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お金や不動産以外を相続する場合について説明しています。墓地や仏壇、ゴルフ会員権、自動車、保険金、株式、会社、宝石、貴金属などを相続する場合の注意点やポイントについてまとめています。

2019年2月28日 木曜日

墓地や仏壇などの相続にはどのくらい費用がかかるのか

墓地や仏壇も相続の対象ではありますが、法律上の相続財産には該当しません

そのため、いわゆる相続税は、発生しないのです。

しかし、亡くなった方の葬儀をするのも、墓地に遺骨を埋葬するにも、葬儀費用がかかります。

初七日、四十九日、一周忌、初盆、三回忌、毎年のお盆に法要、その度にお坊さんのお布施・お車代やお食事代等、法事ではさまざまな費用が発生します。

それらの負担を誰がするのかについて、話し合いが必要なこともあります。

また、墓地や仏壇などを相続した場合、「その手続きはどうすれば良いのか」「どれだけの費用がかかるのか」など、多くの不安がのしかかると思います。

この記事では、読者の皆様がわからないと思っていることについて解説していきます。

墓地や仏壇は祭祀財産

祭祀財産とは

系譜(家系図)や位牌、仏壇(その付属品や盆提灯等)、墓地(墓石とその土地)等を祭祀財産といいます。

そして、ご先祖様をお祀りするために、法事等(祭祀)を取り仕切る責任者を、そのしきたりや作法とともに、必要なさまざまな物等(系譜・位牌・仏壇等・墓地)と一緒に継承するのが祭祀の相続(継承)であり、そして必要なさまざまな物等が祭祀財産です。

家制度があった昔は、「家督を継ぐ」という言葉もあり、家を継ぐ後継ぎがご先祖様も含めて祭祀の一切を継承する習慣がありました。

そして、家督を継いだ者は、戸主権の象徴として祭祀財産を受け継ぎ、それらを守る者としての威厳も継承していたのです。

しかし最近では、核家族化が進み、家も狭くなって、マンションの場合は和室が無い事も多いので、和室に鎮座する大きな仏壇を置くスペースがありません

そのため、最近では時代に即して、狭い和室やリビングに置けるようにと仏壇も改良されて、インテリアにも溶け込める簡略化された「モダン仏壇」「ミニ仏壇」などの進化した仏壇も登場しています。

晩婚化が進み、子供のいない夫婦も増えたので、継承者がいないために、次の世代は家が途絶えてしまう家もあれば、子供がいても遠方にすんでいてお墓参りになかなか帰ってこれない家もあります。

こういった理由から、永代供養やネットのお墓といった新時代の祭祀の慣習も生まれてきました。

もはや「家督を継ぐ」という言葉も死語となり、家制度もなくなりました。

今の時代、もはや戸主権の象徴であったはずの祭祀に、あまり重きを置かなくなったようです。

さらに高齢化が進み、子供に迷惑をかけないようにと、葬儀費用やお墓等のことは、生前に親が自分で準備していることも多くなりました

今や、生前葬や葬儀の生前予約(葬儀の積み立て)といった葬儀社のサービスもあるくらいです。

このように、親が生前に準備をしっかりと整えていることも多いため、祭祀財産の継承が無い場合もあります。

祭祀財産は非課税

祭祀財産は、祭祀のための道具一式全てが、儀式の一環として必要です。

お墓や仏壇にも購入には費用がかかっているのですが、相続財産として法定相続人で共同分割すると、祭祀自体ができなくなります。

そもそも、祭祀関係の行事には税金がかからないことになっています

だから、お坊さんのお布施、神社のお賽銭や奉納等神社仏閣の収入には消費税もかからなければ、一切の税金もかかりません。

ただし、お坊さんの交通費や法要のねぎらいのお食事代としての支払いには、お坊さんの所得として税金がかかるのです。

税金とは、日本国民の所得にかかるものです

神様・仏様にお納めするお賽銭やお布施は、寺や神社が管理しているだけで、神様や仏様のために使われるお金なので、税金がかかりません。

神様や仏様は、税金を払うべき日本国民ではないので、それに関わる祭祀財産も税金がかからない非課税対象なのです。

相続財産との違いは?

