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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年1月26日 土曜日

税務署から相続税のお知らせが届いた場合の対応方法

相続が発生した際には、相続税のお知らせが税務署から届きます。

お知らせを無視してしまった場合、大きな不利益に繋がる可能性があるため、内容を確認したうえで適切に行動することが大切です。

ここでは、相続開始後に税務署から届くお知らせの内容や、その後にとるべき行動などについて詳しく解説します。

また、相続が発生する前に準備できることもあわせてご紹介します。いざ、相続時に慌てないように、しっかりと確認しておきましょう。

相続開始後に税務署から届くお知らせ

相続開始後に税務署から届くお知らせは、どのような内容になっているのでしょうか。

お知らせが届く理由とあわせて確認していきましょう。

お知らせの意味

相続開始後に税務署から届くお知らせは、「相続税についてのお知らせ」か「相続税の申告書についてのご案内」のいずれかです。

「相続税についてのお知らせ」は、相続税がかかるかどうか確認するように指導する内容となっています。

そして、「相続税の申告書についてのご案内」は、相続税が発生する可能性が高いため、確認のうえでしっかり申告することを求める内容となっているのです。

「相続税の申告書についてのご案内」の方が「相続税についてのお知らせ」が届いた場合よりも、相続税が発生する可能性が高いと考えられます。

お知らせが届く理由

税務署は、被相続人と相続人など親族に関する情報を調べることができます。

つまり、税務署はどれぐらいの財産が相続されるのかを把握しているのです

相続税は、発生する場合と発生しない場合があります。

「相続税についてのお知らせ」は、全ての相続人に送付されるわけではないため、相続税が発生する可能性がある相続人に送付されるものと考えられます。

自分で相続税を計算したところ、相続税の申告と納税の必要がないと認識していても、実は相続税の申告と納税が必要だったということもあり得ます。

そのため、税務署から「相続税についてのお知らせ」が届いた場合は、相続税が発生するかどうか今一度計算することが大切です

計算方法を勘違いしていると、相続税の申告と納税が必要なのに、不要だと捉えてしまう恐れがあります。

そのため、財産の計算や相続税が必要かどうかは税理士に相談して確認した方がいいでしょう。

税務署からお知らせが届くのは、簡単に言うと「申告しなければ追及します」という意味合いも含まれています。

相続が発生しても税務署から何も届かない場合では、「もしかすると相続税の納税を免れられるかもしれない」と考える人物がいるかもしれません。

そうなれば、税務署としても相続税の申告と納税がないことを確認して相続人に連絡し、納税を求めることになります。

税務署の仕事が増えてしまうため、あらかじめ書面で相続税をしっかり申告・納税するように呼びかけるのです。

相続の基本知識

相続は、亡くなった人の資産である預貯金や不動産などを相続人が引き継ぐ手続きのことをいいます。

配偶者や子供、兄弟、遺言書があれば家族以外の人にも引き継がれることがあります。

人が亡くなった場合は、死後7日以内に役所に死亡届を出す必要があります。

正当な理由がなく届出が遅くなった場合は、5万円以下の罰金がかかることもあります。

死亡届が役所に届けられることで、国はその人が亡くなったことを把握し、マイナンバーなどからその人の全財産の総額予想を立てます。

そこから相続税の概算を把握しているので、お知らせはそれを元に送られてきます。

相続人は、お知らせが届いたあたりから、遺言があればそれに基づいて、なければ相続人全員で遺産分割協議を開き、相続資産の分割内容を決めていきます。

この時、相続資産の総額が下記の計算金額より多い場合、相続税が発生します。

3000万円+600万円×法定相続人の数

この時、上記より多い金額の相続資産がある場合は、税務署に相続税の申告をして、相続税を納めます。

これは、相続を知った翌日から10カ月以内にする必要があります。

これも過ぎると、無申告加算税や延滞税がかかってくるので注意が必要です。

申告した金額と、税務署が把握している金額に差があるとお知らせが届く要素となります。

提出の義務はあるのか?

