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【相続の基礎知識 】
相続について基礎知識を説明しています。相続とは、相続の手続き、生前にできる相続対策など、相続について知っておくべき情報をまとめています。

2019年3月31日 日曜日

遺産相続の二次相続とは?知って得する二次相続の仕組み

今まさに相続が発生した人に対して私がいつもお伝えしたいと思うのは、

「本当の相続が終わるのはご遺族が二次相続まで経験してから」だということです。

ほとんどの人にとって、相続の発生は一度で終わりません。

例えば、お父さんが亡くなった後に、お母さんが亡くなった場合、その両親の子どもには二次相続が発生します。

そして、最もお伝えしたいことは、一次相続に比べて二次相続は相続税が高額になるため二次相続までを考慮して対策をする必要性です。

今回は、二次相続の基本事項から一次相続と比較した相続税のシミュレーション、二次相続に向けた各種の対策まで解説しております。

相続の話は、発生したその時にできる限りの対策を全て完了するのが鉄則です。

せっかく調べた知識を忘れた頃にそれが引き起こるのが人生であり、それが相続と言えます。

一次相続が発生した方は二次相続まで見据えて対策し、まさに今二次相続が発生している方はその対策に、ぜひこの記事をお役立てください。

二次相続とは?

たとえば、2015年に相続人の父が亡くなり2018年に母が亡くなったとします。

このうち2015年に父の遺産を配偶者(母)が相続することを一次相続といい、2018年に母の遺産をご遺族が相続することを二次相続といいます。

つまり、二次相続とはとあるご夫婦が亡くなられた時の遺産を相続することです。

二次相続における相続分と税率

二次相続の相続分

法定相続割合について規定している民法第900条第4号によりますと、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。

ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」とあります。

二次相続では配偶者がいないわけですから、亡くなった人の子ども・祖父母・兄弟姉妹の順番で相続することになります。

そして、同順位の相続人が複数名以上いる場合は特別受益や遺言による特別の指定がないかぎり、原則として同順位の相続同士で均等して相続します。

二次相続の税率

相続によって財産を取得した人に課される税金(国税)のことを、相続税といいます。

2019年3月時点における相続税率は、以下のとおりです。

別途算出された相続財産評価額に以下の税率を乗じ、カッコ内の金額を控除して税率をかけた金額が相続税となります。

なお、一次相続と二次相続において相続税率に差分は設けられておらず、同一です。

・1,000万円以下 :10パーセント(控除額なし)

・3,000万円以下 :15パーセント(50万円)

・5,000万円以下 :20パーセント(200万円)

・1億円以下  :30パーセント(700万円)

・2億円以下  :40パーセント(1,700万円)

・3億円以下  :45パーセント(2,700万円)

・6億円以下  :50パーセント(4,200万円)

・6億円超   :55パーセント(7,200万円)

各相続人の相続税額は、以下の算式およびステップにより計算されます。

特に(1)で各項目の評価額を誤ると適正な相続税額そのものが算出されなくなりますので、相続税評価額は正確に行う必要があります。

(1)相続人それぞれの課税価格

=相続または遺贈により取得した財産の価額(相続時精算課税制度を適用し贈与を受けた財産を含む)+みなし相続財産の価額-非課税財産の価額-被相続人の債務および葬式費用の額+被相続人から3年以内に贈与を受けた財産の価額

(2)課税価格の合計額

=相続人それぞれの課税価格をすべて足します

(3)課税財産総額

=課税価格の合計額-基礎控除額(3,000万円+法定相続人の人数×600万円)

(4)各相続人の法定相続割合に応じたそれぞれの取得金額

=課税財産総額×各相続人の法定相続割合

(5)上記(4)をもとにした税額

=各相続人の法定相続割合に応じたそれぞれの取得金額×税率

(6)相続税総額

=上記(5)で算出された各相続人の法定相続割合に応じた相続税額をすべて足し上げ

(7)各相続人の相続税額

=相続税総額×相続人それぞれの課税価格÷課税価格の合計額(=上記(6)×(1)÷(2))

インターネットでは、家族構成のパターンに応じた速算表をよく見かけます。

しかし、その多くが法定相続割合のみを考慮しただけのものです。

各相続人の相続税額は遺産分割協議の結果による実際の分割割合や特別受益の有無、相続時精算課税制度の活用の有無などに応じて変わりますので、速算表だけで計算すること自体に無理があるという点をご認識ください。

