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【相続放棄について 】
相続放棄について説明しています。相続放棄のメリットやデメリット、相続放棄が有効なケース、注意点や期限などについてまとめています。

2019年2月15日 金曜日

相続放棄の手続き方法や掛かる費用等まとめ

相続放棄の手続き方法は、実際に手続きを行う立場にならなければ、知ることのないものだと思います

相続放棄の手続き方法の中でも、書類の記入については難しくありませんが、必要な書類をそろえたり、被相続人のすべての財産を調査したりと手間や時間がかかる部分があります。

また、費用等も一律ではなく、相続放棄の手続きを行う家庭裁判所によって異なるため、自分で調べなければなりません。

そこで今回は相続放棄の手続き方法や掛かる費用等についてご紹介いたします。

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人の財産の相続方法の1つであり、相続財産を相続せず、すべて放棄することをいいます

相続放棄をする場合は、民法(相続の放棄の方式)第938条でも定められているように、相続放棄をする旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。

相続放棄の注意点

相続放棄には5つの注意点があります。

まず1つ目は「相続放棄には手続きを行わなければならない期間があるということ」です。

民法(相続の承認又は放棄をすべき期間)第915条において、相続人が相続開始を知ったときから3ヶ月以内に手続きを行わなければならないことが定められています。

3ヶ月以内にただ手続きをすればよいというわけではなく、相続放棄の手続きは受理までが必要です。

また、相続人と家庭裁判所の相続開始時期の認識が異なった場合、相続放棄が受理されないことがあるので、相続開始を知ったときがいつなのかを明確にしておく必要があります。

それだけでなく、相続が発生したことを知ったらすぐに相続できる財産や負債がどの程度あるかを調査しなければなりません。

2つ目は「相続放棄は一度却下されると再度手続きを行うことができないこと」です。

相続放棄の申述の手続きを行い、家庭裁判所に受理されないことがあります。

もし、受理されなかったことが不服な場合は、即時抗告をすることになります。

この即時抗告とは、高等裁判所に不服を申し立てることです。

ちなみに、この期間は2週間以内と決まっています。

3つ目は「一度相続放棄をしたら撤回ができないこと」です。相続放棄の手続きが受理された場合は、民法(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)第919条により、撤回できないことが定められています。

4つ目は「相続放棄をすると、代襲相続ができなくなること」です。

相続放棄をすると、民法(相続の放棄の効力)第939条にも定められているように最初から相続人ではなかったとみなされます。

そのため、代襲相続が本来可能であった立場の相続人に相続権が移ることはありません

5つ目は「相続放棄をした場合でも、被相続人の負債に関して、連帯保証人になっている場合は負債の弁済を請求されること」です。

相続放棄をすることで、最初から相続人とみなされないため、被相続人の負債の相続を放棄することができます。

しかしながら、それは相続人としての相続放棄をしただけにすぎないため、被相続人の負債の連帯保証人となっていた場合は、連帯保証人として弁済をしなければならないことに変わりはありません。

