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【お金の相続 】
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2019年2月25日 月曜日

相続をしたときに所得税はかかる?

相続が発生したときに支払うべき税金について、所得税と相続税を混同している人が時々いらっしゃいます。

確かに相続人は所得税と相続税の両方、またはいずれかを支払うことになる場合が多いのですが、相続における所得税は被相続人(亡くなった人)の生前の所得に対して課されているもので、遺産を相続したことに対して課される相続税とは全くの別物です。

本コンテンツでは、所得税の基本からご説明しながら、相続における所得税の扱いについてご説明します。

所得税とは

所得税とは、課税対象となる収入から必要経費を差し引いた個人の「所得」に対して課される国税です。

所得税は、年間2,000万円を超えない会社員の給与所得であれば、基本的に毎月の給与から源泉徴収され最終的な金額は年末調整により確定します。

これに対して、源泉徴収されない所得については確定申告を行い納税額を確定させてから納付します。

所得の区分

所得税の課税対象となる所得は、以下の10種類です。
給与所得…俸給、給料、賃金、歳費および賞与ならびにこれらの性質を有する給与
退職所得…退職手当など、その他の退職により一時的に受ける給与およびこれらの性質を有する給与
利子所得…公社債や預貯金の利子、合同運用信託などの収益分配金
配当所得…法人から受け取る剰余金や利益の配当および分配、投資信託などからの収益分配金
不動産所得…不動産および不動産の上に存する権利、船舶や航空機などの貸付による所得
事業所得…農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業から生じる所得
山林所得…山林を伐採して譲渡し、または立木のまま譲渡したことによる所得
譲渡所得…資産の譲渡による所得
一時所得…賞金、競馬の払戻金、保険の満期返戻金など、上記以外の所得のうち営利を目的とした継続的行為から生じた所得以外の一時所得であり、労務その他の役務の対価または資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの
雑所得…公的年金など、他の所得のいずれにも該当しない所得

所得税率

所得税率は、以下のとおりです。

これにより求められた所得税額から税額控除を差引いて所得税額が確定します。

課税対象の所得額195万円以下:5パーセント(控除額なし)
同195万円超330万円以下:10パーセント(控除額97,500円)
同330万円超695万円以下:20パーセント(控除額427,500円)
同695万円超900万円以下:23パーセント(控除額636,000円)
同900万円超1,800万円以下:33パーセント(控除額1,536,000円)
同1,800万円を超え4,000万円以下:40パーセント(控除額2,796,000円)
同4,000万円超:45パーセント(控除額4,796,000円)
※ここでいう税額控除とは、配当控除、住宅借入金等特別控除、政党等寄付金特別控除などが該当します。

