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【相続税 】
相続税について説明しています。相続税は相続する人物、相続の対象、評価額などによって納税の有無や納税額が異なります。また相続税を抑えるための対策もあります。相続税についての知識を得て、しっかり相続税対策を行いましょう。

2019年1月27日 日曜日

税金を抑えるために、相続税をできるだけ控除する

親族が亡くなった際には、自分が相続人になっているか確認が必要です。

自分が相続人になっている場合には、相続手続きなどだけではなく控除についても確認しておくことが大切です

控除するかどうかで、相続税が大きく変わります。

相続額によっては相続税が多額になるため、どのような場合に控除できるのか、控除の種類、税金を抑えるためのポイントなどについて確認しておくことが大切です。

ここでは、相続税の控除の種類や活用のポイントについて詳しく解説します。

相続の基本知識

ここであらためて、相続と相続税、控除に関する基本的な知識をおさえておきましょう。

通常、遺書などによる指定がない場合は民法に従って親族の中から法定相続人が決められ、それぞれの順位に応じた割合で財産が分配されます。

法定相続人の人数に従って基礎控除額が決定され、ここで遺産総額のうち控除額を上回った分について相続税が課税されることになるため、相続税申告が必要になります。

基礎控除以外の控除制度については後述しますが、基礎控除を上回った分の遺産が他の控除制度によって非課税となる場合があります。

その際に相続税申告が不要になるかどうかについては、適用した控除制度によって異なってきますので要注意です。

相続税とは

相続税とは、相続にかかる税金のことです。

亡くなった被相続人から遺産を相続する際には、相続税がかかります。

また、遺言によって資産を相続する場合にも相続税がかかるので注意しましょう。

相続する以上は、その形や経緯に関係なく、控除額以上の遺産に対してかかるものです。

相続で多くの資産を受け継げると思い、その先の運用まで考えていたところ、多額の相続税がかかることがわかり残念な気持ちになることは少なくありません。

また、相続のことを考えずに資産を使いこみ、税金を支払えなくなり金融トラブルに繋がることもあるのです。

相続税の税率は、金額によって異なりますが、最高は55%です。

相続する遺産に不動産がある場合には、評価額がつき、その相続税を現金で支払いが必要になります。

場合によっては、銀行から借り入れたり不動産を売却して納税に充てたりすることになるでしょう。

不動産の評価額が高く、現金の相続がほとんどない場合には、相続税の納税ができなくなる可能性があるため、まずは相続税を計算することが大切です。

そのうえで、相続税の控除について調べ、適用できる制度を全て適用させるようにしましょう。

少しでも多くの現金を手元に残せるように行動することをおすすめします。

相続対象となるもの

相続の対象となるのは、いわゆる「プラスの財産」である現金、土地や建物、各種権利などだけでなく、「マイナスの財産」つまり負債や債務返済の義務も含まれます。

これら全ての遺産の内容と種類をきちんと把握することが、相続税と控除額を計算する上で重要なポイントとなってきます。

これは、相続税の計算において、プラスの財産であっても法律上相続税の対象とならないものがあり、またマイナスの財産のうち「債務控除」の対象となるものは控除することができるなど、遺産の内容によって相続税額や控除額に差が出てくるためです。

このように相続対象の財産を全て明らかにすることは、後に課せられることになる相続税や受けられる控除がどれほどになるか、結論として相続人としての権利を得るべきか放棄すべきか、を考える上で大変重要になってきます。

相続の流れ

まずは、本サイト内「相続の流れ」から必要な手続きを確認してみましょう。

https://souzoku.works/flowofinheritance/

遺言に従って相続を進めるのか、遺言がない場合に民法の規定に従って遺産の分配を行うのか、また、遺産分割協議を行うことによって遺言や法定相続分に依らない遺産分割を行うのか、この選択によっても適用できる控除制度や控除額が大きく変わります。