また、相続税の計算方法は諸制度や法律、さらには個別事情を複合的にしたものですので、非常に煩雑で分かりにくいものです。

このため、相続税や各種制度、法律について何も知らない人が単独で計算・申告をすると、過大申告あるいは過少申告となる可能性があります。

特に、知識がなく過少申告になった場合も税務署が悪質と判断した場合は、追徴課税などが課されてしまうリスクがあります。

したがって、相続税の計算・申告や税務署との折衝については、多少のコストが生じたとしても税理士などの専門家に依頼することが確実です。

一次相続と二次相続の違い

以下では、具体的な計算例にもとづいて一次相続と二次相続の違いをシミュレーションします。

一次相続

被相続人が亡くなり、相続が発生しました。

相続人は配偶者・長男・長女で、遺産は預金1億円です。

遺産分割協議の結果、法定相続割合どおりに配偶者が2分の1、長男と長女がそれぞれ4分の1ずつ相続することになりました。

(1)基礎控除額を差引く

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

したがって、今回の場合は3,000万円+600万円×3人により4,800万円が基礎控除額となります。

1億円から基礎控除額の4,800万円を差し引いた5,200万円が相続税の課税対象額となります。

(2)それぞれの相続分を計算

本シミュレーションでは、配偶者が2分の1・長男と長女がそれぞれ4分の1ずつという法定相続割合に応じて長男と長女が預金を共同で相続すると仮定しています。

この場合は配偶者が2,600万円長男と長女がそれぞれ1,300万円ずつ相続することになります。

(3)相続税額の総額を計算

前述した相続税の計算ステップに基づき、相続税額の総額を計算します。

相続税評価額が3,000万円以下の場合は相続税率15パーセント・控除額50万円ですので配偶者は(2,600万円×15パーセント-50万円)=340万円、長女と長男はそれぞれ(1,300万円×15パーセント-50万円)=145万円ずつとなります。

これにより相続税の総額は、配偶者340万円+長男145万円+長女145万円=630万円となります。

(4)各相続人に適用される相続税制度と最終計算の方法

最後に、相続税の総額を法定相続割合で割り算をして、各相続人の相続税を決定します。

配偶者は、「配偶者の税額軽減」により1億6,000万円を下回る場合は相続税が発生しないため、配偶者が相続する金額5,000万円については実は相続税が発生しません。

一方で長男と長女は4分の1を相続しますので、相続税の総額630万円の4分の1である157万5千円をそれぞれ申告・納税することになります。

つまり、一次相続では相続人全員の合計で315万円の相続税が発生したことになります。

二次相続

続いて、上記の配偶者(母)が亡くなり、長男と長女がそれぞれ2分の1ずつ相続した場合をシミュレーションしてみましょう。

二次相続財産額は、一次相続で相続した分と配偶者固有の財産を合わせて同じく1億円だったと仮定します。

(1)基礎控除額を差引く

基礎控除額は3,000万円+600万円×2人により4,200万円となります。

これにより相続税の課税対象額は5,800万円となり、一次相続と比べると600万円も増えています。

(2)それぞれの相続分を計算

長男と長女の相続分は2分の1ずつなので、それぞれ2,900万円です。

(3)各相続人の相続税額を計算

相続税評価額が3,000万円以下の場合は相続税率15パーセント・控除額50万円ですのでそれぞれ2,900万円×15パーセント-50万円により385万円ずつとなります。

もちろん、長男と長女には「配偶者の税額軽減」特例は使えません。

よって、二次相続における相続税の合計額は770万円であり、一次相続のときと比べて455万円も多く相続税を支払わなければならなくなるのです。

二次相続前に準備しておくべきこと

 

二次相続の対策のポイントは、一次相続と同様に相続税が課税される金額を下げることにあります。

以下で具体策をみてみましょう。

死亡保険金の非課税枠を知った上で生命保険に加入しておく

被保険者つまり被相続人を契約者かつ被保険者、相続人を受取人とする生命保険の死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。

ただし、相続人が受け取る死亡保険金には非課税枠として「法定相続人の数×500万円」の適用が認められています。

死亡保険金の総額が上記非課税枠の範囲内であれば、相続人が受け取る死亡保険金に対して相続税は課税されないのです。

非課税枠の上限内であれば、現預金よりも生命保険の死亡保険金として相続する方が相続税は安くなります。

また、生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産とされており、遺産分割協議の対象外です。

このため、先日記載した「代償分割」などのために特定の相続人に対して現金を多く残したい場合は、その相続人を死亡保険金の受取人とした生命保険を契約しておくことで他の相続人が遺産分割協議の場で不服を唱えようと、生前の意向通りその人に実質的に現金を相続させることができるのです。

相続財産を現金化しておく

相続税が課されても相続人の手元資金で支払うことができればよいのですが、必ずしもそうなるとは限りません。

相続対策を検討する際は、二次相続まで見据えた相続税の納税資金についても視野に入れる必要があります。

まずは現時点で保有している財産の種類や金額を詳細に把握するとともに、税理士などの専門家に相談しながら相続が発生した際の相続税の概算額を計算してみましょう。

その際は、一次相続だけではなく二次相続についても考慮に入れてください。

そして、算出された相続税概算額について納税資金が保有する金融資産から捻出できるか、慎重に確認します。

もし納税資金が捻出できないと見込まれる場合は、不動産などの有形資産を生前に売却して現金や生命保険などに切り替え、納税資金を確保しておくことを検討する必要があります。