先祖の供養をするための大切な儀式として、祭祀財産はその必要な道具、お墓や仏壇はご先祖様の家のようなものです。

先述した非課税の理由と同じなのですが、祭祀財産は、ご先祖様やご先祖様のお祭りに必要なものは、もはやご先祖様の道具であり、ご先祖様の代わりに管理している財産という考え方なのです。

そのため、司祭財産は、家督を継ぐものや、その家の代表者が、管理者(正式には「祭祀主催者」という)となって、代々が継承していきます。

なので、ご先祖様のものと、生きている人の財産は持ち主が違うという考え方が昔から根付いていました。

これが、祭祀財産の慣習です。

地域によっては、細かい部分は多少考え方が違う場合もありますが、だいたいこういった感じです。

墓地の承継(相続)に必要なこと

ちなみに、祭祀財産は、ご先祖様を供養する儀式の責任者(祭祀主宰者)が受け継ぐものです。

なので、地域の慣習によって決まっているところも多いのですが、法律上は、誰が相続しても良く、相続を放棄した遺族が祭祀財産だけ継承することもあれば、遺族でない第三者が遺族の許しを得て相続することもあります。

祭祀財産の一つであるお墓についても同様で、一般財産の扱いとは異なるのです。

そして、お墓の場合、管理者の名義変更をしておかないと、墓地の永代使用権(家が続く限り使用できる権利)を失ってしまうことがありますので注意しましょう

また墓地には、管理費やそれに加えてお布施をお納めしたり、お寺や神社や教会がお墓を管理している場合は、定期的な行事に参加したり、寄付をしたりする事もあります。

このような行事の連絡ができなくなったり、管理費を滞納したりした場合は、管理者がいなくなって家が途絶えたと判断され、墓地の永代使用権がなくなってしまうこともあるのです。

ただし、家賃滞納のように、数回で即権利を失うわけではありません。

祭祀承継者の選定

とにかく、祭祀者の継承は1人ですから、遺言で指名されている場合は、指名された人が、そうでない場合は、地域の慣習によって、あるいは遺族で話し合って決めます。

それでも決まらない場合は、裁判所が決定することもあります。

承継者選定方法の優先順位

法定相続人のように、遺言書がない場合に、法律で定められた相続順位というものはありません

先祖の供養を心を込めてしてくれる人であれば、極端に言ってしまえば誰でも良いのです。

ただし、やはり、遺言書の祭祀継承者の指名には法的効力があるので、継承者には、慣習による祭祀主宰者であった故人の希望が反映されるようです。

遺言がない場合は、慣習や相応しいと親族が思う候補者がいたり、親族各々の事情などによって、親族の話し合いで決まることがほとんどです。

昔は、家督制度によって、祭祀継承者には権威や象徴、代表者としての財産の優遇等があったので、慣習に該当する人は、競って誰もが名乗り出たものです

しかし、今はそのような制度はないので、遺言書がない場合は、さまざまな事情で祭祀財産を押しつけ合う場合もあり、家庭裁判所に審判を申し出ることもあるのです。

  • 1位:遺言者の指名
  • 2位:遺族の話し合いによる決定
  • 3位:家庭裁判所の審判による指名

祭祀承継者の役割とは?

祭祀継承者の役割は、一言で言うと、お墓を守り、ご先祖様の法要を行うことです

お寺の檀家としての地位も引き継ぎます。

仏壇や神棚を継承したなら、毎日お供え物をしたり、お花や榊もお供えして、お祀りしなければなりません。

継承者が子供のいない夫婦だったり、結婚していなかったり、自分の後を継ぐ者がいない場合は、お墓を撤去してお寺や霊園等に墓石を撤去して更地にして墓地を返します。

その際のご先祖様の遺骨は、永代供養をしてくれる納骨堂へと移します。

これを改葬と言います。

引っ越して、お墓の近くに親族が誰もいなくなった場合、継承したお墓を撤去して、墓地を管理しているところに返して、家の近くに新たに墓地を購入してお墓を建立することも改葬です。

