2019年4月9日 火曜日
子連れ再婚の連れ子の相続権はどうなる?連れ子に財産を残す方法
いろんな家族にケースに対応するため、相続の法律は非常に複雑なものになっています。
そのため、どの様な場合に相続権が発生するのか、決まりをよく理解できていない人が多いと思います。
しかし、遺産相続においては、法律を理解していないという理由で家族が崩壊するケースが珍しくありません。
全ての人が遺産相続を巡る争いを避けたいと思っているにも関わらず、経験がほとんど無いために、自らその引き金を引いてしまう時があるのです。
日本において離婚や再婚件数は年々、増加傾向にあります。
そんな中、子連れの再婚で連れ子に相続権はあるのか気になる方もいるかと思います。
この記事では再婚相手の連れ子の相続に必要な手順に関して解説しますが、「遺言書の書き方」や「遺留分」、「相続させたい割合が決まっている」場合は、弁護士に相談されることを心からお勧めします。
目次
再婚相手の連れ子に相続権は「ない」
再婚相手に連れ子が居た場合、再婚と同時にその連れ子と自動的に法律上の親子となる訳ではありません。
したがって、連れ子には財産の相続権がありません。
連れ子に自身の財産を譲り渡すためには、養子縁組を行うか、遺言書を作成するという二つの方法があります。
配偶者と血族に相続権がある
再婚した場合、その配偶者と「血族」には相続権があります。
つまり、配偶者と「自分の」連れ子には相続権がありますが、「再婚相手の」連れ子には相続権はありません。
民法において、財産を相続できる人は、亡くなった人の血族と配偶者と定められています。
血族とは親子、兄弟姉妹など血縁関係にある人々のことですが、血の繋がりがなくとも同じ戸籍に属している人も「血族」の対象となります。
つまり、養子であれば、血のつながりこそありませんが「血族と同視される者」と認定されるため、財産を相続することができるのです。
連れ子に相続権を与えるには?
上述したように、再婚したばかりの連れ子には財産の相続権がありません。
相続権があるのは、亡くなった人の配偶者と血族に限られます。
では、連れ子に財産を相続させることはできないのでしょうか。
そんなことは決してありません。
以下の方法で、連れ子に財産を相続させることは可能です。
連れ子に財産を相続させる方法は、二つあります。
一つは、「養子縁組を行う」方法で、もう一つは、「遺言で遺贈する」という方法です。
これらの方法について以下で詳しく見ていきましょう。
養子縁組で法的に親子になる
養子縁組を行う事で、法的に親子になります。
事実上、実子と同じ身分になるため、養子縁組の結果、養親の財産を相続することが可能になります。
・養子縁組に必要なことは?
養子縁組は、養子縁組届を、連れ子もしくは再婚相手の居住する自治体または本籍地の役場に提出する必要があります。
提出先の自治体が本籍地以外の場合、戸籍謄本の提出も必要なので注意しましょう。
また、書類を役所に提出する際は、届出人の他に二十歳以上の二人の証人の押印や署名が必要です。
そのため、養子縁組を行う場合、誰に証人になってもらうかを決めて、その人達に依頼しましょう。
それから、届出の際は本人確認を行うので、必ず本人の写真入りの各種証明書や免許証等を持参しましょう。
養子縁組の種類
養子縁組には二種類あり、一つは「普通養子縁組」、もう一つは「特別養子縁組」があります。
「普通養子縁組」は、婿養子に代表される縁組の形です。
再婚相手の連れ子を養子にする場合も「普通養子縁組」で行われることがほとんどです。
役所に届け出を行うことで成立します。
「特別養子縁組」は、1987年から始まった比較的新しい養子縁組制度です。
実の親から養育が期待できないような、子供の権利が侵害されている場合に、養親が実の親となって養子を育てるための制度で、子供の福祉のための制度といえます。
連れ子の遺産割合
養子となった連れ子は、養親の実子と同じ権利を有します。
つまり、養子となった連れ子の遺産割合は、養親の実子と同じになります。
また、普通養子の場合は、実親と養親の双方と法的に親子関係となっているので、両方の親から相続を受ける事が出来ます。
注意点
配偶者の連れ子と養子縁組をしたとしても、その連れ子は養親の代襲相続人にはなれません。
そのため、養親がその親より早くに亡くなってしまったとしても、祖父母の財産を相続することはできません。
・代襲相続って?
