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【相続の基礎知識 】
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2019年3月22日 金曜日

贈与時に課税対象となる”みなし贈与財産”とは何か

財産を贈与されたときに、ある一定の金額を超えると贈与税が課せられます。

この贈与税の課税方法には2種類あり、金額や誰から財産を贈与されたかによって、選択できる課税方法が違うという特徴があります。

そして、贈与税の課税対象には、贈与された財産だけでなく、財産とみなされた「みなし贈与財産」も含まれます

では、みなし贈与財産とは一体どんなものなのでしょうか?

今回は、みなし贈与財産について詳しくご紹介いたします。

そもそも贈与とは

贈与とは、民法(贈与)第549条において、当事者の一方が自分の財産を無償で相手に与える意思を示した上で、相手がその贈与を受けることで効力が生じるものであることが定められています。

また、民法(書面によらない贈与の撤回)第550条において、書面で贈与についての契約を交わしていない場合には、それぞれの当事者(贈与をする人、贈与を受ける人)が撤回できるとされています。

しかしながら、すでに贈与された部分についてはこの限りではないと定められています。

贈与には、下記のようなさまざまな種類のものが存在しています。

  • 一般的に贈与と呼ばれる生前に贈与をする生前贈与
  • 贈与者(贈与をする人)が亡くなったときに効力を生じる死因贈与
  • 受贈者(贈与を受ける人)に負担を負わせる代わりに贈与をする負担付贈与
  • 毎月または毎年一定額を贈与する定期贈与(連年贈与)
  • 受贈者が約束を達成したときに成立する停止条件付贈与 など

贈与時にかかる税金

贈与をする際にかかる税金のことを贈与税といいます。

贈与税がほかの税金と異なる点は、2種類の課税方法があることなどが挙げられます。

それでは、贈与時にかかる税金について詳しく見ていきましょう。

贈与税とは

贈与税とは、個人から財産の贈与をうけた際にかかる税金のことをいいます。

法人から財産の贈与を受けた場合においては、贈与税がかかりませんが、その代わりに所得税がかかります。

また、贈与税には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類の課税方法があり、条件によって、どちらの課税方法を選択するかが決まります。

まず、「暦年課税」の場合、1月1日から12月31日までを1年間と定義し、その間に個人からもらった財産が110万円以下なら贈与税がかからないといった課税方法です。

ただし、財産の合計額から基礎控除額である110万円を引き、それを超える分の金額から贈与税がかかります。

110万円以下で贈与税がかからなければ、贈与税の申告は必要ありませんが、110万円を超える場合には贈与税の申告をする必要があります。

次に「相続時精算課税」の場合、暦年課税と同様に1月1日から12月31日までを1年間と定義し、この間に個人からもらった財産の合計金額から2,500万円を控除することができます。相続時精算課税の場合、2,500万円を超える分の金額から贈与税がかかります。

また、暦年課税は基礎控除であるのに対し、相続時精算課税は特別控除にあたります

贈与税期限内申告書を提出する場合に限り、特別控除を受けることが可能となります。

ただし、前年よりも前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります。

また、相続時精算課税の制度を利用する場合には、贈与者が60歳以上の父母または祖父母であり、受贈者が20歳以上の子どもや孫でなければなりません。

そして、なおかつ、生前贈与である必要があります。

このほか、相続時精算課税の制度を利用した場合、途中で暦年課税に切り替えることはできないため、どちらの制度を利用するかは贈与を行う際にしっかりと考えることが大切です。

贈与税の税率

贈与税の税率は、生前贈与で受け取った金額によって異なります。

まず、暦年課税の場合の贈与税の税率を見ていきましょう。

暦年課税の税率は、贈与税の速算表を用いて計算をします。

速算表には2種類あり、生前贈与の種類によって、贈与税の速算表【一般贈与財産用】と贈与税の速算表【特例贈与財産用】を使い分けます。

下記の表をご覧ください。

贈与税の速算表【一般贈与財産用】

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
一般税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

 

贈与税の速算表【特例贈与財産用】

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
一般税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