相続税の申告期限を念頭に置いた上で計画的に進めましょう。

相続税の控除について

相続税は基礎控除額を下回れば申告も納税も必要ありません。

相続税の基礎控除額は、次のとおりです。

・法定相続人1人・・・3,600万円

・法定相続人2人・・・4,200万円

・法定相続人3人・・・4,800万円

・法定相続人4人・・・5,400万円

・法定相続人5人・・・6,000万円

基礎控除額は、3,000万円+相続人の数×600万円で算出できます。たとえば、法定相続人が10人いる場合は、3,000万円+10人×600万円=9,000万円が基礎控除額となります。

自分を合わせて相続人が3人いる場合、相続する資産が4,800万円以下の場合は相続税を納税する必要はありません。

相続する資産は、現金だけではなく不動産や自動車なども含みます。

基礎控除は、全ての相続人が受けることができる権利です。

法定相続人が多いと、それだけ遺産分割に関してトラブルが起こるリスクが高まりますが、法定相続人が多ければ多いほどに基礎控除額が高くなるのは、相続人にとってはメリットが大きいと言えるでしょう。

なお、相続を放棄した人物がいる場合にも、法定相続人の人数からは外しません。

5人中2人が相続を放棄しても、法定相続人は5人として、基礎控除額は6,000万円となります。

遺産分割協議中に何らかの理由によって相続を放棄する人物が現れても、基礎控除額が変わることはありません。

相続税の控除の種類

相続税は、基礎控除の他にさまざまな方法で控除できます。

できるだけ多くの控除を利用することで、手元に多くの資産を残せるのです。

基礎控除額を超えるほどの相続資産があるということは、控除を利用するかどうかで数千万円単位で変わる可能性があるということです。

どのような控除があるのか確認していきましょう。

  • 未成年者控除

未成年者控除は、満20歳未満の相続人の場合において、10万円×満20歳になるまでの年数分の金額を控除できる制度です。

例えば、16歳の相続人の場合は、満20歳までに4年あるので、10万円×4年=40万円が未成年者控除額となります。

1年ごとに10万円の控除額が増えるため、10歳であれば100万円も控除されます。

  • 障害者控除

日本国内に住所がある相続人が障害者の場合は、10万円×満85歳になるまでの年数が控除されます。

例えば、50歳の相続人の場合には、満85歳-50歳=35年分に10万円をかけた350万円が障害者控除額となります。

なお、特に重度の障害を持つ場合には、20万円×満85歳になるまでの年数で算出された金額が控除されます。

50歳の相続人の場合は、20万円×35年=700万円が控除されます。

もし、15歳の未成年で重度の障害者であれば、10万円×5年=50万円が未成年者控除額、20万円×70年=1,400万円が障害者控除額で、合計1,450万円が控除されます。

