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【相続放棄について 】
相続放棄について説明しています。相続放棄のメリットやデメリット、相続放棄が有効なケース、注意点や期限などについてまとめています。

2019年2月18日 月曜日

相続放棄をするための必要書類とは

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産の相続をすべて放棄することです。

相続放棄をするとプラス財産もマイナス財産もすべての財産の相続を放棄するため、被相続人の遺産はひとつも相続することができません。

相続放棄をするためには、必要書類が多く存在しており、相続放棄の手続きを行う申述人(相続人や法定代理人など)の立場によって、必要書類の種類が違うため、しっかりと事前に必要書類について確認をすることが重要となります。

では、相続放棄の必要書類について詳しく見ていきましょう。

相続放棄の必要書類

相続放棄の必要書類は数種類ありますが、まず1つ目に必要なのが「相続放棄申述書」です。

これは、どの申述人も必要事項を記載して提出する必要があります。

次に必要となる書類は、「準的な申立添付書類」と呼ばれるものです。

この準的な申立添付書類は、一部共通していますが、相続放棄をする人がどの立場にあるかによって、必要となる書類が異なるのが特徴です。

詳しくは、3章の「必要書類を準備する際の注意」をご参照ください。

また、標準的な申立添付書類をそろえることが難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することでそろえてもらうことができます。

また、専門家に依頼すると、被相続人の財産の調査なども行ってもらうことが可能なので、相続放棄の必要書類だけでなく、相続放棄における細かい手続きを自分で行う必要がありません。

相続放棄申述書

「相続放棄申述書」は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

相続放棄申述書を用意したら、必要事項を記入していきましょう。

まず、相続放棄申述書を提出する裁判所(被相続人の最後の住所地にある家庭裁判所)と相続放棄申述書を作成した年月日を記入します。

 

▼申述人の記名押印の項目

申述人の記名押印の項目に申述人の名前と押印をします。

もし、未成年者などの法定代理人が作成する場合は、相続放棄をする人の名前(ここでは仮に田中花子とします)と法定代理人の名前(山田太郎)を記入します。

記入例としては、「田中花子の法定代理人 山田太郎」となります。このとき、押印するのは、法定代理人のものになります。

 

▼添付書類の項目

添付書類の項目には、添付した書類が書かれた項目があるので添付する書類にチェックを入れ、用意した枚数を記入します。

 

▼申述人の項目

申述人の項目には、本籍(国籍)、住所、電話番号、氏名(フリガナ)、生年月日、職業、被相続人との関係(該当する箇所に○を付ける)を記入します。

住所は裁判所からの連絡でも使用するため、正確に記入するようにしましょう。また、電話番号は日中でも連絡がつくものを記入します。

 

▼法定代理人等の項目※申述人が20歳未満の場合のみ記入

法定代理人等の項目には、未成年者との関係(親や後見人など)に○を付けます。

その後、法定代理人の住所、電話番号、氏名(フリガナ)を記入します。

 

▼被相続人の項目

被相続人の項目には、本籍(国籍)、最後の住所、死亡当時の職業、氏名(フリガナ)、死亡した年月日を記入します。

 

▼申述書の趣旨

申述書の趣旨の項目には、あらかじめ、「相続の放棄をする。」と記載されているので、そこはそのままで問題ありません。

 

▼申述の理由の項目

申述の理由の項目には、相続の開始を知った日(年月日)を記入し、その日がどういった日であったか(被相続人死亡の当日や死亡の通知を受けた日など)について、該当するものがあれば○をつけ、該当するものがなければ、その他に○をつけて、詳細を記入します。

 

▼放棄の理由の項目

相続放棄の理由の項目について、該当するもの(被相続人から生前贈与を受けている、生活が安定しているなど)に○をつます。

該当するものがない場合は、その他に○をつけて、詳細を記入します。

 

▼相続財産の概略の項目

相続財産の概略の項目には、資産(農地や現金・預貯金など)と負債(借金などの具体的な金額)を記入します。

この項目には、正確な情報を書かなければならないので、きちんと被相続人の財産について調査をするようにしましょう。

自分で調査することが難しい場合は、専門家に調査を依頼することで解決できます。

 