※上記2つの表は、国税庁のホームページ「財産をもらったとき 暦年課税 暦年課税の計算<計算方法>」の贈与税の速算表【一般贈与財産用】と贈与税の速算表【特例贈与財産用】を元に作成しています。

暦年課税の制度を利用した場合には、この2つの速算表を用いて、一般贈与または特例贈与財産のどちらかを受け取った場合の贈与税を算出することができます。

また、相続時精算課税制度の利用した場合には、特別控除額である2,500万円を差し引いた残りの金額に、一律20%の税率が乗じられます。

相続時精算課税制度には、暦年課税の制度のように税率に変動がないといった特徴があります

また、贈与された財産が2,500万円に満たない場合は、2,500万円から贈与された価額を差し引き、残った金額が来年以降の特別控除の限度額となります。

贈与税の計算方法

暦年課税の制度を用いて、贈与税の計算をする場合には、計算する年の1月1日から12月31日までを1年間とします。

贈与で受け取った財産の価額を計算した後、その合計金額かに基礎控除額である110万円を差し引いて、残りの金額に税率を乗じます。

「贈与税の税率」に掲載した、贈与税の速算表【一般贈与財産用】と贈与税の速算表【特例贈与財産用】は、前述の金額をあてはめて利用することで暦年課税の税率がわかります。

また、暦年課税を利用した場合の贈与税は、下記の計算式を用いることで求めることができます。

[基礎控除後の課税価格] × 税率 − 控除額 = 贈与税の税額

※国税庁のホームページ「財産をもらったとき 暦年課税 暦年課税の計算<計算方法>」の「1 贈与により一般贈与財産又は特例贈与財産のいずれかのみを取得した場合」より引用

次に相続時精算課税制度の制度を用いて、贈与税の計算をする場合にも計算する年の1月1日から12月31日までを1年間と定義します。

贈与で受け取った財産の価額を計算した後、その合計金額から基礎控除額である2,500万円を差し引いて、残りの金額に税率を乗じます。

相続時精算課税制度の場合、特別控除額は2,500万円です。

そのため、贈与された価額から、2,500万円を差し引いた残りの金額に贈与税がかかります。

このとき、2,500万円を超えた金額には一律20%の税率が課せられるので、2,500万円を超えた金額に20%の税率を乗じることで、相続時精算課税制度を利用した際の贈与税が求められます。

また、相続時精算課税制度を利用した場合の贈与税は、下記の計算式を用いることで求めることができます

[特別控除後の課税価格] × 20%(税率) − 控除額 = 贈与税の税額

このように、暦年課税と相続時精算課税制度によって、控除額も税率も異なるため、贈与税の税額を求める式は異なります。

みなし贈与も贈与のひとつ

みなし贈与財産とは、財産の贈与があったとみなされることをいいます

みなし贈与財産は、贈与者も受贈者も意識的に行ったわけではなく、受贈者の得た利益が贈与であるとみなされる場合に使用します。

みなし贈与という呼び方をされるため、贈与とは異なる印象を受けやすいかもしれませんが、通常の贈与と同じく、贈与税が課税されます

みなし贈与財産には、下記などのものが当てはまります。

生命保険金

契約者が被相続人であり、受取人が相続人である場合は、相続人に利益が生じると考えられるため、みなし贈与財産となります。

個人年金の受給権

契約者が被相続人であり、被保険者及び受給者が相続人である場合、年金受給権が贈与されたと考えられるため、みなし贈与財産となります。

低額での不動産などの譲渡

著しく低額で不動産などの譲渡を受けた場合、本来の金額との差額が利益とみなされ、みなし贈与財産となります。

無利子の金銭貸与

無利子の金銭貸与があった場合、利子に相当する部分が免除されているため、利子分が利益と考えられ、みなし贈与財産となります。

ただし、無利子の金銭貸与の金額か少ない場合には、課税されないこともあります。

借金の免除

お金を貸した人がお金を借りていた人の借金を免除した場合、借金が免除されたことで借金分の財産が増えたと考えられるため、みなし贈与財産となります。

借金の肩代わり

借金の免除だけでなく、お金を借りていた人の借金を他の人が肩代わりして支払った場合も借金の免除と同じく、借金分の財産が増えたと考えられるため、みなし贈与財産となります。

