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【不動産の相続 】
不動産の相続について説明しています。マンション、土地、貸家建付地、山林など不動産の種類によって、評価額の計算方法が異なります。また相続税の求め方も異なりますので、不動産を相続する場合は注意しましょう。

2019年6月10日 月曜日

空き家を相続した場合の相続税は?

人口減少が進む中、空き家の増加が問題となっています。

空き家はこの20年間で448万戸から820万戸へと1.8倍に増加しました。空き家は相続の際に発生することが多いです。

近年、空き家の増加を抑えるためにさまざまな施策が始まりましたが、その中に相続時に空き家を出さないことで、相続税が軽減される施策があります

相続税を抑えるための空き家対策について解説します。

相続税の計算方法

相続税の計算方法を解説します。

空き家を相続した場合の相続税も、この計算方法で算出されます。相続税の計算方法を知ることは、空き家の相続税を抑える方法の理解に役立ちます。

相続の仕組み

相続とは人が亡くなった際に、その人の財産を特定の人が引き継ぐことです。亡くなった人を「被相続人」、財産を引き継ぐ人を「相続人」と呼びます。

亡くなった人の財産を「遺産」と呼びます。

遺産は現金や預貯金、有価商品、動産、不動産、債務、賃借権などの権利などが含まれます。

【相続と遺贈】

亡くなった人の財産を人に引き継ぐ方法には2つあります。

「相続」と「遺贈」です。

亡くなった人の配偶者や子供など、相続人が引き継ぐことが相続です。

亡くなった人の生前作成した遺言書で指定された人が引き継ぐことが遺贈です。遺言があったとしても、法定相続人は一定の財産を相続する権利が保証されています。これが「遺留分」です。相続と遺贈により遺産を分割して相続する仕組みは法律で定められています。

【相続放棄】

亡くなった人が残した財産よりも債務が大きい場合など、相続を放棄することができます。亡くなった人が残した家屋に価値がないときに、相続を放棄することも可能です。しかし、相続放棄を選択しても、放棄した財産を管理する人が決まるまでは空き家を管理する義務はなくなりません

相続税の計算方法の概要

相続税の計算方法はやや複雑です。

相続税を計算する順序を説明します。

最初に「正味の遺産額」が計算されます。「正味の遺産額」から「基礎控除額」を引いて「課税遺産総額」が算出されます。「課税遺産総額」を遺言なしで法定通り相続したと想定して「相続税の総額」が計算されます。「相続税の総額」に実際に相続する比率をかけて各相続人の相続税が計算されます。

遺贈がある場合は相続税が割増されます

相続税の計算方法

相続税の計算方法を説明します。生前贈与の戻しや細かな控除については割愛しましたのでご注意ください。

【正味の遺産額の計算方法】

正味遺産額とはプラスの遺産額から債務などマイナスの遺産額を差し引いた金額です。

不動産は取得時の金額をそのまま計上しないため、「相続税評価額」を算出して計上します。

「相続税評価額」を大幅に減額する「小規模宅地の課税の特例」があります。この特例をうまく使うことで空き家を相続した場合の相続税を減額できます。

 

【課税遺産総額の計算方法】

正味の遺産額から非課税財産額と基礎控除額を差し引いたものが課税遺産総額です。

課税遺産総額がマイナスであれば相続税はかかりません

基礎控除額は以下の式で計算されます。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数

 

【相続税の総額の計算方法】

相続税の総額は課税遺産総額を法定相続分で分割したと想定して、それぞれの相続分に相続税率を乗じたあと控除額を差し引き、再度集計することで計算されます。

計算するときは早見表が便利です。

 

【各相続人が支払うべき相続税の計算方法】

法廷相続人各自が支払うべき相続税は相続税の総額に自分が相続する比率を乗じて計算されます。法定相続人以外が支払うべき相続税は法定相続人の場合の2割増しです。

空き家の相続税評価額の求め方

相続税を確定するためには、最初に課税すべき遺産の総額を算出しなければなりません。時間とともに価値が変動する不動産については法律に定められた方法で相続税評価額が計算されます。

相続税評価額とは

相続税評価額とは、土地や建物、株式といった財産にかかる相続税を割り出すために決める評価額です。土地と建物には、それぞれ違った評価額の算出方法があり、次のように計算します。

土地の評価

土地の評価には2つの方法があり、それぞれ、

  • 路線価方式
  • 倍率方式

と呼ばれます。

路線価方式は主に都市部で採用されるやり方で、路線価図という国税局が発表する資料に基づき、敷地面積を考慮して計算されます。路線価は全ての地域に割り当てられているわけではなく、場所によっては倍率方式が取られます

倍率方式は、その土地の固定資産税に税務署ごとに決められている、倍率を乗じることによって算出されます。

建物の評価

建物の相続税評価額は土地に比べて単純です。

固定資産税の評価額がそのまま相続税の評価額となります。ただし、賃貸の物件の場合は当然計算方法が異なるので注意が必要です

空き家の相続税評価額の求め方

そもそも、空き家に相続税はかかるのでしょうか?結論から言えば、かかります。

空き家は通常通り、相続税評価額に基づいて課税されます。しかも、故人の自宅を相続する場合に適用できる「小規模宅地等の特例」を適用することができません。

つまり、誰かが住んでいる家を相続するのに比べて相続税が高くなってしまうということです。

生前の対策で空き家の相続税を抑えることができる

「小規模宅地等の特例」は適用できないのですが、それでも空き家の相続税はある程度低く抑える方法があります。

小規模宅地等の特例とは

空き家には適用できませんが、そもそも「小規模宅地等の特例」とはどのような制度なのでしょうか。

小規模宅地等の特例とは、被相続人と一緒に住んでいた土地を相続した場合、相続した土地や宅地に対して、330㎡までは課税を減額するという決まりです

小規模宅地等の特例等は、土地にのみ適用されるため、建物には控除がありません。

 

