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【相続事例・問題 】
相続時に発生する問題、トラブルについて、事例を交えて説明しています。相続において問題やトラブルが発生するのは珍しいことではありません。事例をもとに対策を知り、相続問題の解決にあたりましょう。

2019年4月12日 金曜日

相続時に前妻との相続関係はどうなるの?

今の時代、2分間に1組のカップルが離婚する時代ですから、離婚した後の人生で、再婚の道を選ぶ人も多いでしょう。

そうなると、相続の時に、昔結婚していた前妻との間に子供がいたことが判明したとか、離婚したばかりの妻が、さまざまな理由をつけて相続権を主張してきた、とか、離婚で相続トラブルが生じる可能性が多くなりました。

そんな時のために、この記事では、相続時に前妻との相続関係について解説します。

離婚後の相続関係はどうなる?

前妻に相続権はない

市区町村の戸籍係に離婚届けが受理された瞬間から、前妻は他人として相続権はありません。

ただし、元夫が、婚姻関係に関わらず特別縁故人として前妻に財産を与える旨の遺言書を残していたりしている場合を除きます。

ちなみに、調停や裁判による協議離婚の場合は、調停成立日、すなわち裁判の判決が出た日が離婚成立日であり、役所に届け出た日ではありませんので注意してください。

例えば、離婚裁判中、離婚調停中の夫婦であれば、その手続き中に夫が亡くなった場合、法定相続人の配偶者は、離婚調停中・離婚裁判中の相続順位1位の法定相続人として、夫の財産を相続できます。

前妻との子には相続権がある

離婚すると前妻は相続人の権利はなく他人となりますが、前妻との子供には相続権が残ります。

前妻が連れ子で再婚した場合、前妻の子は、養子縁組をにより新しい父親ができます。

法定相続人かどうかを判断する亡くなった人(被相続人)との続柄は、戸籍の情報のみで判断されます。

結果として、その子供は、母親の再婚相手(新しい父親)と実の父親がいる状態となり、2人の父親の「子」として財産の相続人となることができます。

相続の規定が定められた時代はDNA鑑定など無かったので、夫婦間の子供である証明は婚姻中に生まれた子か認知した子供、つまり父親が認めた子供が「実子」となっていました。

なお、法改正はその後変更はなく、婚姻関係にない女性との「婚外子」が相続できる財産は、結婚している「夫婦間の子供」の相続財産の半分と定められています。

婚外子が相続できる財産が少ないため、再婚で新しい父親ができたその子供は、実の父親と新しい父親の両者からの相続できる権利を持つ事になるのです。

しかし、DNA鑑定で100%実子かどうかを判別できる現代では、相続の民法の規定は時代にそぐわない内容となってきました。

そこで、2019年から相続に関する法改正が続々となされています。

前妻との間で起こるトラブル例

前妻との間で起こるトラブル事例を紹介します。

わかりやすいように、登場人物を設定します。

<事例設定>

相関図

 

【石井家】栄太の現在の家族

夫:石井 栄太(52歳)

妻:石井奈緒美(32歳)

長女:石井奈緒子(10歳)