あるいは、海や山に散骨したり、自宅に骨壺を持ち帰り身近な場所に置いて供養する「手元供養」という方法もあります。

最近では、インテリアに調和するお洒落な骨壺や骨を加工してペンダントや指輪にしたり、お骨の一部を入れる入れ物もあります。

お墓が遠くて、誰もお詣りに行かず、お掃除もされずに、お墓が雑草や蜘蛛の巣で荒れ果てる…というのが、ご先祖様が一番悲しむ結果でしょう。

そのような状態にならないために、永代供養や改葬をしたり、「墓じまい」を決断して実行するのも祭祀主宰者の大切な役割です

ただし、お墓をお参りする親族一同の同意を得ずに勝手に行うと、とんでもないトラブルに遭ってしまうので、親族でよく話し合って実行しましょう。

改葬や「墓じまい」について親族一同の同意を得るのも、大変です。

墓石の解体料金やお寺への檀家を離れる離断料、祟りがあるとか、お寺に失礼とか、信仰の想いの違いからさまざまな意見が出ます。

一同の同意を得たとしても、今度は遺骨を誰が引き取るのか、墓じまいの費用は誰が持つのか、さまざまなトラブルがつきまといます

それぞれのお家の事情がありますので、お寺や教会に失礼だとか、祟りがあるとか、費用のこととかは、お寺や教会に直接聞くのが一番です。

祭祀継承者は、親族をまとめ、最終的な判断をして、しめやかにご先祖様に向き合わなければなりません。

墓地を承継する方法

法律上の決まりというものはありません。

名義変更といっても、お墓の管理をしている管理者の窓口に、連絡をして指示に従いましょう。

一般的に、墓地には、祭祀財産を継承した親族の代表者として、祭祀主宰者の名前で、名義人が登録してあります。

そのため、その祭祀主宰者が亡くなった場合、祭祀財産を相続した(継承した)新たな祭祀主宰者の名義に変更しなければなりません。

名義変更をしないまま放っておけば、祭祀主宰者に連絡がつかなくなって、家が途絶えたと判断されてしまいます。

その場合、遺族がいない共同墓地にご先祖様全員の遺骨が移されてしまうのです。

墓地の名義は、土地の所有権と違って、永久的な所有権があるものではなく、永代使用権という、家が続く(お墓の管理する人がいる)限り、つまり、お墓の管理人と連絡がとれる限り、その権利は続きます。

しかし、家が途絶えたら、その墓地を利用する権利がなくなるので、先述したように共同墓地へとご先祖様の遺骨がまとめて移されてしまうのです

ですから、そんなことにならないように、墓地の永代使用権を守らなければなりません。

一般的に墓地の管理している所は、お寺や市区町村や民間霊園等の管理事務所だったりします。

えその管理者の窓口で、必要書類をもらって手続きをします。

窓口によって、管理費や名義変更のための手数料、書類等が異なりますので、まずは管理の窓口に問い合わせましょう。

一般的に墓地からもらう書類は以下の書類です。

  • 名義変更書(墓地によってフォーマットはさまざま)
  • 墓地使用許可証(永代使用許可証)

この手続きには費用がかかります。

公営墓地の場合は、市区町村が管理者なので、印紙代のような代金です。

こちらは数百円といわれていますが、地域によって決められていますので、市区町村の役所に問い合わせましょう。

民間の霊園の場合は、数千円かかります。

これも霊園によって異なりますので、その霊園の管理事務所に問い合わせましょう。

お寺の場合は、檀家としてのお布施等にかえて手続きをお願いする場合もあれば、規則がある場合もありますので、こちらも問い合わせましょう。

名義変更の手続きには、市区町村で亡くなった元管理者の死亡がわかる戸籍謄本と、継承者の戸籍謄本や住民票と印鑑証明・身分証明書も必要です。

その他、遺言書や親族の同意書等、祭祀継承者であることがわかる書類や元管理者(旧名義人)との関係がわかる葬儀費用の領収書等が必要な場合もあります。

また、名義変更の手数料は、公営墓地、民営墓地・霊園、お寺の墓地等、それぞれ費用が異なりますので、問い合わせましょう。

一般的に墓地等の霊園の場合は、檀家としての地位も引き継ぎますので、手数料の他に、お布施が必要なケースが多いです

檀家の場合は、お布施の金額を親族に聞いておきましょう。

わからない場合は、今までいくらのお布施を納めていたのかを教えてもらいましょう。

ちなみに、お布施は「払う」ではなく「お布施を納める」といいます。

また、料金ではなく「納めていたお布施の額」といいます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

墓地にまつわる相続を中心に、祭祀の相続について解説しましたが、さまざまな手続きや行事で、もしもわからなくなったときは、お寺や教会に問い合わせるのが一番です。

祭祀を継承した人は、自分が死んだ後の祭祀の継承についても考えなければなりません。

もしもお墓の継承が将来的に難しくなるようでしたら、永代供養塔の方法もあります。

お墓の撤去も視野に入れて、一定の年齢になったら終活とともに考えておくことも必要です。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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