相続税は、相続額が基礎控除額を上回った場合に申告・納税の義務が発生します。

ただし、基礎控除額を上回らない場合でも相続額の申告が必要な場合があるため、注意が必要です。

基礎控除額は、法定相続人の数で変わります。

  • 1人・・・3,600万円
  • 2人・・・4,200万円
  • 3人・・・4,800万円
  • 4人・・・5,400万円
  • 5人・・・6,000万円
  • 6人・・・6,600万円
  • 7人・・・7,200万円

これは、それぞれの相続人が受けられます。

法定相続人が3人で資産が1億4,400万円の場合、均等に分割すると1人4,800万円となります。

この場合、それぞれが基礎控除によって控除後の相続税が0円になるため、相続税の申告・納税が不要です。

ここで注意したいのは、相続税の課税対象となる財産と、課税対象にならない財産の確認です。

認識が間違っていれば、相続税も正しく算出できません

  • 相続税の課税対象となる財産

不動産と金融財産に加え、自動車や家具、電話加入権、リゾート会員権、入院保険金、売掛金、損害賠償請求権などです。

不動産には、山林や畑、地上権、倉庫、借家などが含まれます。

単なる自宅の土地と建物だけではないので注意が必要です。

また、金融財産は、現金および預貯金に加え、株式や投資信託、公社債なども含みます。

思いがけないところから相続の課税対象となる財産が出てきて、思っていたよりも相続税がかかることもあり得ます。

そのため、税理士に相談して、財産の所在や課税対象を明らかにすることが大切です

  • 課税対象にならない財産

墓石や墓地、仏壇、仏具など祭祀承継されるもの、死亡保険金、死亡退職金は、課税対象になりません。

ただし、死亡保険金と死亡退職金には上限があります。

死亡保険金は、500万円×法定相続人数までが非課税です。

なお、相続を放棄したり受け取らなかったりする人物がいる場合にも、法定相続人の数に加えて計算します。

死亡退職金も、500万円×法定相続人数までが非課税です。この場合も、相続を放棄したり受け取らなかったりした人物も法定相続人の数に加えます。

また、課税される相続財産が基礎控除額を下回る場合でも、次のようなケースでは相続税の申告が必要です。

  • 小規模宅地等の特例を適用する

小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた住宅などを相続する際に、評価額を大きく減額できる制度です。

50~80%も評価額を下げられます。

たとえば、評価額5,000万円の住宅を相続する際に、小規模宅地等の特例を適用すれば、評価額を1,000万円まで減額できることもあるのです。

評価額が下がれば、それだけ相続税の負担も少なくなります。

基礎控除に加えて小規模宅地等の特例を適用することで、相続税を納める必要がなくなることもあるのです。

ただし、小規模宅地等の特例を適用するためには、期限までに相続税の申告をしなければなりません。

これは、基礎控除によって相続税が0円になったケースでも申告が必要です。

  • 生前3年以内に贈与した財産がある

相続税の支払いが必要な相続財産がある場合、少しでも相続税を減らそうと生前贈与を利用することがあります。

生前贈与であれば、年間110万円までの贈与に限り贈与税がかかりません。

例えば、年間110万円前後を10年かけて贈与すれば、1,100万円分を納税することなく子へと与えられるのです。

ただし、相続税逃れのための生前贈与は認められていません。

余命宣告を受けたことで、急いで贈与するようなケースもあるため、法律では生前3年以内の贈与には贈与税がかかるようになっています

元気だった被相続人が急に亡くなった場合にも、生前3年以内の贈与には贈与税が課せられます。

ただし、相続税からは贈与税分が差し引かれるため、二重取りにはなりません。

あくまでも、相続税を逃れることを目的とした贈与を防ぐための対策となっています。

また、毎年110万円を数十年にわたって贈与するようなケースでは、相続税逃れを目的とした贈与と判断され、贈与税がかかることがあります。

贈与を数年に1回にしたり、1回の贈与額を大きく変動させたりすることで、相続税逃れが目的ではないと判断されることもありますが、詳しくは税理士にご相談ください。

贈与税がかからないと思って多額を贈与し、後から贈与税の支払いで資産がパンクすることも考えられます。

生前贈与を利用する場合は、税理士のアドバイスに従うことが大切です。

お知らせが届いたらやるべきことは?