所得税の課税方法

源泉分離課税制度

ほかの所得と分離し、所得を支払う人が所得税を源泉徴収することで納税が完結する方法です。

所得を受け取る人は、受け取る時点で所得税と住民税が差し引かれているので、確定申告の対象となる所得からは除外されます。

源泉分離課税の対象となる代表的なものは、預貯金の利子などで、所得税15%、住民税5%の計20%が源泉徴収されます。

2037年末までは復興特別所得税が上乗せされ、所得税率は15.315%、住民税率は5%、計20.315%となります。

公社債の利子や償還差益のほか、不動産や株式の譲渡益や配当所得などが、所得税と住民税を所得から引かれる源泉分離課税制度を選択可能です。

配当所得や利子所得にかかる税金は、同じく源泉徴収されていますが、2つの違いは、利子所得は源泉徴収だけで課税が完結し、確定申告が不要となることです。

サラリーマンの方でしたら、源泉徴収票を思い出し、給与も源泉分離課税では、と考える方もいるでしょう。

所得を支払う側は、源泉徴収票を発行するよう所得税法に定められています。

所得を支払う人が所得税を源泉徴収するという点では給料も同じですが、給料は源泉徴収の対象ではありますが、年末調整や確定申告によって精算されて初めて完了します。

源泉分離課税と呼ぶものは、源泉徴収され課税が完了するものだけです。

総合課税制度

各所得の金額を合算した課税所得に、所得税の税率をかけて所得税額を算出する課税方式で、確定申告が必要です。

株式の配当金や投資信託の分配金・解約差益・償還差益は配当所得としてほかの所得と分離して源泉徴収されますが、確定申告をすることで総合課税とすることも可能です。

この方式による所得税は、「(各所得の合計金額-所得控除)×累進税率」で算出されます。

なお、所得控除とは基礎控除(38万円)、医療費控除(最大200万円)、配偶者控除、生命保険料控除、寄付金控除などが該当し、所得から差し引かれた額で所得税が計算されます。

申告分離課税制度

各所得の金額は合計せず分離して税額を計算し、確定申告を行う方式です。

この方式による所得税は、「(所得金額-所得控除)×比例税率」で算出されます。

この場合の所得控除可能額は総合課税制度で控除しきれなかった分であり、比例税率は長期譲渡所得、短期譲渡所得などにより所得別に定められています。

【申告分離課税の対象所得】

  • 株式譲渡所得など(特定口座、少額投資非課税制度(NISA)などは確定申告不要)
  • 不動産売却による譲渡所得
  • 先物取引による雑所得
  • 山林所得

被相続人の所得税申告は必要?

被相続人の所得税申告が必要なケース

通常、所得税の確定申告は前年1月1日から12月31日までの1年間に生じた源泉徴収されていない所得の金額とそれに対する所得税の額を計算して税務署に申告する手続きのことです。

医療費控除や株式等の譲渡所得の損益通算、ふるさと納税を行う場合なども確定申告が必要です。

ところが、死亡してしまうと確定申告ができません。

そこで、税金の納付漏れを防ぐために被相続人の確定申告を相続人が代わって行うことを、準確定申告といいます。

被相続人の相続が発生した年の1月1日から、相続が発生した日までにあった所得税の課税対象となる所得については、源泉徴収されているものを除き準確定申告が必要となります。

また、被相続人が前年分の確定申告を行わないまま死亡した場合は、前年分の所得に関する確定申告が必要になります。

被相続人が次のような事項に該当しており、生前に確定申告を行っていた場合は、準確定申告が必要となる可能性が高くなります。

共通して必要な場合

・所得税の額の合計額が、配当控除額と年末調整対象である住宅借入金等特別控除の合計額を超える場合
・個人事業を行っていた場合
・賃料などの不動産所得や貸付金の利子所得がある場合
・保有する土地や建物を売却した場合(法人への遺贈など、みなし譲渡所得を含む)
・医療費控除の対象となる高額の医療費の支払いがある場合
・寄付控除の対象となる高額の寄付を行っていた場合
・生命保険などの満期還付金や一時金を受け取っていた場合

年金生活者の場合

・公的年金等による雑所得が基礎控除未満の場合
・公的年金等による雑所得以外の所得金額が20万円を超えている場合
・公的年金等による収入が400万円を超えている場合

給与所得者の場合

・その年中の支払給与等の合計額が2,000万円を超える場合
・1ヶ所のみから給与等の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得(外貨預金の為替差益を含む)が20万円を超えている場合
・2ヶ所以上から給与等の支払を受けている人で、年末調整を受けていない受けていない従たる給与等の金額と給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える場合
・同族会社の役員等で、当該同族会社から貸付金の利子または資産の賃貸料などを収受している場合
・災害減免法に基づき給与に関する所得税等の源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けていた場合
・給与から源泉徴収されない制度の在日外国公館に勤務していた場合
・外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されない所得がある場合
・パートタイマーであり、その収入が103万円以下で他に所得がない場合

