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【相続人について 】
相続人について説明しています。相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐひとのことをいいます。法律で定められた相続人を法定相続人と呼び、順位によって受け取る財産の配分に違いがあります。

2019年2月6日 水曜日

孫への生前贈与で相続税の節約をする

孫への生前贈与として相続税の節約をしたいと考えた場合、生前贈与の方法によっては、贈与税が掛かってしまい、孫に負担をかけてしまうことも考えられます。

孫への生前贈与を行う際は、非課税で生前贈与を行い、相続税の節税対策を兼ねることが大切です。

そうすることで、孫に負担をかけることなく、生前贈与を行うことが可能になります。

それでは、孫への生前贈与でどのように相続税の節約をすることができるのかご紹介いたしましょう。

相続以外で孫に財産を渡す

相続以外で孫に財産を渡したいと考えた場合、生前贈与という方法があります。

孫に生前贈与をしたい場合は、暦年贈与という制度と教育資金の一括贈与、結婚・子育ての一括贈与、住宅取得の際の贈与税の特例という制度などを利用することで節税対策をすることが可能となります。

まず、暦年贈与の制度ですが、1月1日から12月31日までを1年間として考え、この1年の間に110万円以下の財産の贈与であれば、贈与者である祖父母から非課税で孫が生前贈与を受けることができます。

また、本来であれば、贈与者が亡くなってから3年前まで遡った生前贈与は相続とみなされ、相続税が発生しますが、孫への生前贈与の場合だと、3年前まで遡っても生前贈与は相続にはならず、贈与のまま受け取ることができます。

そのため、孫への生前贈与は、確実に相続税の節約となります。

しかしながら、贈与者が亡くなり、遺言書に孫に財産を相続させる旨の記載があった場合はこの限りではありません。

遺言書に孫に財産を相続させるとあった場合は、ほかの相続人と同じ扱いとなり、生前贈与で受け取った財産は3年前まで遡って相続とみなされます。

また、贈与者が亡くなった場合、生命保険の受取人を孫に指定している場合は、遺言書で財産を相続させると記載があったときと同様に3年前まで遡って生前贈与分も相続とされます。

次に生前贈与の中でも孫に教育資金の目的で財産を渡したい場合は、教育資金の一括贈与という制度を利用するとよいでしょう。

教育資金の一括贈与であれば、最大1,500万円まで非課税で生前贈与を行うことができます。

ただし、教育資金の一括贈与で受け取った贈与を受贈者である孫は、教育資金目的以外で使用をすることができません。

この制度を利用する場合は、教育資金管理契約をするときに金融機関などを通じて「教育資金非課税申告書」を所轄税務署長に提出する必要があります。

教育資金の一括贈与の制度のメリットは、贈与者が亡くなっても、3年前まで遡って税金が加算されることがない点です。

そのため、相続で財産を残すよりも、格段に節税することができるといえるでしょう。

また、結婚・子育ての一括贈与の場合は、結婚であれば最大300万円、最大子育てであれば最大1,000万円まで非課税で孫は贈与を受け取ることができます。

ただし、結婚・子育ての一括贈与は結婚や子育てに関する目的以外で受け取った贈与を使用することはできません。

また、教育資金の一括贈与と同様に、贈与者が亡くなっても、3年前まで遡って税金が加算されることがないのもメリットの1つです。

ただし、どのような目的で贈与された金銭を使用したかについては、領収書などの書類を保管しておかなければならないため、ほかの非課税になる生前贈与と比較すると少し手間が掛かります。

そして、住宅取得の際の贈与税の特例も孫に生前贈与をする場合にも相続よりもメリットがあります

住宅取得の際の贈与税の特例は、契約の締結日と住宅用の家屋の種類によって、非課税となる金額が異なりますが、300万円から3,000万円までの贈与を非課税で受け取ることが可能です。

