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2019年2月28日 木曜日

墓石は相続財産の対象にはならない?!

亡くなった方がご先祖様のお墓を守っていた場合、墓石も相続の一つに入るということをご存じの方は少ないと思います

一般的には、ただ「お墓を受け継ぐだけ」という認識の方が多いのではないでしょうか?

相続の対象となると「相続税はかかるのか?」「相続放棄もできるのか?」など、いろいろリスクやメリットをお考えになるかと思います。

ただ、相続の対象の一つとはいっても、相続ができるものは、相続財産だけがすべてではありません。

お墓については、「祭祀財産」という分類の相続となります。

祭祀財産は、財産という言葉がついていますし、遺言書に継承者を記載できる項目の一つです。

しかし、他の相続財産と違って、相続放棄をしても祭祀財産だけは継承することができます

この違いは何なのか、この記事では、相続の対象となるものとならないものを分類しながら、墓石の相続について解説していきます。

相続財産となるものとそうでないもの

相続財産となるもの

相続とは亡くなった人の財産を受け継ぐことをいいます。

財産とは、個人が所有している金銭的に価値があるものを指しますので、相続の対象となるものと、相続の対象とならないものがあります。

さらに、相続財産となるものは、金銭的価値のある財産ばかりではありません。

金銭的価値のある財産をプラスの財産というなら、このような負債は、マイナスの財産となります。

借金やクレジットのボーナス払い、住宅ローン、カーローンといった負債だけでなく、未払いの税金や健康保険料、医療保険だってマイナス財産となります。

未来永劫、いつダイナマイトとして爆発するかわからない大きなマイナス財産予備軍が、借金の連帯保証人です。

そして、プラスの財産を相続したら、もれなくマイナス財産も相続を免れません。

相続財産にならないもの

相続財産にならないものとは何でしょうか。

財産的価値の無いものは、個人にとってどんな大切な物だったとしても、一般的に相続財産になりません

故人の入れ歯の金、子供が小さいときに書いた絵、手紙など。

このような物は、火葬の時に一緒に焼いてもらう事が多いかもしれません。

では、相続財産にならない物の代表的な例を紹介します。

葬儀費用や香典は相続財産ではない

むしろ、葬儀は遺された遺族が自分の家計から出費するものですから、香典も葬儀費用を出した人(一般的喪主)のものになります。

一身専属的な権利は相続財産ではない

免許や資格、会社の役職や地位等のことで、一身専属的な権利といい、これらも当然ながら相続財産にならないものに該当します。

医師や弁護士などの資格が相続できたら恐いですから、相続財産ではないというのは納得できるかと思います。

もちろん会社の社長が亡くなって、家族経営をしていて、財産を相続した息子が会社を受け継ぐ場合もありますが、社長の地位は一身専属的な権利ですから、相続ではなく、協議により能力や資質、亡くなった社長の希望を加味して遺族が決めるものです。

しかし、遺言書に「会社の社長を自分の亡き後長男に継がせたい」という希望を書くと、地位には遺留分請求権はないので、相続には該当しませんが、遺言書の「地位の指名」は法的にも有効となります。

ちなみに、一般的に地位の継承を遺言書に記載した場合は、株や財産的なものも一緒に分け与え、遺された人が反対してもどうすることもできない財産的な権利を承継しているケースが多いでしょう。

生命保険は相続財産になるとは限らない

他にも相続財産にならないものについて、代表的なものは生命保険が該当します。

ただし、例外があります。

契約者と死亡保険受取人が同じ場合は、所得税が発生します。

例えば、夫が妻の保険の契約者で、被保険者が妻、妻が亡くなったときの死亡保険受取人が夫の場合、夫が支払った保険料の保険から保険金を受け取るので、支払われるのは妻の死亡保険金ですが、相続税ではなく所得税となります。