また、被相続人が以下に該当する場合は、準確定申告を行うことで被相続人が生前に支払っていた税金の還付を受けることが可能な場合もあります

・高額の医療費を支払っていた場合
・高額の寄付を行っていた場合
・収入が給与または年金のみで源泉徴収の対象であり、その年の年末調整未了のまま亡くなった場合
・年末調整を受けていない生命保険料や地震保険料など各種控除を受けることが可能な支払いがある場合
・住宅ローンの残債がある場合(一定の要件有り)
・認定住宅新築等特別税額控除の対象となる自宅を新築していた場合
・盗難や自然災害などによる被害を受けていた場合

なお、準確定申告により各相続人が負担した税額は、相続人の相続財産額から債務として控除され、同じく準確定申告により各相続人が還付を受けた金額は相続財産に加算されます

相続時には準確定申告をする

準確定申告は相続人に課された義務であり、相続人全員で行うことが原則です(ただし、各相続人が個別で行うことも可能です)。

準確定申告の申告および納税期限は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」と定められています。

期限までに申告・納税が為されない場合や過少申告を行った場合、加算税(無申告加算税・過少申告加算税・不納付加算税・重加算税)延滞税などの追徴が課されることになり、さらに悪質と判断された場合は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が課されることになります。

また、前年に確定申告の必要な所得があった人が、次の年に確定申告を行う前に死亡した場合、まだ行っていない前年分の確定申告も、準確定申告と同様の期限までに行う必要があります。

なお、準確定申告が不要であり還付金を受け取るために申告する場合は、上記の期限内でなくてもよいとされています。

もちろん、還付金が生じる場合に準確定申告を行わなかった場合については、何も罰則規定はありません。

相続税との違い

被相続人の所得税の申告と、被相続人の遺産を受け継ぐ際の相続税の申告は、どちらも相続人が手続きを行うものですが、まったく別のものです。

これまでご説明したとおり、準確定申告における所得税とはあくまで被相続人の所得に対する税金です。

これに対して相続税は、被相続人から相続または遺贈(遺言の指定により遺産を取得すること)によって遺産を受け継いだ人が、その取得した遺産の額に応じて課される税金です。

このように、準確定申告における所得税と相続税はその性質が全く異なり、根拠法も所得税法と相続税法というように別です。

相続時の所得税申告手続き方法

準確定申告は、後述する書類を揃えて遺族などの相続人が被相続人の死亡当時の納税地を所管する税務署に申告・納付します。

相続人の住所を所管する税務署ではありませんので、ご注意ください。

なお、準確定申告は書類を郵送することは認められていますが、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用することはできません。

また、国税庁による確定申告書作成コーナーの利用もできないため、基本的にすべて手書きで作成することになります。

また、納付は現金かクレジットカードでのみ可能です。

申告者の規定

国税通則法第5条第1項によりますと、準確定申告の義務者は相続人または包括受遺者(法定相続人ではないが被相続人から遺言などで財産を特定せず受け取る人)とされています。

相続税の申告と異なり、包括受遺者が法人であっても準確定申告の義務者となります。

相続人が2名以上いる場合、準確定申告は相続人全員で行うことを基本としており、具体的には「死亡した者の平成○年分の所得税の確定申告書付表」に相続人が連署することで申告します。

なお、相続人が個別に申告することも認められていますが、この場合でも自身の申告内容を他の相続人に通知することが義務付けられています。

したがって、準確定申告の手続きでは相続税の申告・納税と同様かそれ以上に相続人間での連携・協調が求められるのです。

なお、準確定申告による相続人の負担割合は、遺言書の有無により異なります。

遺言書が無い場合は、実際の相続割合によらず法定相続割合で按分して計算した額を負担するものとされています(国税通則法第5条第2項)。

これに対して遺言書がある場合は、当該遺言書に指定された分割割合に応じて各相続人が負担します。

必要書類

準確定申告における主な必要書類は、以下のとおりです。

「平成○年分の所得税の確定申告書(AまたはB)」および「死亡した者の平成○年分の所得税の確定申告書付表」については、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

