次の相続人となった者が、相続財産の管理を始めるまでは管理を継続しなければならない、とされています。

相続をしなくても相続財産の管理をする人が決定するまでその相続人には管理義務が生じます

相続人が相続を放棄していたとしても、管理義務のある人が何かの失敗によって財産を減らしてしまった際に、毀損した人が債権者から損害賠償請求をされる可能性もあります。

このような管理義務から逃れるためにも、相続財産管理人の選任申し立てを行う必要があります。

 

債権者が返済を受けるために

被相続人に対して、お金を返してもらいたい債権者が相続財産管理人を立てて、返済をしてもらうパターンがあります

被相続人に貸し付けをしていた個人、会社が例として挙げられます。

本来は相続人がいれば遺産の中から支払いをしてもらえるのですが、相続人が誰もいない場合、債権者は取り立てができず困ってしまいます。

回収する相手もいなければ、訴訟を起こすこともできません。

このような場面、債権者は家庭裁判所へ相続財産管理人の選任の申し立てをすることができるのです

相続財産管理人を立てることで、相続財産から債権の回収が可能となります。

 

特別縁故者が遺産の一部を得るために

法定相続人ではないが、法律上の婚姻関係ではない被相続人の内縁の配偶者や、被相続人と生計を共にしていた人、献身的に療養看護や介護を被相続人に対してしていた人などを特別縁故者と言い、被相続人と近しい関係を持っていた人として財産分与の請求をすることができます

しかし、特別縁故者といっても許可なく財産に手を付けることは叶いませんので、財産を管理してくれる相続財産管理人を、財産管理の必要のある者として特別縁故者が擁立の申し立てをすることで、財産の分与をしてもらう事が可能になります。

財産分与を受けた事例としては「内縁の配偶者」「事実上の養子」「子の配偶者」「叔父叔母」「継母」があります

生計を共にしていなかった親族や、親族ではない知人も特別縁故者に該当することもあります。

 

相続財産管理人の選任手順

選任手順には家庭裁判所による規定があります。

それに従い相続財産管理人の選任を進めていくことになります。

 

書類を集め、家庭裁判所への申し立て

まず申し立てる人が相続財産管理人の申し立てに必要な書類を集めます。

被相続人の「利害関係者」または「検察官」が家庭裁判所へ書類と共に申し立てをします

利害関係者には「亡くなった方にお金貸しておりそれを回収しようとする債権者」「遺言により財産を受け取る事になった者」「被相続人の特別縁故者」が当たります。

検察官は、「相続人が明らかでない場合は、相続財産管理人を選任しなければならない」という民法951条に従います。

相続財産管理人の申し立てを家庭裁判所へする際に、同時に書類を集め提出するのですが、集める書類は多数に昇るため、集める場合は家庭裁判所などで確認が必要です。

戸籍謄本が主ですが、相続財産の資料や住民票なども必要です。

 

相続財産管理人への報酬

報酬は亡くなった方の親族が財産管理人を務めるときには不要ですが、家庭裁判所から任命された弁護士の場合は報酬を支払わねばなりません

その弁護士に対して着任期間中への報酬として、月額数万円程度の支払いが必要となります。

この支払いは相続財産の中から賄われ支払われることになります。

相続財産で支払えない場合に予納金が必要になってきます

 

相続財産が少ない時「予納金」が必要となることも

先に述べましたが、報酬を払うことが必要な時というのは、弁護士などの第三者が相続財産管理人を務める時です。

相続財産管理人の擁立を行う時は、申し立てる人が予め「予納金」の支払いを行っておきます

予納金の額は事案によっても変わりますが、100万円に昇ることもあり、負担は少なくありません。

相続財産管理人の全ての手続きが終了した後に、残余があれば返金されますが、残らない時は返金がありません

返金がない可能性もあるということも理解しておく必要があります。

 

公告や審判を行う

〇公告

公告とは世間に公にするという意味で、例えば家庭裁判所によって相続財産管理人が決定したということを周囲に知らせるための手段です。

この公告をすることで、相続が法律を踏まえ公正に行われていることを明らかにします。

公告は幾つか存在し財産管理人の決定の際や、選任後の公告などがそれに当たります。

 

<選任する際>

 1官報公告

—家庭裁判所により正式に相続財産管理人が擁立された旨を公表します。

 

<選任後の公告>

 1債権者、特別縁故者への債権申し出

—貸付が亡くなった方へある場合、返済をしてもらいたい人はこの期間に申し出て手続きをします。

 2相続人捜索

—法定相続人のいるのかいないのかについて最終的に認知をし、それを公にする公告です。

 

〇審判

審判としては、このようなものがあります。

例えば、特別縁故者が財産分与をしてもらいたい場合に家庭裁判所へ審判申し出を行い、家庭裁判所で審判が行われます。

決定された分を遺産の中から引き渡しを行います。

この時に、不公平がでないよう公的である家庭裁判所が審判を行います。

 

相続財産管理人になる人は?