特に不動産は流動性が低く、上場株式や投資信託などの金融商品と異なり売りたいときにすぐ売れるわけではない資産です。

不動産市況などを考慮しながら、相続発生後は遺族にとって不要と考えられる不動産は思い切って生前に売却しておくことを視野に入れておきましょう。

二次相続を見据えた一次相続の利用

一次相続では、被相続人の配偶者であれば1億6,000万円の配偶者控除額の範囲に収まる場合に相続税は課税されない「配偶者の税額の軽減」を使うことができます。

この特例を使うため、一次相続では配偶者(母)に多く相続させる傾向があります。

しかし、配偶者(母)が亡くなった場合は、基礎控除額(3,000万円+法定相続人の人数×600万円)が減っているにも関わらず多額の遺産を二次相続することになります。

したがって、二次相続では、子どもなどの相続人に課される相続税が一次相続のときよりも増える傾向にあります。

さらに、相続人の居住状況によっては小規模宅地等の特例が使えないことがあります。

つまり、一次相続の段階から配偶者以外の相続人に多目の資産を分割しておくなど、二次相続を見据えた遺産分割を行っておく必要があるのです。

相次相続控除を利用する

相次相続控除とは、相続開始前10年以内に被相続人(亡くなった人)が別の相続や相続時精算課税による贈与などによって相続税が課税されていた場合に、所定の金額を控除するという制度です。

つまり、10年以内に相次いで相続が発生した場合、前回支払った相続税額から計算された金額が控除されるという制度です。

控除される額の計算式は多少複雑なのですが、「被相続人が10年以内の相続で支払った相続税額のうち、今回の相続までの経過年数に10パーセントを乗じた部分を減額した金額」となります。

相次相続控除を利用するための要件は、以下のとおりです。

・被相続人の相続人であること(相続放棄した人、および相続欠格・相続廃除のいずれかに該当し相続する権利を失った人は対象外)

・被相続人が相続の開始前10年以内にあった相続により、財産を取得していること

・相続開始前10年以内あった相続で取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税されていたこと

相次相続控除の適用申請は、相続税の申告において行います。

ここで注意しなければならないのは、「配偶者の税額軽減」等で前回の相続では相続税の納税が生じていなかったケースについては、この要件には該当しないこととなります。

生前贈与をしておく

生前に財産を次の世代に贈与、つまり無償で譲っておくことは有効な相続税対策のひとつであり、これを生前贈与といいます。

相続税は亡くなった時点における財産の額に比例して高くなることから、亡くなる前に自身の財産を相続人に贈与して死亡時点での財産額から切り離すことにより、そのぶん相続税を安くすることができるのです。

贈与を受けると、その人には贈与税が課税されます。

そうであれば、被相続人の生前に支払う贈与税、相続発生後に支払う相続税の違いだけであり、贈与を受けるか財産を相続した場合は、いずれにしても同額程度の税金を支払うのではないかとお考えになると思います。

確かにそのとおりですが、生前贈与には先述した相続税の基礎控除や配偶者控除とは異なる各種の控除制度が設けられています。

ですので、生前贈与を検討する際は相続が発生して単純に相続した場合に納付すべき相続税の税率と贈与税の税率を慎重に比較計算してください。

そして、生前贈与による受贈者の贈与税負担が相続発生時における相続税負担よりも少なくなるならば、生前贈与が必要です。

それでは、以下で生前贈与の具体例を一部ご紹介しましょう。

4.5.1 暦年贈与

その年の1月1日から年末に受けた贈与の合計額が110万円に満たない場合は、贈与税は課税されず申告も不要です。

ただし、この特例を用いてコンスタントに毎年110万円ずつ贈与を続け、仮にそれが10年間続いたとしたら、税務署は「連年贈与」として最初から合計1,100万円贈与する意図があったとみなし1,100万円に対して贈与税が課税されてしまうことがありますので、注意してください。

4.5.2 住宅取得等資金の贈与税の非課税特例

親や祖父母など直系尊属が子や孫に受けるが居住用家屋の建築または購入の資金を贈与すると、契約日や住宅の種類などの条件に応じて一定の贈与額に対し贈与税の非課税が認められています。

この制度は、年間110万円以下の基礎控除が併用可能です。

まとめ

二次相続では一次相続と異なり使えない控除制度があるため、相対的に相続税が高くなる傾向があります。

これによる影響を避けるためには、一次相続の段階から二次相続を見据えた対策が不可欠です。

長期的かつ複雑な計算と制度の理解が求められますので、専門家である税理士にご相談されるのが最良の対策です。

ぜひ、一度税理士にご相談されることを心からオススメします。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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