・平成○年分の所得税の確定申告書(AまたはB)
・死亡した者の平成○年分の所得税の確定申告書付表(相続人の数が複数以上の場合に提出。各相続人の氏名、住所、被相続人との続柄、相続割合、相続額、マイナンバーなどを明記)
・給与や年金の源泉徴収票
・生命保険や損害保険の控除証明書
・医療費の領収書(医療費控除を受ける場合)
・納付書(100円未満切捨て)
・委任状(代表者が一括して還付金を受け取る場合)
・青色申告決算書、収支内訳書(事業所得がある場合)
・マイナンバー通知カードまたはマイナンバーの記載のある住民票の写し
・本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)の写し

基本的に、準確定申告で提出が要請される書類は通常の確定申告と同様のものとなります。

大きく異なる点としては、本紙である「平成○年分の所得税の確定申告書(AまたはB)」の表題部分に「準」と書き足すこと、相続人が1名の場合は申告者の氏名欄に被相続人の氏名に加えて相続人の氏名も記載すること、相続人の数が複数以上の場合は「死亡した者の平成○年分の所得税の確定申告書付表」を提出する必要があると定められていることです。

相続時の所得税申告手続きで注意すること

被相続人が、1月1日から確定申告期限までの間に前年分の確定申告をせず死亡した場合、相続人は前年分と本年分の準確定申告をしなければなりません。

期限はどちらも同じで、相続人が相続開始のあったことを知った日の翌日から4カ月以内です。

相続税申告の期限は10カ月ですが、その間に準確定申告を2回行わなくてはいけない場合もあるということです。

相続人が複数人いる場合は、準確定申告を連署で税務署に提出しますが、ほかの相続人の名前を付記して相続人それぞれが別々に提出することもできます。

その場合、申告書を提出した相続人は、ほかの相続人に申告した内容を通知しなければいけません。

被相続人が死亡する日までに自分で支払った医療費は、医療費控除として準確定申告の所得から控除が可能でですが、相続人が被相続人の死亡後に被相続人に掛かった医療費を支払っても準確定申告で医療費控除はできません。

被相続人が死亡する日までに支払った社会保険料や生命保険料、地震保険料は、準確定申告で控除できます。

配偶者控除や扶養控除等を適用する判断は、被相続人の死亡日の現況によります。

所得税の支払いは準確定申告の納付は、法定相続分と遺言で指定された相続分がある場合にはその指定相続分で按分して計算した額を、各相続人が負担します。

準確定申告で所得税を支払う場合は現金で納税を行うため、現金を用意する必要があります。

まとめ

以上、所得税の準確定申告を含め相続における所得税と相続税の違いをご説明しました。

ご自分で確定申告をされたことのある方は、さまざまな控除制度や税金の計算など、大変複雑なことをご理解いただけているでしょう。

これが自分の申告ではなく、被相続人の申告だったら余計に大変だということは想像に難くないでしょう。

その申告も、落ち着いた環境で行うのではなく、悲しみに暮れながら、さまざまな手続きの中行うのです。

しかも期限は4カ月以内と、相続税の申告より日程は短いです。

被相続人が小さな企業を経営されている方や個人事業主だった場合は、取引先との関係も発生します。

被相続人と相続人が、普段はあまり交流がなかった関係の場合は、どうしていけばいいでしょう。

顧問契約をしている税理士がいればいいですが、被相続人がお金のながれをすべてご自分だけで把握していた場合は途方に暮れてしまうかもしれません。

会社だった場合には、地方法人税、法人県民税、法人市民税、消費税、源泉所得税、住民税

(特別徴収)、印紙税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税、事業所税、自動車税、社会保険料と、たくさんの税金が関わってきます。

遺書が残されておらず、相続税が課税されるほどの財産をお持ちの被相続人が亡くなられた場合には、遺産分割協議を開催するだけでも相当な労力が掛かります。

所得税だけでなく、相続税の控除などの知識を持った税務のプロ、税理士へできるだけ早くご相談ください。

2019年2月25日
不動産を相続した場合に固定資産税の納税者は誰になる?
2019年2月25日
お金を相続したときの相続税はいくら?
監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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