代襲相続とは、祖父母よりも先に、親が亡くなった場合に、親が本来引き継ぐはずだった遺産を、孫が相続することのできる制度です。
・親が相続放棄をすると代襲相続は生じるか
親が相続放棄をした場合、自分が代襲相続人になることはありません。
相続放棄をすると、相続権が次の相続順位に当たる人に移るからです。
例えば、亡くなった人の子供全員が相続放棄をするとその親に、また、亡くなった人の親の全員が死亡している場合や、相続放棄をしていた場合、その兄弟姉妹それぞれに相続権が移行します。
遺言で”遺贈”する
連れ子と養子縁組を行っていなければ、その連れ子は法定相続人にはなれません。
すなわち、親の再婚相手から遺産を相続することができません。
このように、養子縁組をしていない連れ子に相続をさせる手段に「遺贈」というものがあります。
遺贈とは、遺言を残して特定の人に財産を譲ることです。
遺産の相続権の無い人に、財産を相続させたいときに活用できます。
作成時の注意点 ①遺留分
法定相続人には、財産を相続できる最低限の取り分が決められており、これを「遺留分」といいます。
もし遺言が、他の相続人の遺留分を侵害していたら、トラブルの元になるので、遺言を残す際には、遺留分をしっかり留意しましょう。
・前妻の子に相続させたくないときは
離婚後に前妻の子と全く会わないような場合、今の家庭に自分の財産を遺したいと思うことは当然のことでしょう。
しかしながら、前妻の子も、離婚したとはいえ依然として法定相続人です。
仮に遺言で、前妻の子供に相続させないで、今の子供にすべて相続させると書き残しても、遺留分があるため、全く相続させないということはできないのです。
それでも、どうしても前妻の子に相続をさせたくないという場合は、遺留分の放棄を依頼してみるという手段もあります。
しかし、遺留分の放棄は相手が納得するだけの正当な理由が必要です。
作成時の注意点 ②遺言書を正式なものとする
遺言には「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」があります。
どの遺言書も効力は同じですが、遺言の確実性の高さから「公正証書遺言」を残すことをお勧めします。
公正証書遺言とは、遺言者が公証人に遺言の内容を伝えて、その内容に基づいて公証人が公正証書遺言を作成するものです。
公証役場に作成された遺言書の原本が保管されるため、遺言書の紛失や偽造の恐れもなくなります。
・遺言書を有効なものにするために
民法では、遺言書が無効となる場合の基準が明確に定められています。
被相続人の年齢や意思能力に加え、遺言書の書式等が細かく決められているので、しっかり確認しておきましょう。
・遺言書は満十五歳以上であれば遺せる
民法においては、未成年であっても十五歳以上で意思能力があれば、作成した遺言書に効力があるとみなされています。
その際に親の同意は不要で、たとえ親であっても子の遺言書の内容を取り消すことはできません。
・成年被後見人の場合は条件がある
知的障害や精神障害、認知症等の成年被後見人は、判断能力が欠如している状態であれば遺言書の作成は認められていません。
ただし、認知症等で一時的に判断能力が復活する場合は、二名以上の医師が立ち会えば遺言書の作成を認められています。
遺言書を作成した際に判断能力があれば、その後症状が悪化して判断力が無くなったとしても、遺言書は有効です。
・決められた方式で書かれていること
遺言書は決められた方式で書かれなければ効力を発しません。
例えば、自筆証書遺言は自筆で書かなければ有効とはならず、パソコンやワープロで作成したもの、テープレコーダーで録音して遺したものについては無効です。
・遺言の取り消し
遺言書を作成したものの、再婚相手と離婚をして、連れ子に自分の財産を相続させないように考えることもあるでしょう。
そうした場合、遺言の取り消しが可能です。
自筆証書遺言は、遺言内容の全てを取り消したければ、遺言書を破棄することで可能です。
なお、公正証書遺言を既に作成している場合は、新しい遺言書を作成しなおす必要があります。
内縁の妻の子の場合
内縁の妻の子には相続の権利がありません。
しかし、その子が認知されている場合は、配偶者との間の子供と同じ分の相続割合があります。