この制度を利用する場合は、受贈者である孫が贈与を受ける年の1月1日には20歳である必要があるため、年齢などの条件には気を付けなければなりません。

また、この制度を利用する際は、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日の期間に、住宅取得の際の贈与税の特例を利用したことを記載した贈与税の申告書に、一定の書類(戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど)を添付し、納税地の所轄税務署に提出しなければならないといった決まりがあります。

このように、孫に相続以外の方法で財産を渡す場合は、生前贈与という方法を取るとことができ、同時に節税対策を行うことができます。

ただし、生前贈与には、さまざまな方法があり、利用条件も異なるため、贈与で渡す財産の使用目的が特に受贈者側で決まっていないのであれば、暦年贈与の制度を利用し、贈与の目的が教育や結婚・子育て、住宅の購入などであれば、それぞれ教育資金の一括贈与、結婚・子育ての一括贈与、住宅取得の際の贈与税の特例を利用するとよいでしょう。

生前贈与とは

生前贈与とは、財産を生きている間に自分の選んだ人に渡すことをいいます。

生前贈与をする場合、贈与する人を贈与者といい、贈与される人を受贈者といいます。

生前贈与には、贈与者と受贈者のお互いの合意が必要であるため、どちらか一方が贈与したりされたりすることをよしとしていない場合は、生前贈与が成り立つことはありません。

また、贈与者が受贈者である孫のために、孫の名義の預貯金をしている場合、贈与者が亡くなった際に生前贈与とみなされないことがあります。

これは、生前贈与の合意がなされていたと考えられないことによるものです。

そのため、孫の名義で生前贈与として名義預貯金をしている場合は、贈与契約書を作成しておくようにしましょう。

贈与契約書に関しては、決まった形式などはないため、必要事項である贈与者の氏名と住所、受贈者の氏名と住所、贈与契約書を作成した日付、贈与財産の詳細などを記載し、捺印をすれば問題ありません。

ただし、贈与契約書を公正書証としたい場合は、専門家に依頼して、作成してもらうことも可能です。

贈与契約書を公正証書にすると、紛失の可能性や記載漏れなどの心配がなく、強制執行できるといったメリットがあります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、相続時精算課税を選択した贈与者が年間(1年を1月1日から12月31日までとして)に贈与を受けた財産の合計金額から、特別控除額である2,500万円の控除をした残額に対して、贈与税が掛かるといった制度のことをいいます。

また、特別控除額2,500万円は、贈与税の期限内申告書を提出した場合にのみ、控除が適用されます。

もし、前年以前に特別控除を受けている場合は、特別控除額である2,500万円からその金額を控除した残額が特別控除限度額になるので注意が必要です。

この制度を利用する場合は、贈与の年の1月1日に贈与者は直系尊属である父母や祖父母など60歳以上の人であり、受贈者は直系卑属である子どもや孫など20歳以上の人でなければなりません。

また、一度相続時精算課税制度を利用してしまった場合は、暦年贈与の制度に切り替えることはできません。

ですから、相続時精算課税制度を利用する場合は、慎重に決定することが重要です。

贈与税の課税対象となるもの

贈与税の課税対象となるものは、個人から受け取った財産です。

法人から受け取った財産には、贈与税が掛からず、所得税が掛かります。

また、生前贈与には一定の条件を満たせば、個人から受け取った財産であっても非課税となる場合があります。

どのような生前贈与を考えているかによって、非課税となる金額は異なりますが、節税対策を行えることに変わりはありません。

生前贈与のメリットとは?

生前贈与のメリットには大きく分けて、3つのメリットがあります。

1つ目のメリットは、贈与者が財産を渡したいと思う人に自由に金額を設定して贈与することが可能であるという点です。

被相続人が亡くなってしまい、相続という形になってしまうと、法定相続分といって遺言書がない場合は、決められた割合で配偶者から順に相続されます。

ただし、いくら生前贈与をしていたとしても、法定相続人である配偶者、子ども、直系尊属である父母あるいは祖父母には遺留分(一部の法定相続人が認められている財産の最低限の相続の割合)があるため、生前贈与の自由度がいくら高いといっても、贈与者がすべての財産を自分の自由に受贈者に渡すことは不可能です。