これらをすべて記入し終えたら、必要な費用である収入印紙800円分を貼付します。

収入印紙は相続放棄申述書と書いてある下部の「(この欄に収入印紙800円分を貼ってください。)」と書かれている箇所に貼り付けます。

「(貼った印紙に押印しないでください。)」といった注意書きもされているので、収入印紙の上に押印しないようにしましょう。

収入印紙・切手

相続放棄には、800円分の収入印紙連絡用の郵便切手が必要となります。

相続放棄の申述書には、収入印紙を貼付する箇所があるので、そこに800円分の収入印紙を貼付します。

また、連絡用の郵便切手の金額については家庭裁判所に確認する必要があります

たとえば、相続放棄の申述の手続きをするには、東京家庭裁判所の場合、82円×4枚と10円×4枚の合計368円分が必要となり、福島家庭裁判所の場合、82円×3枚と10円×2枚の合計266円分、長野家庭裁判所の場合、82円 ×2枚の合計164円分が必要となります。

このように、家庭裁判所によって、必要となる連絡用の郵便切手の金額も内訳も異なります。

連絡用の郵便切手の金額は各家庭裁判所のホームページから確認することができますが、わからない場合は電話で問い合わせることも可能です。

事前に必ず確認するようにしましょう。

被相続人の住民票除票

被相続人の住民票除票とは、簡単にいえば、被相続人の住民票のことをいいます。

申述人の立場に関係なく、共通して用意しなければならない必要書類の1つです。

被相続人はすでに亡くなっているため、被相続人の住民票除票という形で発行してもらうことになります。

被相続人の住民票除票は、ある一定の期間を過ぎると廃棄されてしまうので、なるべく早く発行してもらうことが重要です

被相続人の住民票除票が必要な理由は、被相続人の戸籍には住所の記載がないので、被相続人の最後の住所地がどこであったかを明確にするためです。

被相続人の住民票除票は、同一世帯員であれば請求することは可能ですが、別世帯の場合には、第三者請求となるため、正当な使用目的がなければ請求することができません。

相続放棄のために被相続人の住民票除票を請求する場合は、必要書類を確認の上、市区町村の役所で手続きをするようにしましょう。

申述人の戸籍謄本

相続放棄には、申述人の戸籍謄本が必要になります。

これは、申述人の立場に関係なく、共通して用意しなければならない必要書類です。

申述人の戸籍謄本は、自分で取得する場合は、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)、必要通数分の手数料が必要になります。

代理として取得する場合は、委任状が必要です。

また、戸籍謄本を取得する方法には、窓口で手続きする方法と郵送で申請する方法があります。

ただし、郵送で申請する場合は、何も記入していない定額小為替を用意するか、現金書留で必要な費用を送らなければなりません。

また、費用だけでなく、郵便切手を貼付した返信用封筒に申請者の住所と氏名を記入して、同封する必要があります。

このとき、簡易書留などの郵送方法を希望する場合は、その分の郵便切手を貼付することになります。

必要書類を準備する際の注意

必要書類を準備する際に注意しなければならないのは、申述人の立場によって用意しなければならない書類が異なるという点です。

下記表は、立場によって異なる必要書類を一覧にした「相続放棄の申述の標準的な申立添付書類の一覧」です。

≪相続放棄の申述の標準的な申立添付書類の一覧≫

※○は共通の該当書類を示します。

相続放棄の申述

被相続人の住民票除票又は戸籍附票

申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本

被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※1〇

※2〇

申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※2〇

被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))が要る場合も、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3〇

被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3〇

※4〇

被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3〇

※4〇

申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※4〇

被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※4〇

部分該当の場合は、下記それぞれとなります。

※1 申述人が被相続人の配偶者の場合。

※2 申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合。

※3 申述人が被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合。

ただし、先順位相続人等から提出済みのものは添付不要。

※4 申述人が被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合。

ただし、先順位相続人等から提出済みのものは添付不要。

(引用:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)

