2019年2月1日 金曜日
相続の方法を徹底解説!
相続は、誰にでも発生する可能性があります。
親から子供、夫から妻、妻から夫など、最も近い家族・親族へプラスの資産と債務の両方が引き継がれます。
スムーズに手続きするためにも、相続の種類や相続税、手続きの期限、必要書類、一連の流れなどについて知っておくことが大切です。
ここでは、相続の方法を徹底解説していきます。
目次
相続とは
相続とは、被相続人の遺産を妻や子供など相続権がある人物へ引き継ぐことです。
相続では、現金や預貯金、不動産、車、株券といったプラスの資産だけではなく、借金、病院やクレジットカード会社などへの未払い金といったマイナスの資産も引き継ぐことになります。
ただし、相続にもいくつかの種類があり、マイナスの資産を引き継がなくてすむケースもあります。
民法では、法定相続人が定められています。
法定相続人は、被相続人と血縁関係がある人物と配偶者です。
相続人の優先順位は、配偶者と子供、孫、次に父母や祖父母、続いて、兄弟姉妹です。
配偶者がいて子供がいない場合には、配偶者だけが相続人となります。
子供がいる場合には、配偶者と子供の両方が相続人です。
配偶者と子供が亡くなっており、孫がいる場合には、孫が法定相続人となります。
相続の種類
相続には、単純承認と限定承認、相続放棄の3種類があります。
- 単純承認
単純承認とは、プラスの資産とマイナスの資産を何もかも相続することを指します。
相続人が1人の場合には、自分に名義変更するだけで相続が完了しますが、複数の相続人がいる場合は、遺産分割協議によって遺産を分配しなければなりません。
- 限定承認
プラスの資産とマイナスの資産の両方があり、全体を見たときにプラスとマイナスのどちらになるのか不明な場合、限定承認を検討しましょう。
限定承認では、被相続人が持つプラスの資産でマイナスの資産を弁済し、残ったプラスの資産だけ引き継ぎます。
限定承認のためには、裁判所に申し立てて承認を得なければなりません。
なお、被相続人が死亡してから3ヶ月以内が期限です。
限定承認のためには、プラスとマイナスの資産を細かく調べる必要があるため、かなりの時間がかかります。
そのため、できるだけ早く動き出すことが大切です。
- 相続放棄
相続放棄は、プラスの資産よりも明らかにマイナスの資産の方が多い場合に相続する権利を放棄することです。
何も相続しないため、自分の資産に変動がなく、相続税の支払いも必要ありません。
相続放棄したい場合には、被相続人が死亡してから3ヶ月に以内に裁判所への申し立て・承認が必要です。
相続には相続税が掛かる
遺産を相続した場合には、相続税が発生する可能性があります。
相続税は、相続した遺産に対して課税されます。相続税は、次の3つのケースで発生します。
- 相続
遺産を相続する人物を生前に遺言書・契約書で決めていないケース
- 遺贈
生前に遺言書で遺産を相続する人物を決めているケース
- 死因贈与
生前に契約書で遺産を相続する人物を決めているケース
どのような形でも、遺産を引き継ぐ以上は相続税が発生する可能性があります。
相続税は、遺産を相続した人物が国に納めます。
相続税には基礎控除があり、基礎控除額よりも遺産額が低い場合には、相続税を納める必要はありません。
基礎控除額は、3,000万円+(法定相続人の数×600万円)で算出します。
法定相続人の数が3人の場合には、3,000万円+(3×600万円)=4,800万円が基礎控除額となります。
遺産が4,800万円以下の場合は、相続税が発生しません。
相続税の計算には、プラスの資産からマイナスの資産を差し引き、みなし相続財産を足した遺産額が用いられます。
みなし相続財産は、死亡保険金・死亡退職金・3年以内の贈与財産と相続時精算課税財産です。
例えば、プラスの資産が1億円、マイナスの資産が3,000万円、みなし相続財産が5,000万円のばあいは、1億円-3,000万円+5,000万円=1億2,000万円が遺産額となります。
そして、法定相続人で遺産を分配した額にそれぞれ税率をかけて相続税額を算出します。
なお、配偶者が相続する財産は、評価額が1億6,000万円以下であれば相続税がかかりません。
手続きの期限はどのくらい?
