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【相続の基礎知識 】
相続について基礎知識を説明しています。相続とは、相続の手続き、生前にできる相続対策など、相続について知っておくべき情報をまとめています。

2019年6月15日 土曜日

相続は民法で定められている?相続における民法の効力は?

皆さんは「相続」と聞くと、どんなイメージをお持ちでしょうか?

相続は、両親や祖父母など身近な人が亡くなった後、人生で一度は経験するものです。

日常的に起こることではありませんが、故人の亡き後の手続きをスムーズに進められるよう、あらかじめ準備をしておくことは大切です。

この記事では、まず相続とは深く関わる「民法」や、その効力がどれだけあるかについて見ていきたいと思います。

 

相続は民法で定められている?

相続には「民法」と「相続税法」が該当しますが、ここではこのうちの「民法」についてご説明します。

「民法」は市民生活や事業など私たちの生活における基本的なルールを定めた法律です。

民法第882条~第1044条に収められており、売買・賃貸借・不法行為などの財産に関する内容や、夫婦・親子・相続などの家族に関わる内容について書かれています。

 

民法では相続の何が定められている?

では、その民法にはどんなことが書かれているのでしょうか?

一緒に詳しく見ていきましょう。

  • 民法第882条から第885条まで

総則で、相続の原因(死亡)や場所、相続回復請求権、相続財産に関する費用についてが書かれています。

  • 民法第886条から第895条まで

「相続人」についての内容が書かれています。
ここでは「法定相続人」と言います。

  • 民法第896条から第914条まで

「相続の効力」についてが書かれています。
法定相続人の遺産取得分の目安、遺産の分け方についてもこの項目が該当します。
遺産取得分の目安は「法定相続分」と言い、遺言書を作成していなかった場合には、法定相続人全員で話し合って遺産の分け方を決めるという内容もここに書かれています。

  • 民法第915条から第940条まで

「相続の承認及び放棄」についての内容が書かれています。
法定相続人が遺産を引き継ぐことは絶対的な義務ではなく、遺産を放棄することや、借金などの負債を承継することも可能です。
相続で得た財産を上限として亡くなった人の借金を返済する「限定承認」や、財産も負債も全て承継しない「相続放棄」についてもここに書かれています。

  • 民法第941条から第950条まで

「財産分離」についての内容が書かれています。
亡くなった人に借金などの負債があった場合、遺産を引き継いだ人が代わって債権者に返済をする必要があります。
しかし返済に回さず、他の用途に使ってしまう場合も考えられます。
この事案を防ぐため、債務者は家庭裁判所に相続人の財産と遺産を分離する「財産分離」を請求することができます。

  • 民法第951条から第959条まで

「相続人の不存在」についての内容が書かれています。
親族がおらず、法定相続人に該当する人がいない場合には、まず家庭裁判所が相続財産管理人を選びます。
そして管理人が官報で相続捜索を告知し、一定期間現れなければ、遺産は国庫に帰属することになります。

  • 民法第960条から第1027条まで

「遺言」についての内容が書かれています。
遺言には、死後に財産を誰にどのように分けるのかの財産分与について示されます。
遺言書の作成にあたっては、ここで定められた遺言の要件を満たす必要があり、要件が満たされない場合無効となってしまいます。

  • 民法第1028条から第1044条まで

「遺留分」についての内容が書かれています。
遺留分とは、法定相続人に認められている最低限の遺産を貰える権利のことを言います。
遺言では、「誰にどれだけ相続させるかという割合を決定することができる」と民法では認めていますが、「ただし、遺留分に関する規定に違反することができない」とも示しています。
ここでは原則最優先される遺言によっても、遺留分は侵害されないことを定めています。

 

相続人について

上記でご紹介した民法の中でも「相続人」に関して定めている箇所を詳しく見ていきましょう。

規定しているのは民法第886条から第895条までです。

「相続」とは、個人が死亡した場合に、その個人の保有していた不動産や預貯金など財産上の権利義務を配偶者や子供、兄弟姉妹などの家族関係にある者に承継させる制度のことを言います。

この場合、財産上の権利や義務を承継される者のことを「被相続人」と言い、これを承継する者のことを「相続人」、民法で定められた相続人を「法定相続人」と言います。(この法定相続人に関しては後述しています。)

 

相続の配分について

次に、資産や負債がどのように配分されるのか見ていきましょう。

大きく分けて「遺言による相続」、「法定相続」、「分割協議」の3つがあります。

  • 「遺言による相続」
    亡くなった被相続人が相続の内容を決め、その通りに行われる
  • 「法定相続」
    民法に従って決められた相続人が、決められた通りに行われる
  • 「分割協議」
    相続人全員が協議の上、相続の割合を決める

被相続人が遺言書を残している場合は、原則遺言書に従います(これは後に述べる法定相続よりも優先します。)

しかし、遺言書がない場合は民法に従う「法定相続」を行います。

民法では相続の配分が決められているので、それに従うことになります。

また、全員で相談・協議の上決めることもでき、これを「分割協議による相続」と言います。

 

相続の権利喪失や放棄について

相続の権利が認められていた人だとしても、遺産の引き継ぎができなくなることがあります(権利喪失)。

民法891条では相続人の欠格事由として、次のように定めています。

  • 民法891条1号
    相続人が故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた場合
  • 民法891条2号
    相続人が、被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず又は告訴しなかった場合
  • 民法891条3号 
    詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた場合
  • 民法891条4号
    詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消させ、又はこれを変更させた場合
  • 民法891条5号
    相続人が、相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合

引用:民法(明治二十九年法律第八十九号)http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089_20180401_429AC0000000044&openerCode=1#3356