相続放棄の手続き方法

相続放棄をすると決めた場合、相続放棄の申述という手続きを行わなければなりません。

相続放棄の申述の手続きには、必要な費用と必要な書類をそろえて提出する必要があります。

それでは、相続放棄の手続き方法について、手続きの費用、必要書類を準備する、相続放棄申述書の作成、手続きに掛かる期間の順に詳しく見ていきましょう。

手続きの費用

相続放棄をする際には、手続きに費用がかかります。

相続放棄をする場合、2つの費用がかかります。

1つ目の費用は申述人1人につき800円分の収入印紙です。

2つ目の費用は連絡用の郵便切手です。

ここで注意が必要なのは、連絡用の郵便切手は各家庭裁判所によって金額とその内訳が異なるという点です。

また、相続放棄の手続きの際に相続放棄の申述書などの書類を提出する家庭裁判所は被相続人の最後の住所地にある家庭裁判所です。

そのため、連絡用の郵便切手の金額とその内訳を確認するのは、被相続人の最後の住所地にある家庭裁判所になります。

各家庭裁判所のホームページ、または電話にて確認することができます。

必要書類を準備する

相続放棄をする際に必要な書類は、相続放棄の申述書標準的な申立添付書類の2種類です。

しかしながら、標準的な申立添付書類と一口に言っても、必要な書類の数は多く、申述人の立場によってそろえなければならない書類が異なります。

下記の表は、相続放棄をする際に必要な標準的な申立添付書類の一覧です。

≪相続放棄の申述の標準的な申立添付書類の一覧≫

相続放棄の申述

被相続人の住民票除票又は戸籍附票

申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本

被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※1〇

※2〇

申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※2〇

被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))が要る場合も、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3〇

被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3〇

※4〇

被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※3〇

※4〇

申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※4〇

被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※4〇

※○は共通の該当書類を示します。

部分該当の場合は、下記それぞれとなります。

また、下記は裁判所のホームページの「相続の放棄の申述」から引用しています。

※1 申述人が被相続人の配偶者の場合。

※2 申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合。

※3 申述人が被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合。

ただし、先順位相続人等から提出済みのものは添付不要。

※4 申述人が被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合。

ただし、先順位相続人等から提出済みのものは添付不要。

(引用:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)

上記の表を見てもわかるように、どの申述人にも共通して必要な書類は、被相続人の住民票除票または戸籍附票と申述人(放棄をする方)の戸籍謄本の2種類の書類のみです。

そのほかの書類は、該当する立場によって用意しなければならないものが異なります。

相続放棄申述書の作成

相続放棄申述書の作成は、相続人自ら行うことが可能ですが、弁護士などの専門家に作成を依頼することも可能です

また、相続放棄申述書は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

2枚ある相続放棄申述書は、書類自体に違いはないものの、申述人が20歳以上であるか20歳未満であるかによって記入する項目が異なります。

下記が記入項目とその内容です。

  • 「申述人」の項目

法定代理人の署名と押印が必要となります。

「法定代理人等」の欄に記入する必要があります。法定相続人等の欄には、相続人との関係に丸をつけます(たとえば、1.親権者、2.後見人など)。

また、住所、氏名(フリガナ)を記入します。

  • 「被相続人」の項目

被相続人の本籍(国籍)など、被相続人の詳細について記入します。

  • 「申述書の趣旨」の項目

あらかじめ、「相続の放棄をする。」と記載されているため、特に記入することはありません。

  • 「申述の理由」の項目

相続の開始を知った日(年月日)を記入します。また、相続の開始を知った日について、該当する項目にチェックをします。

  • 「放棄の理由」の項目

相続放棄の理由に該当するものにチェックをします。

  • 「相続財産の概略」の項目

預貯金や現金、農地などの資産と借金などの負債(具体的な金額)を記入します。

すべての項目に記入したら、「(この欄に収入印紙800円分を貼ってください。)」と書かれている箇所に必要な費用である収入印紙800円分を貼り付けて、相続放棄申述書の作成は完了です。

相続放棄申述書の内容に不備があると、相続放棄の手続きが受理されない原因となるので、記入にミスがないかしっかりと確認するようにしましょう。

手続きに掛かる期間

相続放棄の手続きは、申述書と標準的な申立添付書類、必要な費用(連絡用の郵便切手及び収入印紙800円分は申述書に貼付)を提出したところで、終わるわけではありません。

相続放棄の手続きが受理された場合、照会書という書類が相続放棄の手続きを行った家庭裁判所より送られてきます。

それに必要事項を記入し、返送しなければなりません。

上記のような理由から、相続放棄の手続きに掛かる期間は、申し立てを行ってから2週間から1ヶ月と見込んでおきましょう

つまり、相続放棄を期限の3ヶ月以内に完了させるためには、被相続人の財産を自分が相続することを知ってから、2ヶ月以内には相続放棄の手続きを始める必要があるということになります