相続関係の手続きの期限は、手続きの種類によって異なります。
被相続人が死亡した日から数えて、次のような期限となっています。
- 7日以内の期限
被相続人が死亡して相続が発生することを証明するために、死亡届を提出する必要があります。
死亡届は、被相続人が死亡してから7日以内と非常に短い期限となっているため、注意が必要です。
- 3ヶ月以内の期限
3ヶ月以内に行う手続きや確認事項が非常に多いため、法定相続人同士で協力することが大切です。
葬儀、金融機関への連絡、生命保険金の受け取り、健康保険、遺族年金の手続きを行いましょう。
そして、遺言書があるかどうか調べ、遺言書を家庭裁判所で検認してもらいます。
続いて、誰が相続人になるのか、相続財産はどれだけあるのかを調べます。
複数の法定相続人がいる場合には、遺産分割協議を行い、状況に応じて限定承認・相続放棄します。
- 4ヶ月以内の期限
被相続人が確定申告をすべき人物だった場合には、4ヶ月以内に所得税の準確定申告が必要です。
- 10ヶ月以内の期限
遺産分割協議書を作成し、各種相続の手続きを進めていく必要があります。
そして、相続税の申告と納付を行います。
遺産分割協議書には、法定相続人全員が協議の内容に同意したことを証明するために、全員の署名と捺印が必要です。
誰か1人でも署名と捺印をしない場合は、解決するまで話し合いをします。
場合によっては調停が必要となり、それでもまとまらない場合は審判を行います。
話し合いには期限を設けておき、話がまとまらない場合は早めに調停を行った方がいいでしょう。
- 1年以内の期限
遺留分減殺請求とは、相続の権利があるにもかかわらず最低相続分が相続されなかった場合に行う請求です。
最低相続分を分配するよう、他の法定相続人に請求します。
最低相続分が分配されないことを知った日から1年以内の請求が必要です。
申告に必要な書類は?
相続に必要な書類は、遺言の有無、不動産の有無などによって異なります。
次のような書類の提出が必要です。
被相続人の住所と身分を証明する書類
遺産相続には、被相続人の住所と身分の証明が必要です。
- 戸籍謄本
被相続人が死亡したときの戸籍謄本が必要です。
死亡した際に定められていた本籍地を管轄する役所で取得できます。
- 住民票の除票か戸籍の附票
死亡した際の住所を証明するために、住民票の除票か戸籍の附票が必要です。
死亡すると住民票はなくなりますが、除票を取得できます。
ただし、死亡から5年で発行できなくなる場合があるため注意が必要です。
死亡した際の住所を管轄する役所で取得できますが、その際には本籍の記載があるものを請求しましょう。
また、戸籍の附票でも住所を証明できます。
戸籍の附票の場合は、死亡したときの住所ではなく本籍地の役所に請求が必要です。
遺言がある場合の必要書類
遺言がある場合は、遺言に従って相続することになります。
遺言には、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言があります。
公正証書遺言の場合は、特に手続きすることはありません。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、被相続人が死亡してから家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
また、遺言執行者について遺言に記載がない場合において、家庭裁判所が遺言執行者を選任している場合には、選任審判所の謄本が必要となります。
遺言がない場合の必要書類
遺言がない場合には、法定相続人全員で遺産分割協議を行うため、それに伴い複数の書類が必要になります。
- 相続人がわかる戸籍謄本
遺産分割協議を行うためには、誰が法定相続人なのかを証明する必要があります。
そのため、被相続人が生まれてから現在までの戸籍謄本を取得し、法定相続人を確認することになります。
また、法定相続人が生きていることを証明するために、被相続人の死亡日以降の戸籍謄本も必要です。
- 遺産分割協議書
遺産分割協議書には、遺産分割協議によって定められた内容を記載します。