  • 贈与税額控除

相続を始めたタイミングから3年前までに贈与財産を受けた場合、贈与された資産に課税価格に加算されると、贈与財産にかかる贈与税の控除を受けられます。

  • 配偶者の税額軽減

配偶者が財産を相続した場合、法定相続分あるいは1億6,000万円分までの税額が軽減されます。

  • 相次相続控除

10年のうちに2回以上相続した場合には、税額が軽減されます。

例えば、両親が亡くなって相続した後に、兄弟が亡くなり相続した場合などがあげられます。

短期間のうちに複数の相続があると、それだけ税負担が大きくなるため、納税が困難になる可能性があります。

相次相続控除は、こういったケースの救済処置と言えます。

  • 外国税額控除

外国から財産を相続した場合には、外国の相続税が課税されます。

この場合に受けられる控除が外国税額控除です。

  • 相続時精算課税制度贈与税額の控除

相続時精算課税制度を適用する場合、相続税額から相続時精算課税制度における贈与税額の控除を受けられます。

税金を抑えるためのポイント

相続税を少しでも抑えるために、利用できる控除は全て利用しましょう。

自動で控除されるのではなく、手続きが必要となります。

手続きが漏れると控除を受けられない可能性があるため、税理士など専門家に手続きの代行を依頼したり、相続に関して相談したりすることをおすすめします。

相続税を抑える方法には、控除を利用する他にもいくつかの方法があります。

不動産を利用する

不動産を利用した相続税を抑える方法には、複数の方法があります。

賃貸マンションやアパートなど、第三者に貸す土地や建物は、相続時の評価額が大きく下がるため、高い節税効果が見込めます。

たとえば、1億円の現金を相続する予定がある場合、その1億円で賃貸マンション・アパートを建築すると、評価額は4,200万円となる場合があります。

その差は5,800万円と高額です。

ワンルームマンションは評価額が3分の1程度にまで下がるため、さらに大きな節税効果が見込めます。

また、1部屋単位で所有権を持てるため、複数の相続人がいる場合にもスムーズな遺産分割が行えます。

遺産分割においてトラブルが起こりにくいことは大きなメリットと言えるでしょう。

500平方メートル以上の広大な土地を相続する場合には、広大地評価によって相続税を大幅に減額できる可能性があります。

一定の要件を満たす必要があり、適用できれば約40~65%もの減額ができるのです。

相続する資産を不動産に変えることで、相続税を減額できるうえに不動産収入も得られるようになります。

しかし、賃貸経営は、借主による破損や契約破棄などさまざまなリスクがあるため、十分に考慮したうえで決めることをおすすめします。

実際に不動産を購入したものの、空室が目立つことで不動産収入をなかなか得られないケースもあります。

大規模修繕工事も定期的に行うことになるため、相続税は抑えられても、相続後の不動産の維持に苦労することになる場合があるのです。

部屋単位で所有権を持って相続する場合には、そもそも不動産に変えるかどうかで話し合うことになります。

このような手間がかかることも覚えておきましょう。

贈与を活用する

生前贈与を活用することで、所得税を抑えられます。

生前贈与とは、被相続人が亡くなる前に資産を贈与する方法です。

手軽に行えて、相続税を大きく抑えられます。生前贈与には、次のような方法があります。

  • 年110万円ずつ贈与する

贈与には、贈与税がかかります。

そのため、相続しても贈与してもいずれにしろ税金がかかるのです。

ただし、贈与には相続と同じく基礎控除が設けられています。

また、相続とは違い、何度でも行えるのです。

年間110万円までは基礎控除によって贈与税額が0円になるので、毎年110万円ずつ贈与していくことで、10年で1,100万円、20年で2,200万円、30年で3,300万円を納税なく贈与できるのです。