そのためには、被相続人の財産の相続を知ってから、すぐに財産の調査を行い、相続放棄をするという判断をしなければなります。

また、各家庭裁判所の混み具合などにより、相続放棄が受理されるための時間にはバラつきがあるため、余裕を持って手続きを行うことも大切です。

相続放棄が有効なケース

相続放棄が有効なケースがあります。

ここでは、よくある相続放棄が有効なケース2点を詳しくご紹介いたします。

被相続人の財産が資産より負債の方が多いケース

被相続人の財産が資産より負債の方が多いケースは、相続人が被相続人の財産を相続することで金銭的な負担が相続人にのしかかってしまいます。

このような場合、すべての財産を相続放棄することで相続人は金銭的な負担を回避することが可能となります。

万が一、被相続人の財産の中で相続したいものがある場合は、相続放棄ではなく限定承認という相続方法を選択することもできますが、限定承認の場合、先買権の制度を利用して、被相続人の財産を相続しなければならないので、金銭的な負担が生じます

そのため、被相続人の財産が資産よりも負債の方が多い場合は、基本的に相続放棄をした方が全体的な金銭的負担をしなくてすむといえるでしょう。

相続トラブルに巻き込まれたくないケース

被相続人の財産を相続する際に問題となることが多いのが、相続トラブルです。

相続トラブルは、遺産相続の立場に置かれるまでは考えることがないでしょう。

しかしながら、実際、相続トラブルは年々増加傾向にあります。

これは、裁判所のホームページの「司法統計」の「遺産分割事件数  終局区分別  家庭裁判所別 」(PDFデータ、またはexcelデータ)の「遺産分割資事件数」からも明らかです。

下記のグラフと表は、平成20~29年度の遺産分割事件数の全国総数、調停成立件数、調停に代わる審判の件数です(ただし、調停に代わる審判の件数のみ平成25~29年度分です)。

※裁判所ホームページ 司法統計 各年度の「遺産分割事件数 終局区分別 家庭裁判所別」の数値を引用し、平成20~29年度分のデータを元にグラフと表を作成しています。

※「調停に代わる審判」においては、平成25年度からのデータしかないため、5年分のデータのみとなります。

上記のグラフと表からもわかるように、平成28年度から遺産分割事件数の全国数や調停成立数は減少傾向にあるものの、その数は微細であり、調停に関わる審判は増加傾向にあります。

このように、司法統計 各年度の「遺産分割事件数 終局区分別 家庭裁判所別」の数値からも相続トラブルは多く起こっており、相続トラブルが実は誰にでも起こりえるものであるということがわかります

被相続人が生前に遺書を作成していかなったり、遺書を作成していても内容に不備があったりすると、相続トラブルに発展しやすくなります。

また、兄弟仲が悪かったり、1人の相続人に被相続人の介護を押しつけていたりする場合は、それが原因となって相続トラブルを引き起こしてしまうこともあります。

それらが遺産分割事件数に反映されているのです。

ですが、相続放棄をすることで、こういった相続トラブルに巻き込まれることはなくなります。

相続放棄をすることで、民法(相続の放棄の効力)第939条において、初めから相続人ではなかったと見なされるため、財産相続との関係がなくなるからです。

ですから、相続トラブルに巻き込まれることを防ぐ手段として、相続放棄をすることは非常に有効であるといえます。

まとめ

このように、相続放棄をするためには、必要な書類と費用を用意し、細かい手続きをすべてこなさなければなりません。

相続放棄には手続きを完了させなければならない期限もあるので、すべてを把握した上で逆算して相続放棄の手続きをする必要があります

相続放棄の手続きをする期間というのは、被相続人を亡くして、精神的にもつらい時期であり、葬儀などやらなければならないことが多くある時期でもあります。

ですから、自分で相続放棄の手続きを行うことが難しいと感じた場合は、相続の手続きの専門家である弁護士や司法書士に相談し、スムーズに相続放棄の手続きを行うことが重要となります。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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