なぜなら、遺留分の範囲は生前贈与にも及ぶからです。

法定相続人は、相続が開始された1年前まで遡って、生前贈与から遺留分減殺請求を行うことができるため、贈与者が生前贈与を行っていたとしても、遺留分を求められることとなります。

ただし、贈与者と受贈者がともに、遺留分を侵害しているとわかっていながら、贈与をしていた場合は、1年以上遡って、遺留分減殺請求が行えると民法(遺留分の算定)第1030条に定められています。

2つ目のメリットは、孫が生前贈与を受けた場合に限った話ですが、孫が生前贈与として受け取った財産は、特別受益にあてはまらないという点です。

通常の生前贈与の場合は、相続する際に共同相続人の中に生前贈与を受けている相続人がいた場合、ほかの共同相続人と相続に関して公平にするため、生前贈与された財産を相続財産に戻して考え、相続分を算出する「特別受益」というものがあります。また、生前贈与として受け取った財産を相続財産に戻すことを「特別受益の持ち戻し」といいます。

生前贈与の中でも特別受益に該当する財産については、時効がないことも手伝って、明確な判断が難しいといわれています。

そのため、数十年前に生前贈与として受け取った財産も特別受益の持ち戻しの対象になる可能性があるので注意が必要です。

しかしながら、孫への生前贈与の場合は、特別受益にあたらないため、これらの心配がありません。

特別受益ではないということは、生前贈与として受け取った財産は、贈与された段階ですべて孫のものであるということであり、メリットであるといえるでしょう。

ただし、遺留分を侵害している場合は、遺留分減殺請求をされることがあるため、その点には注意が必要です。

3つ目のメリットは、一定の条件さえ満たせば、非課税で生前贈与を受け取れる制度があるという点です。

非課税で利用できる制度には、暦年贈与の制度をはじめ、教育資金の一括贈与や結婚・子育ての一括贈与、住宅取得の際の贈与税の特例などの制度があります。

生前贈与には利用する制度によって条件が違い、非課税になる金額も異なりますが、節税対策になる点は同じです。

特に目的がはっきりとしている生前贈与に関しては、通常非課税になる金額よりも多くの金額を非課税で生前贈与することが可能です。

ただし、その目的以外に贈与された金銭を使用することはできないことになっています(詳しくは、「1.相続以外で孫に財産を渡す」をご参照ください)。

孫への生前贈与による節税対策方法

生前贈与には一定の条件を満たせば、非課税で行える場合があります。

その中でもよく挙げられる制度があります。

まず、1つ目は暦年贈与という制度を利用した生前贈与です。

この生前贈与は生前贈与の中でも一般的に利用されているものであり、1年を1月1日から12月31日と定義し、この1年間に110万円以下であれば、課税されないといったものです。

ただし、贈与者が亡くなった場合、3年前に遡って、生前贈与された財産は相続した財産とみなれさます。

そのため、贈与者が亡くなるまで10年間、生前贈与が行われていたとした場合、7年間の770万円までは非課税で受け取ることができ、残りの3年間の330万円分は相続財産としてみなれさるということです。

たとえば、5,000万円の財産があり、10年間の生前贈与を行っていれば、7年間分770万円は非課税で受け取ることが可能となり、4,230万円分の相続分に相続税が課税されるだけですむことになります。

しかし、生前贈与を行っておらず、相続のみの場合だと5,000万円すべてに相続税が掛かってしまうことになります。

これはあくまで法定相続人が1人であった場合の想定であり、法定相続人が数名いた場合は遺留分などの発生があったり、遺言書があり共同相続人が数名いた場合などは条件が異なったりする場合があります。

まとめ

このように、孫への生前贈与は相続税の節税につながります。

また、相続税を節税することができれば、結果的に将来的な孫の負担にならずにすみます。

そのため、孫への財産を残したい場合は、さまざまな条件を満たす必要はありますが、生前贈与をすることが一番よい方法であるといえるでしょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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