ただし、あらかじめまとまった資産を贈与するつもりで、毎年決まった額を10年、20年と贈与する場合は、「定期贈与」とみなされ、贈与税が課せられる可能性があります

このあたりのことも税理士に相談して決めることをおすすめします。

基礎控除によって納税しなくてもいい場合でも、毎年贈与契約書を作成して税務署に提出する必要があります。

これは、贈与の事実を証明するための手続きです。

また、子供の口座に贈与する現金を振り込み、通帳を実質のところ親が管理している場合がありますが、これは認められません。

子供に通帳や印鑑、キャッシュカードなど全て渡して自由に使わせる必要があります。

贈与の成立が税務署によって否定される恐れもあるため注意が必要です。

子供に多額の現金を与えることで、無駄遣いをしないか、良からぬことに使わないか心配になる方もいます。

子供の性格や行動などを見て、よく考えた方がいいでしょう。

また、相続開始前3年以内の贈与は、相続税の財産に加算されます。

人が亡くなるのは突然ですが、高齢になればなるほどリスクが上がります。

そのため、できるだけ早い段階から毎年贈与しておくことが大切です。

なお、資産が2億円以上などの資産家から相続する場合は、年間500万円贈与してもらったとしても節税効果があります。

このあたりの細かい計算については、税理士に相談した方がいいでしょう。

最も得になる方法で財産を引き継ぐことをおすすめします。

  • 教育資金贈与を利用する

教育資金における一括贈与特例により、子や孫に1,500万円までの教育費を一括で贈与できます。

金融機関の教育資金贈与信託を活用します。

これは、教育資金として贈与する場合に限り、金融機関のサービスを利用することで、一括1,500万円まで非課税で贈与できます

目的は教育資金にしか使用できませんが、教育には多額の費用がかかるため、十分に活用できるでしょう。

毎年110万円ずつ贈与してもいいのですが、私立中学や高校、大学などまとまった費用がかかる場合には、一括で贈与してもらった方が便利です。

生命保険を活用する

生命保険契約によって相続後に支払われる保険金は、500万円×法定相続人の数で算出される金額だけ相続税がかかりません。

法定相続人が3人の場合は、1,500万円に相続税がかからないのです。

非課税枠を満たすような保険に加入しておきましょう。

リスクが低いため、手軽に利用できる節税方法と言えるでしょう。

また、生前贈与と組み合わせる方法もあります。

生前贈与したお金で保険をかけることで、さらに節税できます。

契約者が子となるとき、確定申告の際に生命保険料控除は利用できないので注意しましょう

相続で困ったら専門家に相談

このように相続税の控除を活用して節税する方法は様々ありますが、実際に細かい計算や手続きをする上では専門家のサポートが必須です。

相続に際しては主に「税理士」「弁護士」「司法書士」に相談することが多くなりますが、それぞれの専門家に「できること、できないこと」があります。

相続の内容や状況に見合わない選択をしてしまうと、複数の専門家への依頼が必要になり余計な費用と手間がかかったり、最適な控除を受けられない、専門外のことについては自分で対応しなければならずミスやトラブルの元になったりするなどの問題が起こりえます。

最適な専門家を選ぶために、それぞれの特性をしっかり把握しておきましょう。

税理士

税理士はその名の通り「税金に関すること」の専門家です。

他の専門家にできないことという点では、申告者に代わって「相続税申告が行える」、「税務調査を受けた場合に立ち会い、対応してもらえる」ことが最も大きな違いです(税理士資格のある弁護士であれば可能な場合もあります)。

また、相続税に関して精通したスペシャリストですので、最適な節税対策や控除を受けられるよう考慮してもらえることが税理士に依頼する最大のメリットといえるでしょう。

弁護士

弁護士は「法律に関すること」の専門家です。

司法試験に合格して弁護士資格を取得すると、弁理士、税理士、行政書士などの他の資格の登録も可能となるため、あらゆる法律問題に対応できるという非常に汎用性の高い職種です。

そのため、様々な問題が複雑に絡んでくる相続において、起こりうる法的トラブルを想定してトータル的な対応が可能なのが弁護士であるといえます。

また、遺産のなかに借金などの負債が含まれていたというケースでは、債務控除の対象となる場合など有利に進められる面もありますが、やはり相続が複雑になりトラブルにもなりがちです。

相続に際して法的トラブルが発生している(または発生する可能性がある)、遺産に借金などの負債が含まれている、その他「とりあえずどうしたらいいかわからない」など判断に迷う場合は弁護士にまず相談しておくことをお勧めします。

司法書士

司法書士は「登記に関すること」の専門家で、主に不動産登記などになります。

基本的に、本来弁護士が担っている法律分野の問題のなかでも限定的な業務のみ対応できる資格となっており、弁護士の補完的役割として設立された資格となっています。

相続関連で可能な業務としては「遺言書の作成・執行」「遺産分割協議書の作成」「相続放棄」などがありますが、これは端的にいうと書類の作成や手続きが可能ということで、遺産分割の調停などについては権限を超えてしまうため行うことができません。

したがって、遺産に不動産が含まれており、相続トラブルが発生しておらず、相続税申告も不要な場合は司法書士に依頼しましょう。

司法書士に遺言執行者になってもらうことによって、遺言の執行から相続登記まで行ってもらえるのもメリットといえます。

権限が限られてはいますが、複雑な不動産関連の手続きを一任できる点において、相続をスムーズにすすめるための大きな力になってくれるでしょう。

まとめ

資産が多額になれば、相続税もそれだけ多額になります。

基礎控除額を差し引いても相続する資産が多く残る場合は、相続税を少しでも抑えられるようにさまざまな控除を利用しましょう。

複数の控除を適用することで、相続税を大きく抑えることができます

また、不動産や生命保険を活用した方法や、生前贈与する方法などがあります。

生前贈与は、年間110万円の範囲であれば贈与税がかからないため、メリットが大きい方法です。

子供に資産管理を任せるというデメリットもあるため、よく考えて決めることが大切です。

どの方法が最も良いかは、税理士に相談して考えることをおすすめします。

過去の事例に基づいて、さまざまなアドバイスをしてもらえます。

少しでも多くの資産を相続するためにも、節税や控除を利用しましょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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