このように、みなし贈与財産には、贈与者も受贈者も贈与をしているという自覚がないまま、自然と行っている行為に利益が生じ、みなし贈与財産とされるケースが多い傾向にあります

そのため、みなし贈与財産にあたるかどうかを、確認してから行動に移すようにすることが重要であるといえるでしょう。

みなし贈与財産を相続する際に気をつけたいこと[H7]

みなし贈与財産を相続する際に気をつけなければならないことは、大きく分けて4つあります。

まず、1つ目は「知らない間に贈与をしてしまっていること」が挙げられます。

贈与者も受贈者もそんなつもりはなかったのに、気つけば贈与とみなされていたというのがみなし贈与財産の特徴です。

ですから、相手に何かを譲渡したり、貸与したりする場合には、それがみなし贈与にならないかを確認してから行うことが大切です。

2つ目は、「知らない間に贈与税の滞納をしてしまうこと」が挙げられます。

これは、受贈者が贈与を受けたという認識がなく、贈与税の支払いをしないまま時間が経過してしまい、結果として滞納してしまうことで起こってしまうものです。

贈与税は、贈与された年の翌年2月1日から3月15日までに、受贈者の管轄の税務署に申告しなければならなりません。

ですから、これを過ぎた場合には、無申告税と延滞税が課税されます

無申告税は、税務調査を受けずに自主的に申告した場合には5%で済みますが、税務調査を受けてから申告すると、贈与税額50万円以下の場合には15%、50万円を超えた場合には20%が課せられます。

また、延滞税においては、納付が定められた期限の翌日から完納する日までの日数分に応じて、計算されるため、日数が長ければ長いほど、支払わなければならない延滞税は増えていきます。

3つ目は「事前に税理士などの専門家に相談すること」が挙げられます。

みなし贈与財産になりうるかもしれない状況が生じた場合には、自己判断するのではなく、税理士などの専門家に相談することが大切です。

自分では贈与だと思っていないことでも大きな金額の財産を譲渡したり、金銭を貸与したり、借金問題を解決したりする場合には、みなし贈与財産になってしまうことがあります。

みなし贈与財産になってしまうと、本来はかからないと思っていた税金がかかることになり、贈与税の支払いをしなければならなかったり、場合によっては無申告税や延滞税も支払わなければならなくなったりする可能性があります。

そのような状況を作らないためにも、事前に税理士などの専門家に相談し、判断を仰ぐことは適切な行動であるといえるでしょう。

4つ目は「どのようなケースがみなし贈与財産になるかを知っておくこと」が挙げられます。

なかなか難しいかもしれませんが、みなし贈与財産になるケースには、多くの具体例があります。

自分が取る行動がみなし贈与財産と考えられるものであるかを知っておくことで、贈与税についての対応が変わってきます。

無申告税や延滞税などの税金が加算されないように、みなし贈与財産になるケースについて、理解しておくことは必要であるといえるでしょう。

このように、みなし贈与財産を相続する場合には、気をつけなければならない点がたくさんあります。

みなし贈与財産になることを知らない」という場合に多くの問題が発生するため、どのようなケースがみなし贈与財産にあたるかを知っておくことが何よりも大切です

まとめ

みなし贈与財産は、贈与者も受贈者もそれが贈与であると認識せずに行ってしまうことが多い贈与の方法です

ですから、どんなケースがみなし贈与財産にあたり、どの程度の贈与税がかかるのかということを知っておくことが重要です。

みなし贈与財産になってしまうかもしれないと思うことがあれば、迷わず、税理士などの専門家に相談し、アドバイスを受けるようにするとよいでしょう。

2019年3月22日
みなし相続財産は課税対象となるの?
2019年3月22日
代償分割で分割相続をする前に気をつけたいこと
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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