具体的に説明しましょう。

遺産を目当てに、被相続人を殺害したり、殺人未遂などを犯し処罰された場合(自分よりも先の順位にある被相続人に対する行為も含む)には遺産の引き継ぎはできません。

相続人がその配偶者や直系血族被相続人以外の場合、殺害されたことを知っていた、もしくは殺害した人のことを知っていたけれども告発も告訴もしなかった、という場合にも対象外となります。

また、遺言に関する不当な干渉があった場合も相続はできません。

例えば被相続人が遺言書を作成するにあたり、騙しや脅迫により内容の取り消しや変更をさせることや、相続人が遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿をした場合はこれに該当します。

一方、権利が認められていたとしても、債務や財産の全ての相続を放棄をすることもできます

この場合は、相続の開始(被相続人の死亡)を知った日から3ヶ月以内に手続きをしなければなりません。

この3ヶ月間を「熟慮期間」と言います。

相続放棄の手続きは家庭裁判所で行うことが定められており(民法938条)、ここで放棄する旨の申述を行う必要があります(民法915条)。

原則として、既に行った権利の放棄は撤回することはできません(民法919条)。

権利の放棄をすると、その放棄した者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。

そのため、相続放棄した者を被代襲者として、その者の子に代襲相続は発生しないことになります。

 

遺言について

被相続人の生前における最終的な意思を死後に実現させるための制度が遺言です。

遺言は相手方のない単独行為で、遺言者の死亡の時から効力が発生する(民法985条)とされており、遺言を行った者を「遺言者(遺贈者)」、遺言により財産を取得する者を「受遺者」と言います。

また、遺言は民法で定められた方式によって残す必要があります(民法960条)。

そして、要件を満たしていない遺言は無効となります。

そのため、被相続人は遺言執行の準備手続として、遺言を家庭裁判所に提出する必要があります。

ここで行われるのが「検認」です(民法1004条)。

遺言の「検認」は遺言書の偽造・変造を防止し、その保存を確実にするために行われる証拠保全手続です。(これは遺言の内容についての真偽、遺言の有効・無効を判断するものではないので注意が必要です。)

 

法定相続人の権利について

法定相続人とは、相続を受け入れる権利がある人のことです。

法定相続人となり得る者は以下の通りです。

  • 配偶者(法律上婚姻関係にある者で、内縁関係を含まない。)
  • 被相続人の子(又はその代襲者)
  • 直系尊属(父母、祖父母など)
  • 兄弟姉妹(又はその代襲者)

これらの者は戸籍に基づいて判断し、上記の者のうち、相続開始時において生存していた者が複数あるときは、下記の順位により相続人となります(民法887条〜890条)。

同順位の相続人が複数ある場合には、共同で遺産を引き継ぐこととなります。

なお、配偶者は必ず法定相続人となります。

  • <第一順位> 子と配偶者

子は、実子であるか養子であるか、また「嫡出子」であるか「非嫡出子」であるかを問いません。
子が相続開始以前に死亡しているときや、相続欠格又は廃除により相続権を失っているときは、その者の子・孫等が代襲して相続人となります。
配偶者の連れ子を相続人とするには養子縁組が必要となります。

  • <第二順位> 直系尊属と配偶者

直系尊属の中に親等の異なる者がいるときは、その親等の近い者が相続人となります(例えば、父母と祖父母がいる場合には、父母が優先して相続人となります)。
実父母と養父母とは同順位で相続人となります(直系尊属とは父母、祖父母、曽祖父母などであるが、姻族を含まない。)

  • <第三順位> 兄弟姉妹と配偶者

兄弟姉妹は、親の実子であるか養子であるか、「半血」であるか「全血」であるかを問いません。
兄弟姉妹が相続開始以前に死亡しているときや相続の欠格又は廃除により相続権を失っているときは、その兄弟姉妹の子が代襲して相続人となります(再代襲はなし)。
親の実子と養子、養子と養子でも同順位で相続人となります。

 

民法で定められた相続の内容は絶対?

これまで見てきた民法では、相続の様々な事柄について書かれています。

しかしながら、この法定相続の内容は絶対とは言えず、それよりも原則被相続人の遺言が優先されます

民法の内容よりも亡くなった故人の意思を尊重したい場合は、生前の準備が必要不可欠です。

法律に則って遺言書を作成し、家庭裁判所で検認を受けておく必要があります。

 

相続で揉めた場合は民事裁判になる場合もある

故人の遺言書があり、スムーズに手続きが行えれば問題はありません。

しかしながら、その内容において、当人同士で話し合いや解決ができず、トラブルに発展してしまう場合も少なくありません。

話し合いがつかずにこじれてしまった場合、最悪民事裁判になってしまう可能性があります

遺産分割がトラブルになった場合は、まず相続人同士で遺産の分割割合を決める協議を行います。

その協議で折り合いがつかない場合は、家庭裁判所にて遺産分割調停手続きを行います。

全員の合意を目指し、裁判所が事情を聴取したり、解決案の提示や助言を行ったりしますが、それでも調停がまとまらない場合は審判、即時抗告、許可抗告・特別抗告というように手続きが進みます。

抗告審において決定が出た後は、さらに訴訟で争うことはできません。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

故人の遺言書がない場合は法律に則って法定相続が行われ、その内容や割合は定められています。

一方、法的に認められた遺言書がある場合は、こちらが大きな力を持ちます。

遺言書によって自由に相続の内容を決めることができることがお分りいただけたかと思います。

人が亡くなった後は、思った以上に必要な手続きが多く、時間や労力が必要になります。

後悔やトラブルのないスムーズな手続きができるように、生前に準備しておきたいですね。

この記事が皆様の参考になれば幸いです。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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