相続する土地がこの特例が使えるかどうかというのは、かなり専門的な知識を必要とするため、税理士などに相談することをおすすめします。

空き家を賃貸に出す

空き家を賃貸に出すことによって、「小規模宅地等の特例」を適用できる場合があります。しかし、相続する3年以上前から賃貸に出す必要があります

 

空き家には小規模宅地等の特例を適用することは出来ませんが、もしも故人が持っていた賃貸物件を相続した場合、この特例が適用できることになっています。

しかし、相続開始まで3年以上にわたって賃貸物件として存在している必要があるため、無くなる直前に賃貸に出してもこの特例は適用されないことになります。

生前に売却する―3000万円の所得税特別控除の特例

生前に売却してしまうことによって、所得税特別控除の特例を受ける方法もあります。

所得税の「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」というものが存在し、住んでいる自宅を売却した場合は、3000万円まで所得税を控除することができます。空き家でも、もし住まなくなってから3年以内であれば、この特例を受けることができます。

生前対策をせずに空き家の相続がすでに発生してしまったら

では、生前の対策ができずに、相続が発生してしまった場合には、どのような対策ができるのでしょうか。

相続時点で空き家でも小規模宅地等の特例が適用される場合がある

小規模宅地等の特例は、空き家には基本的に適用できませんが、以下の条件に当てはまる場合、相続人が空き家に済むことによって小規模宅地等の特例を受ける事ができます

  • 故人が生前住んでいた家だった
  • 故人に同居する親族がいなかった
  • 相続人が相続の3年前までに所有する家に住んだことがない
  • 相続人が、相続した家を以前所有したことがない
  • 相続人が、相続した土地を相続税の申告期限までは保有する

空き家を売却する―3000万円の所得税特別控除の特例

空き家を譲渡することによって、3000万円の控除を受けることもできます。しかし、その場合は以下の条件があります。

  • 建物と土地の両方を相続した場合
  • 売却の価格が1億円以下である場合
  • 相続の開始から3年以内に売却する場合
  • マンションでなく、被相続人が一人で住んでいた場合 など

この他にもいくつか条件はあるため、専門家に相談してみることをおすすめします

専門家に相談する

今回の空き家の相続を含め、相続で迷った場合は正確な知識を得るために、専門家に頼ることも重要です。

ここでは、相続の際に相談すべき専門家や機関をご紹介します。

税理士

税理士は税務の専門家です。今回のテーマである空き家の相続税について、他の相続税の計算、手続き、節税対策など、さまざまな面で相続税の相談に応じてくれます

税理士は相談に応じてくれる他、実際に手続きを代行してくれたり、相続税の計算をしてくれたりします。また、遺産分割の方法についてもアドバイスをもらえます。

相談料はかかりますが、初めての相談であれば、無料で応じてくれることもあります。気になった税理士事務所があれば、一度問い合わせてみると良いでしょう。

司法書士

税理士が税務の専門家であるのに対し、司法書士は生活の中にある問題を解決してくれる専門家です

例えば会社や土地、建物の登記を代行してくれたり、多重債務の問題を抱えている方の相談に乗ったり、相続や遺言にまつわる業務をしてくれます。

万が一、遺産相続で親族間の争いが生じてしまった際には、遺産分割調停の申立などの手続きの代行や家庭裁判所に出す書類の作成なども行ってくれます。

税務署

税務署は国の税金を扱う省庁です。

税務署では、無料で正確な知識を得ることできる上、相談を電話でも窓口でも受けているため、相談がしやすいという特徴があります

電話で匿名での相談にも応じているため、プライバシー情報を開示せずに相談したいことがある方にもおすすめです。

一方、国の機関であるため、節税の対策のような付加的な質問や相談には応じてくれないため、注意が必要です

法テラス

法テラスの正式名称は、日本司法支援センターです。

法テラスは、法的なトラブルや相談に応じてくれる、国が設立した機関です。税務署同様に公的な機関であるため、税に関わる相談は無料で受けることができます。法テラスにも電話相談口があるため、匿名でどこからでも相談できるのは便利なポイントです

また、自分で相続に関わる法律の勉強をしている中で、わからない言葉があったり、仕組みがわかりづらい手続き方法があったりした場合にも、相談することができます。

法テラスの特徴は、相談の結果、弁護士や司法書士へ仕事を依頼する際にかかるお金を立て替えてくれる制度があることです。金銭的に弱い立場の方でも、この制度を利用することで、専門家の知恵を借りることできます。

弁護士

弁護士が登場するのは、相続する人間の間でトラブルが起き、意見の食い違いが生じたときです。

弁護士の仕事は、話し合いをまとめて法的に正しい見解を教えることで、問題の落とし所を見つけることです。

相続はどんなに仲がよい親戚同士であっても、トラブルに発展することが多々あります。弁護士が間に入ることで、人間関係の崩壊を事前に防ぐことができます

まとめ

本稿では、空き家を相続した場合の相続税の計算方法や、相続税を節税するための方法をご紹介しました。

空き地は「小規模宅地等の特例」を適用できないがために、相続税が高くなってしまいます。一方で、被相続人の生前に対策をしておくことで、ある程度、相続税を抑えることもできます。

相続で悩んだり、困ったことが起きたりした場合には、迷わずに今回ご紹介した専門家の意見を仰ぐことをおすすめします

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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