【田中家】栄太の前妻の家族

夫:田中義男 (49歳)貴子の再婚した夫

妻:田中貴子 (50歳)石井栄太の前妻

長男:田中栄一 (28歳)石井栄太の実子/田中義男の養子だが1年前死亡

長女:田中貴代 (27歳)石井栄太の実子/田中義男の養子

次男:田中栄二 (17歳)石井栄太の実子/田中義男の養子

長男の恋人:吉田菜央 (20歳)栄一の恋人(大学生) 吉田隆の母親

長男と恋人の子:吉田 隆 (1歳) 栄一の子、義男が栄一の子として死後認知して、菜央が大学を卒業するまで孫として育てている

<トラブル事例ー前妻の子供たちとの遺産分割ー>

夫の栄太は、貴子と離婚して石井奈緒美と再婚し、妻の石井奈緒美との間には10歳の長女がいます。

しかしある日、夫の栄太は突然の交通事故で亡くなってしまいました。

妻の奈緒美は、突如一人で10歳の子供を育てていかないといけないので、今後の生活をどうしようかと思案していました。

そんな中、栄太と前妻の子である田中貴代が尋ねてきました。

前妻と栄太の子である貴代は、栄太の前妻の貴子が新しい父親と再婚した後も、実の父親である栄太と連絡をとって時々会っていました。

妻の奈緒美は、夫の栄太と前妻との子である貴代の存在を知りませんでした。

そして貴代は、突然父親(栄太)と連絡がとれなくなったので、心配で栄太の住所を初めて訪ねてきたのでした。

奈緒美は、貴代を会社の女性だと思い、夫の会社の部下が葬儀の後に来てくれたのだと思って家に上げました。

栄太の仏壇を見た時、貴代は実の父親が急な死を遂げてしまったことを知り、一方奈緒美は、栄太に前妻との子供(貴代)がいた事を知ったのです。

貴代は、弟の栄二と兄の息子の隆も亡くなった栄太と前妻の子であり、相続権がある事を、奈緒美に告げました。

栄太が残した財産は、数百万円の預貯金と生命保険金と分譲マンションだけでした。

栄太と奈緒美が夫婦で働いて得た預貯金と、生命保険金や栄太の事故の賠償金は娘の奈緒子の学費や結婚資金に充てようと思っていたのです。

その計画が音を立てて崩れていきました。

夫の栄太が残した財産を妻の奈緒美と娘の奈緒子で全て相続して、なんとか生活していこうと思っていたのです。

奈緒美と栄太の夫婦だけで一から築いた財産の2分の1を、娘と栄太の前妻の子供とで4人で均等に分けると、妻の奈緒美と10歳の娘との生活は厳しくなります。

実は、夫の栄太が妻の奈緒美と結婚を決意したのは、離婚の慰謝料と養育費の支払いが終わったためでした。

妻の奈緒美は若かったので、40歳のサラリーマンである夫の栄太の預貯金が0円であることに疑問を持たなかったのです。

妻の奈緒美は、愛する夫を亡くしたショックと、夫婦の財産を知らない人へ相続した後のこれからの生活の厳しさに、途方にくれていました。

そしてある日、妻の奈緒美は夫と前妻の子供達から訴えられました。

結局、妻の奈緒美は、夫婦の預貯金と夫の栄太の事故の賠償金を前妻の子供と均等に分割することになりました。

それが正当な法定相続分だからです。

そして、妻の奈緒美は娘の学費を稼げずに進学は諦めて欲しいことを告げました。

【この事例のポイント】

・夫の死亡後、前妻との子供の存在が発覚

・夫婦だけで築いた財産を前妻の子供達と均等に分割

・現在の妻と子の生活は困窮する

遺産分割協議で解決する

前項のトラブルのように、前妻との間に子供がいる事を隠して結婚した場合などの相続トラブルが起こり得ます。

事例の妻:奈緒美のように、被相続人の前妻の子供達との相続協議をに参加しないとと、訴えられてしまう可能性があります。

夫の亡き後に前妻や子供達が相続権を主張してきた場合は、拒否ではなく弁護士に代理人を依頼するなどして、夫の前妻の子供達と遺産分割協議を進めるしかありません。

確かに各相続人の法定相続分は決まっていますが、様々な事情を話し合い財産の相続割合を調整することは可能です。

しかし、協議には知識と経験が必要ですので、弁護士を代理人にして話し合うことで、解決する可能性が高まります。

裁判になる前に、自分の権利の主張だけではなく、相手の状況や今後の生活について話し合い、お互い譲歩することが遺産分割協議には必要です。

そして、大切な人が亡くなった後に、それ以上傷つかないように自分を守ろうとするのは人間なら誰もが持つ感情なので、客観的に対処できる弁護士に依頼することをお勧めします。

遺言書を残しておく

夫と前妻との子供とはいえ、配偶者から見たら知らない人に夫婦の財産をとられるような気分でしょう。

夫は、夫婦で築いた財産の相続割合と相続方法を遺言書を残すべきでした。

例えば、夫が事故で死んだ場合の賠償金は分割するが、夫婦で築いた財産は配偶者に相続する、という記述も可能です。

また、法定相続人の遺留分は排除できませんが、専門家と相談することで、前もって遺留分への対策もできることがあります。

前妻との間に子供がいる人が再婚した場合は、遺産で相続トラブルにならないよう、遺言書を残しましょう。

特に、子供のいない夫婦は、相続トラブルの可能性がさらに高まります。

遺言書が無い場合は、配偶者は前妻の子供達に半分の相続財産を与えることになり、配偶者が相続税が払えない場合は家を売るケースもあります。

専門家に相談する

前妻との子供と遺産を分割するようなケースでは、自分で悩まずに、専門家に相談しましょう。

例えば、相続の法改正により法定相続人は「寄与分の請求」が可能です。

寄与分の請求とは、被相続者(亡くなった人)の財産の増加に貢献したことを相続協議や裁判で認められた場合、貢献した人は法定相続分より多く相続できる権利です。

具体的には以下の行為が該当します。

・被相続人の看病をした

・被相続人の老後の介護をした

・被相続人の借金の肩代わりをした

・被相続人の生活を補助した

・被相続人の事業を無償で手伝った

また、専門家にアドバイスをもらうことで、下記のような相続対策をしておくことができます。

・遺言書を残す

・配偶者を受取人にした生命保険に加入する

・財産の名義を配偶者か子供の名義にしておく

・配偶者への生前贈与

・配偶者名義の預貯金を用意する

前妻との間に子供がいる人は、その人数が多いほど、現在の家族にわたる財産は減ります。

それは悪いことではありませんが、状況によっては生活を困窮させ、家族関係が親密でなくなるトラブルを引き起こすでしょう。

あらゆる相続トラブルを回避し、全ての家族の未来の生活を本当に考えるのであれば、まずは専門家に相談しましょう。

まとめ

結婚歴がある人と結婚するとき、「過去は関係ない」と思うかもしれません。

たしかに、夫婦の生活を築くのに、お互いの過去は関係ありません。

しかし、相続においては、これまでの全ての家族関係に配慮する必要があります。

だから、結婚歴があって、前妻との間に子供のいる男性と結婚した場合は、その子供たちが相続に関わってくることを知っておく必要があるでしょう。

知っておくだけで、人の精神的な負荷はかなり軽減されます。

そして、相続に少しでも懸念があるのなら、生前に専門家に相談することを強くお勧めします。

ご自身がいなくなった後は、遺された家族に何もできないのですから。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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