ところが契約者と死亡保険金受取人が異なる場合は、課税されるのは相続税だったり、贈与税だったりするのです

例えば、父親が母親を被保険者とする医療保険には加入していて、妻が死亡した場合、子供が死亡保険金の受け取りとなる場合は、父親が支払っていた保険料から出る死亡保険金を、契約者の父親が生きているうちに子供が受け取ることになるので、この場合は贈与税がかかります。

また、母親自身が契約者となり、自分(被保険者)の医療保険に加入していた場合の死亡保険金の受取人を子供にしていた場合、母親が支払った保険料から出る母親の死亡保険金を、法定相続人の子供が受け取るので、この場合は相続税がかかります。

このように、保険料を支払っている契約者と死亡保険金の受取人の関係性によって、所得税・贈与税・相続税と、課される税金が変化していきます

ただし、相続税の場合、基礎控除と生命保険控除というものがありますので、その枠内に入れば相続税の課税対象にはなりません。

生命保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の人数

この限度額を超える金額が相続税の課税対象となります。

他の法定相続人にも生命保険金が支払われた場合は、亡くなった人の生命保険金の金額全額を100%とした金額のうちの割合によって、生命保険限度額が変動する場合もあります。

詳細は、国税庁の「相続税の課税対象になる死亡保険金」を参照してみてください。

墓石や仏壇が相続財産にならない

前述にもある通り、祭祀関係は財産ではありません。

祭祀財産とは、系譜や祭具、墳墓の3つに分けられます。

墓石は祭祀財産として扱う

祭祀財産とは

先述したように、墓石は相続財産に該当しません

しかし、遺言書では、継承者を指名できる項目「祭祀財産」として扱われているのに不思議な感じがするかもしれません。

ですが、遺言書の内容については民法、相続税については国税庁が管轄する税法によって定められているものですから、多少異なる部分もあると割り切って考える必要があります。

民法では「祭祀財産」を、祖先を祀るための財産のことと定めています。

ただ、現行法の民法は、時代の変化に伴って税法に近づいてきました。

以前は、家督相続人が祭祀財産を継承していましたが、家督相続が廃止になったため、現行民法では相続財産とは異なった扱いとなり、法定相続人で分割される財産から除外されています。

そのため、被相続人が指定すれば法定相続人ではない者でも継承することができます。

法定相続人が納得しなくても、相続財産ではないので、遺留分請求権という不服申し立てもできません。

さらに、財産放棄を行っていても、祭祀財産だけは継承することができます

祭祀財産の種類

民法では、祭祀財産を系譜・祭具・墳墓の総称と定めています。

例えば、家系図、位牌、仏壇、墓碑、墓地などがあげられます。

具体的に解説すると以下の通りです。

  • 系譜

家系図のことで、絵巻物や掛軸として残っていることが多いです。例えば、教科書に載っている徳川家の家系図のように、大きな農家や旧家・老舗等の家で受け継がれることが多いでしょう。