相続財産管理人には、誰でもなることができ、資格などは必要ありません

ただし、既出ですが財産管理人の申し立てが出来るのは「検察官」、または「利害関係者」と決められています。

そして、家庭裁判所が財産管理人を任命します。

被相続人の親族を相続財産管理人の候補者として挙げることも可能ですが、候補者がいない場合には、弁護士や司法書士などの専門家が家庭裁判所によって選任されます

選任後の諸々の手続きは法律を通して行うため、裁判所としては専門家に任せることが通例となっているためです。

 

・相続財産管理人の任期

選任されてからは、最低でも13か月の期間、「相続財産管理人」の業務を担います。

なぜかというと、業務の中で、公告を行った後の申し出を受ける期間が複数あり、その合計が13か月になるからです。

詳しくは下記をご覧ください。

1ー官報公告の期間が2か月。

2ー次に債権者、特別縁故者への債権申し出の公告に対する期間が2か月。

3ー相続人を探す公告に対する期間が6か月以上。

4ー3の期間終了後、3か月の期間を定め特別縁故者への財産分与。

 

・相続財産管理人の権限

相続財産の保存行為や管理行為の権限が家庭裁判所によって付与されます。

さらに、家庭裁判所の許可を受ければ相続財産の処分処理を行うこともできます。

例えば、不動産の売却や、家電・家具の処分、蔵書の寄贈などがこれに当たります。

 

様々な手順と書類が必要|心配なら専門家へ

〇相続財産管理人の様々な手順

  1. 選任の申し立て:利害関係人によって相続財産管理人の選任申し立てと共に家庭裁判所へ予納金納付と書類提出を行います。
  2. 相続財産管理人の選任:選任及び官報公告を家庭裁判所が行います。
  3. 相続債権者への弁済:公告期間後弁済を行います。
  4. 相続人捜索の公告:6か月以上経過観察しても明らかにならなかった場合、相続人不存在が確定します。
  5. 特別縁故者への財産分与:特別縁故者である者が申し出をします。
  6. 報酬の付与:家庭裁判所に相続財産管理人の任期に対する報酬を付与するよう申し立てをします。
  7. 予納金の還付:6が行われた後もなお、残余財産があれば申し立て人に還付されます。
  8. 残余財産の国庫帰属:7の還付後なお、残余財産がある場合に財産管理人は財産を国庫に属する手続きを行い、全ての業務が終了となります。

 

〇相続財産管理人申し立てに必要な書類

  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 被相続人の父母の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 被相続人の子で死亡が確認されている場合、その子の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 被相続人の兄弟姉妹で死亡が確認されている場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 代襲者として甥姪で死亡が確認されている場合、その甥姪の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 財産を証する資料
  • 利害関係人からの申し立ての場合、その利害関係を証する資料
  • 財産管理人の斡旋者がいる場合、その住民票又は戸籍附票

 

財産管理人の選任や活用方法が解らない場合、弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談することで、財産管理人の活用方法から遺産相続のアドバイスなどを聞くことが出来ます。

その場合、弁護士へ相談料や報酬金、手数料などを支払う必要はありますが、悩みを解決に導いてくれるでしょう。

特に、返済義務があるマイナスの財産の相続に関するお悩みを抱えている場合は、相続問題に強い弁護士を見つけ、一度相談に行くことをおすすめします

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

あなたの周りで誰かが亡くなった時、その遺産の扱いをどうするか困ることがあるかもしれません。

相続人が相続を放棄した場合、相続財産管理人の任命が必要になり、相続財管理人が相続人のいない財産を管理します。

また相続財産管理人を任命するには多くの書類と予納金が必要になるため、相続財産管理人を任命する際には早くから準備を進めることをおすすめします

相続財産管理人の業務は長い期間行うことになるため、自分だけで執り行うには負担が大きすぎるかもしれません。

しかし弁護士に任せるという選択肢があるため、全てを自分で引き受ける必要もありません。

この記事が、相続財産を放棄したい時や相続財産管理人が必要になった際の参考になれば幸いです。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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