相続放棄の手続き方法

相続放棄の手続きは簡単に説明すると、下記の5つに分けることができます。

  • 被相続人の財産を調査して把握すること
  • 相続放棄に必要な書類をそろえて必要事項を記入すること
  • 相続放棄に必要な費用を準備すること
  • 相続放棄に必要な書類と費用を提出すること
  • 提出後に送られてくる照会書に記入して返送することの

相続放棄が受理されると、相続放棄申述受理通知書が家庭裁判所から送られてきます。

これらをすべて的確に行うことができると、相続手続きは完了します。

相続放棄を活用しやすいケース

相続放棄は、うまく使うことによって相続人たちに大きなメリットを生むこともありますし、デメリットを回避することができる場合もあります。

そのため、今回は相続放棄を活用しやすいケースについてご紹介いたします。

被相続人の財産が資産よりも負債が多く、相続すると相続人が金銭的負担に苛まれるケース

被相続人が亡くなり、相続が開始されると、被相続人の財産を相続人がすべて相続することになります。

すべての財産ということは、預貯金や不動産などの資産だけでなく、借金などの負債も相続するということです。

このとき、負債よりも資産の方が多い場合は、資産から負債を弁済すればよいので特に問題はありません。

ですが、負債の方が多い場合、相続人が被相続人の残した負債によって、金銭的負担を強いられることになります

そのような事態を回避するために、相続放棄を活用するケースがあります。

ただし、相続人として負債の相続を回避できたとしても、連帯保証人になってしまっている場合は、連帯保証人として借金を返さなければならないことがあるので注意が必要です。

相続人のうち1人にだけ相続をさせたいケース

相続人が複数いる場合、被相続人の事業を特定の相続人に跡を継がせたいなどの理由から、1人にだけ相続をさせたいというような事象が起こり得ます。

事前に被相続人が、特定の1人の相続人に遺産を相続させる旨を記載した遺言書を作成していれば、スムーズに相続は進みますが(ほかの相続人が遺留分を主張せず、裁判所が認めた場合に限ります)、遺言書がない場合は、ほかの相続人が相続放棄をしなければなりません。

相続放棄をすることで、1人の相続人に相続権が集中するため、1人だけが相続することが可能となります。

ですが、相続放棄をした場合、相続法定人には順序があるため、それらのすべての相続人に相続放棄をしてもらう必要があります。

相続トラブルに巻き込まれたくないケース

実は、相続トラブルは1,000万円以下の財産の場合に、多くみられる傾向にあります。

これは、1,000万円以下の財産であれば揉めることはないだろうと、生前に被相続人が過信してしまい、相続に関する対策を何もしていないことが多いからであるといわれています。

元々兄弟仲が悪かったり、親の介護が1人の子どもに集中していたり、特定の相続人が生前贈与(※1)を受け取っていたり、特定の相続人が特別受益(※2)を受けていたりする場合に相続トラブルに発展することがあります。

しかし、相続放棄をしておけば、最初から相続人ではなかったとみなれさるようになるため、相続トラブルに巻き込まれずにすみます

※1:生前贈与とは、生きている間に財産を受け取ること。基本的には贈与税がかかるが、金額や用途によって贈与税がかかることなく受け取れる。

※2:特別受益とは、ほかの相続人が主張すると、生前に被相続人からもらった分を相続のときにもらえなくなる制度のこと。特別受益の対象とは、自動車や学費・留学費用などが該当する。

まとめ

このように、相続放棄をするためには、さまざまな書類を用意して記入し、提出するといった手続きをしなければなりません。

書類の記入自体は記入例を裁判所のホームページで見ることが可能なため、さほど難しいものではありませんが、標準的な申立添付書類をそろえたり、被相続人の財産をすべて把握したりすることには時間がかかり、仕事などと並行して行うには、かなりの努力が必要かと思います。

ですから、もし3ヶ月以内に相続放棄に関わるすべての手続きを完了させる自信がない場合は、1人で抱え込むのではなく、相続に関する専門家である弁護士や司法書士、税理士などに相談するとよいでしょう。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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