相続税のお知らせが届いてからは、相続税の申告が必要かどうかを知るために、遺産の調査や遺産分割協議を行い、相続税を計算することになります。

相続税の申告・納税までの流れは次のとおりです。

  • 被相続人の確定申告

相続人全員の連署と押印が必要です。

なお、1億円以上の同族株を含む有価証券があり、相続人のうち1人でも海外に居住している場合には、有価証券だけでも遺産分割協議を終了しておかなければなりません。

遺産分割協議ができていないと、国外転出課税がかかるため注意が必要です。

  • 相続財産の調査

金融機関から残高証明などを取得する他、不動産や権利などについても調べる必要があります。

課税対象になるかどうかを含め、ミスがないよう細かく調べなければなりません。

これは、相続人だけで行うと調べ残してしまう可能性があるため、税理士などに相談した方がいいでしょう。

調べた情報をもとに、遺産目録を作成します。

そして、相続税の概算を相続人に提示することになります。

  • 遺産分割協議

遺書で遺産の分割方法が指定されていない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行います。

一部の相続人が多くの取り分を主張した場合には、協議が長引く可能性があります。

遺産分割協議書には、相続人全員の署名と押印が必要であるため、1人でも理不尽な主張をしてしまえば、必要に応じて調停を行い、それでもまとまらない場合は裁判を行います。

予想以上に解決までに時間がかかることもあるため、できるだけ早く相続に関することを進めていくことが大切です。

  • 相続税の申告と納税

相続税の申告と納税は、相続が発生した日の翌日から10ヶ月が期限です。

ここで注意したいのは、申告と納税がどちらも同じ期限であることです。

不動産などを相続した場合、相続した金融財産から不動産にかかる相続税を納めることになります。

しかし、金融財産が少なく、不動産の評価額が高い場合には、自分で借金したり不動産を売却したりすることになるのです。

このように、相続税を納めるのが難しいケースもあるため、期限までに相続税を納められるように準備を進めるようにしましょう。

虚偽の内容を記入した場合

相続税の金額を間違って申告した場合と、故意に少ない金額で申告した場合があります。

間違って申告し、税務署から指摘された場合には、速やかに修正申告をしましょう。

この場合は、ペナルティが課せられることはありません。

また、何らかの理由で期限までに申告しなかった場合には、無申告加算税や延滞税が課せられるため注意が必要です。

そして、故意に財産を隠して低い相続税を申告した場合には、重加算税が課せられる可能性があります。

それぞれ、どのようなペナルティなのか確認しておきましょう。

  • 無申告加算税

期限までに申告しなかった場合には、無申告加算税が課せられます。

相続税額によって、税率が異なります。

  • 50万円までの部分に課せられる税率

税務調査の事前通知よりも前に自己申告すれば5%、事前通知後の自己申告になると10%、そして税務調査を受けてからの申告では15%もの無申告加算税がかかります。

  • 50万円以上の部分に課せられる税率

税務調査の事前通知よりも前に自己申告すれば5%、事前通知後の自己申告になると15%、そして税務調査を受けてからの申告では20%もの無申告加算税がかかります。

80万円が相続税額で、税務調査を受けてから申告した場合には、50万円×15%+30万円×20%=135,000円が無申告加算税となります。

  • 延滞税

延滞税は、期限までに相続税を納めなかった場合に課税されます。

相続税の申告書の期限の翌日から2ヶ月以内は年率2.6%、2ヶ月以降は年率8.9%となります。

  • 重加算税

特に悪質と認定された場合には、重加算税が課税されます。

遺産を隠して相続税の納税を免れようとする、証拠書類の数字の偽装・隠ぺいなどが該当します。

無申告であることに加えて、このような悪質な行為があったケースでは、無申告加算税と延滞税、そして重加算税が加算されます。

重加算税は、相続税額の40%です。

また、平成29年1月1日以降に申告期限があり、過去5年間で同様のペナルティを課せられた場合には、重加算税が50%となります。

相続発生前に準備できること

ここまで紹介してきたように、お知らせが来ても、相続財産や相続税の計算は、複雑な部分も多く再計算の難易度が高いです。

被相続人は、相続が発生した際や、申告後のお知らせが来た際に相続人となる家族などを困らせてしまうことがないよう、生前に準備できることがいくつかあります。

遺言書を作成する

まず、1つ目は「遺言書を作成する」ということです。

相続は遺言書があれば、遺言書に基づき財産が被相続人に引き継がれます。

相続財産を分ける時に揉めごとが起きにくいことは勿論ですが、相続税の申告後にお知らせが届いた場合などにも遺言書があれば、誰にどのような財産が配分されたのか、確認することができます。