  • 祭具

神棚とその付属品、仏壇や仏具(盆提灯や仏壇の付属品)、位牌や仏像等。

  • 墳墓

故人の遺体や遺骨が納められている埋棺・墓碑・霊屋、その敷地である墓地も含まれます。

祭具に、国宝級の高価な物がある場合や、元スケート選手の織田信成さんの織田家の家系図等は、歴史的な観点から見ると、非常に価値がある場合もあります。

しかし、どれだけの価値があったとしても、相続税の対象にはなりません

極端に言えば、家系図が黄金の石(時価数億円)に刻まれていたとしても、家系図は相続税の対象にはならないのです。

墓石の承継には祭祀承継者が必要

昔は、長男が家を継いで、お墓や先祖の霊を守ってきました。

そして、家を継いだ者が祭祀の継承者となって、代々受け継いできたのです。

しかし、時代は移り変わり家制度がなくなり、先祖への思いに頼って、育った環境によって、慣習として祭祀は受け継がれていくようになりました。

宗教は、仏教・神道・キリスト教・カトリック等、さまざまです。

その宗教に則って、葬儀が行われ、ご先祖様が祀られています。

仏壇も仏教の種類によって、仏具が異なります。

それぞれの宗教のしきたりに従って、法事や葬儀、お盆のお祭り、お墓参りにお墓の掃除などが行われます。

そのご先祖様の供養の一切のことを任せる責任者に、祭祀の全てが受け継がれるのです。

それを一切取り仕切るのが祭祀承継者です。

葬儀の後は、法事や毎年のお盆のお参り等々、直近の先祖、両親や祖父母への思いから、人々は祭祀を大切にします。

現代では、昔の家制度がなくなったので、遺言で指名されていなければ、お墓の近くに住んでいる人や、兄弟で話し合って司祭の継承者を決めます

しかし、子供に先立たれて義理の子供や孫、兄弟姉妹だけが法定相続人となった場合は、財産の相続には興味津々でも、祭祀の継承者が決まらない場合もあります。

そういった場合、祭祀を名乗り出る人がいなくて、慣習も明らかでない場合は、家庭裁判所が定めることもあります。

お盆に海外旅行に行ったりする人も多いので、両親が亡くなると、親戚との付き合いも少ないからという理由から、今は都心から遠方の実家に戻る人が少なくなりました。

そのため、祭祀の継承という概念も薄れつつあり、便宜上ネットのお墓や永代供養をしてしまう人も少なくありません。

祭祀継承者がするべきことは?

ネットのお墓や永代供養といった未来型祭祀の話はさておき、まだまだ昔ながらの祭祀行事を心を込めて行っている人も多くいらっしゃいます。

祭祀継承者がするべきことについて、決められた範囲はありませんが、主にお墓の管理をしたり、法要を主催するなど、仏様のお世話をすることになるでしょう。

先に述べたように、葬儀の後の法事やご先祖様の法事や供養、菩提寺や教会、神社への寄付金や管理費を、それぞれのしきたりによって行っていかなければなりません。

もちろん、それらに伴ってある程度の費用もかかります。

管理の仕方については、宗派やその家計によってさまざまですので、それに沿って行われることとなります。

そのため、祭祀継承者はしきたりや管理方法を継承しなければなりません

わからないことがあったら、菩提寺の和尚さんや教会の牧師さん、神社の神主さんに聞くこともできます。

墓石の承継方法

墓石を継承するには手続きが必要です

墓地には、管理費等さまざまな費用がかかります。

そのため、その費用の請求先や寄付金のお願い先が祭祀の継承者となりますので、墓地を管理するお寺や教会、神社に連絡しておかなければなりません。

墓地使用者の名義変更届けを提出し、名義変更手数料を支払います。

場合によっては別途寄付金を支払う場合もあります。

必要書類は以下です。

  • 使用許可証の原本
  • 継承使用申請書
  • 申請者の戸籍紗本
  • 申請者の実印、並びに印鑑登録証明書

細かい書類は、事前に管理所に問い合わせをして準備を整えましょう。

遠方の場合は、郵送で済ませることも可能です。

まとめ

いかがでしたか。

相続財産が増えてしまうのではないかと、祭祀財産を継承することを嫌がる人もいますが、祭祀財産には、一切相続税がかかりません

お寺や教会や神社のお布施や参拝料に税金がかからないのと同じで、祭祀道具には税金がかかりません。

祭祀財産継承するということは、祖先を敬う気持ちと祭祀の作法やしきたりを受け継ぐということなのです

しかし、司祭財産の一つであるお墓を守るためには、さまざまな費用がかかります。

例えば、墓石が台風や地震で倒れたら修復もしなければなりません。

墓石の文字が薄くなったら縁起が悪いので、墨入れをしなければならないともいわれています。

お墓の掃除をしてきれいにするには、お花を手向け、お線香を焚き、手間も時間もかかります。

そのような心がを持てる人であれば、法定相続人でなくとも、血縁のない第三者でも良いのです。

相続放棄をしても、祭祀を継承できるのは、祭祀というものは、心を受け継ぐことだからです。

そのため、祭祀の一つである墓石には相続財産としての相続税がかからないのです。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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