そして、法定相続人全員の捺印と署名が必要です。
- 相続人全員分の印鑑証明書
遺産分割協議書には実印を押すため、印鑑証明書が必要です。
実印をあらかじめ印鑑登録しておく必要があるため、早めに手続きしましょう。
不動産がある場合の必要書類
不動産がある場合には、法務局で名義変更が必要です。
その際には、次のような書類の提出を求められます。
- 登記簿謄本
法務局への提出は不要ですが、相続する不動産の特定に必要です。
法務局で取得できます。
- 固定資産評価証明書
不動産の名義変更の際には、登録免許税がかかります。
固定資産評価証明書は、登録免許税の計算に必要です。
相続人であれば、不動産があるところを管轄する役所で取得できます。
- 不動産を相続する人の住民票
不動産を相続する際には、住民票を必要書類に添付する必要があります。
現住所の役所で取得できます。
- 相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議を行った結果、不動産を相続することになった場合や、遺言によって法定相続人以外の人物が不動産を取得することになった場合には、法定相続人全員が了承したことを証明するために、全員分の印鑑証明書が必要です。
印鑑証明書は、発行から3ヶ月で効力を失うため注意しましょう。
手続き完了までの流れ
手続き開始から完了までは、次のような流れで行います。
- 死亡届の提出
死亡届は、死亡診断書と一体になっており、死亡届に必要事項を記入して提出します。
- 葬儀
死亡届の提出後に火葬許可証が発行されるので、葬儀社に申し込みましょう。
- 金融機関への連絡
他の相続人が勝手に預貯金を引き出さないように、金融機関に連絡しましょう。
- 生命保険金の受け取り
保険金受取人は、生命保険会社に受取申請をします。
申請方法は生命保険会社で異なるため事前に確認しておきましょう。
- 健康保険と遺族年金の手続き
埋葬料や遺族年金が支給されることがあります。
健康保険組合や役所、年金事務所などに連絡しましょう。
- 遺言書を確認する
49日の法要後に遺言を確認しましょう。
遺言書は、金庫や貸金庫、タンス、引き出しなどに保管されていることがあります。
公正証書遺言の場合は公証役場で申請して検索しましょう。
- 相続人を調査する
戸籍謄本などから相続人を調査しましょう。
前妻との子供、認知している子供などは、戸籍謄本で調査できます。
- 相続財産を調査する
郵便物、ネット取引、残高証明書などから相続財産を調査しましょう。
- 遺産分割協議書の作成
遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しましょう。
場合によっては、調停、審判を行うことになります。
- 遺産分割協議書の作成
基礎控除などの計算を行い、算出した相続額に応じて相続税の申告と納付が必要です。
相続税を期限までに納付しないと、無申告課税が課せられます。
また、少額に見積もって申告すると、過少申告加算税がかかります。
さらに、意図的に財産を隠すなど悪質なケースでは、重加算税といって35~40%もの税が課せられるため注意が必要です。
手続きに手間取ったら相談しましょう
相続の手続きには、非常に手間と労力がかかります。
葬式の準備などに追われると、細かい手続きを忘れてしまうこともあるでしょう。
手続きには期限が設けられているため、手続きが漏れると相続に支障をきたす恐れがあります。
手一杯の場合には、税理士などに相談しましょう。
相続税の計算など様々なサポートを受けられるため、相続での失敗を防ぐことができます。
また、複数の法定相続人がいて、遺書がなかったために遺産分割協議を行うことになった場合、話がまとまらないケースがあります。
この場合は、弁護士に代理を依頼するといいでしょう。
法律知識やコミュニケーションのテクニックによって、話し合いをうまくまとめてくれることが期待できます。
また、調停や審判を行うことになっても、依頼主の強い味方になってくれるでしょう。
相続は、残された遺族に負担がかかる手続きであるため、専門家の力を借りることをおすすめします。