お知らせが来た際に「相続税の計算に間違いがなかったかどうか」「自分が受け継いだ遺産には相続税はかからないのではないか」などと不安に感じた場合の確認用としても遺言書があると便利です。

生前贈与をうまく利用する

お知らせが届く前、被相続人が生前に課税対象となる相続財産を贈与できるものは贈与しておく、生前贈与という方法があります。

ただ、この生前贈与も贈与税という税金がかかってくるので、完全に節税対策となるとはいえませんが、お知らせが届いた相続人をあたふたさせるようなことは防げるでしょう。

しかし、「相続時精算課税制度」を使用すると贈与税は発生しませんが、相続時に相続税の対象となる「合計資産」とみなされることになるため、お知らせが届いた際にも注意が必要です。

暦年課税」という贈与方法であれば、1年に110万円以内であれば、贈与税がかかりません。

被相続人は、生前のうちに少しずつ贈与しておくと、お知らせが届いた時のことを配慮しなくてもよく、相続税の節税にもなるでしょう。

しかし「暦年課税」であっても税務署に贈与を認められない可能性があります。

贈与をする側と受ける側で都度、「贈与契約書」というものを作成しておくと認められやすくなりますので、その作成も忘れずに行うとよいでしょう。

現金などを手渡しで贈与した場合など、贈与を受けたものであると説明しても、贈与契約書がないと贈与と認められない場合もあります。

例えば、夫婦のうち、夫が亡くなった場合、妻である専業主婦が生活費として夫から渡されていたお金の余剰金をへそくりにしていると、そのへそくりも2人の共同資産としてみなされるので相続税の対象となってしまいます。

へそくりを贈与とするかどうかは小さな話かもしれませんが、相続税対策としても、お知らせが来た時に奥さんが困らないためにも、贈与契約書を作成して贈与しておくとよいでしょう。

さらに、生前贈与で注意しておくべきポイントとしては、亡くなる3年前に贈与したものについては相続税の資産の対象となってしまうことです。

明らかに相続税対策として行われる贈与を防ぐための制度となります。

贈与を受けた際に払った贈与税については、相続税から差し引かれるので二重で払うことはありませんが、人は誰でも、自分がいつ亡くなるかは分かりません。

お知らせを受けた被相続人が、直近3年間に贈与された財産を相続資産の対象として計算し忘れた、ということにもなり得ますので、お知らせが来た際に混乱しないために、あらかじめこの制度についても話しておくと良いでしょう。

金融機関の口座解約

以前、使用していたけれど最近使用していない口座や、お付き合いで作った口座などがあれば、解約して整理しておきましょう。

少額しか口座に残っていなくても、その財産も相続税の対象資産に加算されます

お知らせが来て、よく調べてみたら被相続人が把握していなかった口座が発見されるということもよくあります。

被相続人は相続税の申告のために、相続人の全ての口座に対して残高証明書を発行しなければなりません。

これには、数百円の手数料がかかり、さらに、そのお金を引き出すことになった場合、様々な書類が必要でめんどうなことになります。

また、税務署は、1つ相続申請していない口座を見つけたら、ほかにもあるのではないかと疑うでしょうから、税務調査が入る可能性も高くなるでしょう。

お知らせが来て、上記の手続きのために銀行へ行くことがありますが、遠い銀行の場合は交通費もばかになりません。

こうした理由から、相続税の申請のために、余計な費用がかかってしまってはもったいないので、生前に口座解約をして整理しておくことをおすすめします。

また、ネット銀行などは、通帳がないことも多いので、分かるようにしておくか、解約して別の口座に財産を一緒にしておくことも1つの手でしょう。

お知らせが来ても、相続人が分からないだろうと予測できる資産については整理しておくと良いでしょう。

書き方などが分からなければご相談ください

相続税を正しく申告しようとしても、書類の書き方などがわからなくて、ミスをするケースがあります。

間違った数字を記入して重加算税を課せられそうになることもあるため、心配な方は税理士に相談した方がいいでしょう。

また、書類の書き方がわかったとしても、その前に行う遺産の調査においてミスがあれば、結果として相続税額を間違えてしまうことになります。

そのため、相続が発生した場合には、税理士に相談した方がいいでしょう。

まずは、遺産をしっかり調査して、そのうえで遺産分割協議を行うことが大切です。

遺産分割協議でトラブルが起きた場合には弁護士に相談するなど、それぞれ適した専門家に相談しましょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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