・他に相続人がいない場合は特別縁故者として、相続が可能になることも
亡くなった人が生涯独身であった場合、父母や兄弟姉妹が既に他界してしまっている場合のように、法定相続人がいないケースもあります。
法定相続人が誰もいない時、亡くなった人と特別な縁故にあった人は、その事実を家庭裁判所に申し立てると「特別縁故者」として相続を受けられる可能性があります。
・特別縁故者になる条件
特別縁故者として亡くなった人から相続をするには、相続人が存在しないことが認定されてから、三カ月以内に「特別縁故者の相続財産分与の請求」を家庭裁判所に申し立てます。
申立人となれるのは、「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」に限られます。
連れ子がいる場合に起こりうるトラブル
連れ子は養子縁組を行わない限り、法定相続人にはなれません。
そのため、生前どんなに親子の仲が良かったからといっても、自動的に連れ子が財産を相続することはできません。
連れ子にも相続権が自動的に発生すると思い込んでいたために、親の死後、遺産相続でトラブルとなることもあり得ます。
また、上述の通り、遺留分という制度があるため、「連れ子にすべての財産を相続させる」という遺言は、実現しません。
もし、このような遺言が遺された場合、連れ子と実子との間で遺産相続争いを引き起こす要因となるでしょう。
トラブルを避けるために必要なこと
連れ子に確実に遺産を相続させてあげたいと考えているなら、養子縁組を行いましょう。
養子縁組をすることで、相続分は実子と同じ割合になります。
また、弁護士に相談しながら、遺留分に考慮した財産分与を決め、公正証書遺言を作成しましょう。
公正証書遺言は、数ある遺言の中でも確実性の高いものなので、遺言書を残すときは、特におすすめです。
専門家を交えて進める
連れ子の遺産相続を巡る一連の対策には、弁護士とよく相談して話を進めていくことを、強くすすめます。
相続に強い弁護士に依頼すれば、連れ子の遺産の取り分や、相続の方法についての助言を得られるでしょう。
実際にトラブルになったとしても、専門家である弁護士であれば対処法を熟知しているので、困ったときは信頼できる弁護士に相談すれば解決に向かいます。
・弁護士費用に関して
弁護士費用は、次のように、相談料・着手金・成功報酬からなります。
初回の法律相談に関しては、ほとんどの法律事務所で無料としています。
着手金とは相談内容の成否に関係なく最初に支払う費用、成功報酬とは弁護士に相談した結果、依頼者が得た利益のうち、一定の割合を支払う費用のことです。
・弁護士に相談するメリット
弁護士に依頼する最大のメリットは、当事者の精神的負担を減らすことができることです。特に、それほど親密でない親戚との遺産相続のやり取りは、精神的な負担が大きいものです。
また、場合によっては面識のない相手と交渉をしなければならないこともあります。
精神的負担が大きい時に、弁護士が窓口となって客観的な事実に基づいて相手と交渉をしてくれます。
そのため、直接交渉相手と対峙して気がかることもなく、普段通りの生活を送ることができます。
さらに、本人が直接話をするよりも、弁護士を通して話をするほうが、主張が伝わりやすいと言うメリットもあります。
このように、弁護士に相談することで、ストレスやトラブルを避けながら問題を解決することができます。
相続のことでお困りの際は、是非弁護士事務所の扉を叩いてみてください。
まとめ
いかがでしたか。
子連れで再婚した際の、連れ子の相続権について解説しました。
再婚した時点では、再婚相手の連れ子には相続権が無いので、養子縁組を行うか、遺言で遺贈しなければ子供に相続ができないということがお分かりいただけたと思います。
また、遺言書に関しては遺留分を考慮した遺言書を残しておかないと、実子と連れ子との間での遺産相続のトラブルを引き起こすこともあることを知っておかなければなりません。
遺言書が引き金となって相続の争いが起こることは誰もが避けたい失敗ですが、残念ながら事実として、一つでも知識が欠けているとそれは起こり得ます。
そういったトラブルを防ぐためにも、弁護士に相談しながら話を進めていくことを強くおすすめします。