2019年1月28日 月曜日
株を相続するには?知っておくべき3つのポイント
株を相続することが決まったら、何から手続きすれば良いのかわからず、困っていませんか?
株を相続するには、まず上場株式か、非上場株式かを確認する必要があります。
上場株式だけなら株価が一般に公開されているため、自分でも株価を確認することができます
しかし、非上場株式の場合は、経営状態の分析や複雑な計算が必要なため、自分では簡単に株価を確認できません。
相続する株の価格を自分で計算することでは容易ではないのです。
株を相続するには株価の調べ方や評価の方法の専門的な知識が必要なため、専門家に相談することが最善策です。
今回は、株式の相続税、株式(上場、非上場)の評価方式や計算方法についてご紹介しましょう。
目次
株式相続による税率
株式を相続すると分かったら、どうやって金額を計算すれば良いでしょうか?
株式には上場株式と非上場株式の2種類があり、それぞれの相続の方法が異なります。
株式には、1株100円の株や1万円の株などの価格があり、大きな差があります。
価格が変わる上場株式の場合は、株価が公開されているため、取引所の株価などを見れば、自分でも価格を確認することができます。
しかし、非上場株式の場合は、株価が公開されていないため専門的な知識が必要です。
非上場株式の場合は、証券会社や信託銀行は間に入らないため、自分で相続税の金額を計算しなければなりません。
ここからは株式相続による税率を見ていきましょう。
相続税の計算には、まずは税率と控除額を確認します。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
株式を相続した場合の相続税は、上場株式または非上場株式の評価額を知る必要があります。
上場株式の評価額は、上場株式の場合、死亡の日の金融商品取引所が公表する最終価格により評価します。
一方で、非上場株式の評価は多くの場合、原則的評価方法で評価します。
▼非上場株式の評価方法
①原則的評価方式
株式を発行した会社の従業員数、総資産評価額、会社の規模、業績により評価する方式です。
非上場株式では、一般的に原則的評価方式が取られることが多いです。
原則的評価方式は、会社を規模・従業員の人数などから大会社、中会社、小会社の3種類に分けて評価します。
大会社の場合は、平均値から株価を割り出して評価します。(類似業種比準方式)
小会社の場合は、被相続人死亡時の会社の貸借対照表から割り出します。
中会社の場合は、類似業種比準方式と純資産価格方式を併用して評価します。
純資産価格方式とは、財産から負債などを差し引いて財産を株数で割り、一株当たりの株価を出します。
②配当還元方式
会社全体を評価するのではなく、元本である株式の価額を評価する方法です。
配当還元方式は特例的な評価方式となり、株式を所有することで受け取る一年間の配当金額を一定の利率10%還元します。
▼相続税の計算
妻:2,100万円×税率15%-控除額50万円=265万円
長女:1,050万円×税率15%-控除額50万円=107.5万円
長男:1,050万円×税率15%-控除額50万円=107.5万円
▼相続人の相続税合計
妻265万円+長女107.5万円+長男107.5万円=合計480万円
株式の相続は、上場か非上場であるか、会社の大きさ、株式の取得者により評価方法が変わるので、非常に複雑と言えます。
2種類の株式
株式には上場株式と非上場株式の2種類があり、それぞれの相続の方法が異なります。
非上場株式とは、上場株式のように取引価格が形成されていないため時価がありません。
非上場株式を相続した場合は、時価を算出してから相続税の計算をします。
非上場株式を相続した場合は、相続税を計算するために正確な評価方式を使って計算します。
株を相続した場合、大株主になるのか少数株主になるのか、もしくは、分けるという選択肢もあります。
株式を所有していれば、会社の経営に参加したり、配当金を受け取ったりする権利が与えられます。
株を会社の支配や経営権の行使に使用していた場合は大株主に該当します。
少数株主とは株式の配当からのみ利益を得る株主のことです。
会社から得る利益は大株主の方が多く、少数株主の利益は少ないです。
大株主か、少数株主かを選択したら評価方式を決定します。
▼大株主
- 大会社:類似業種比準方式で時価を評価
- 中会社:類似業種比準方式と純資産価額方式を用いて時価を評価
- 小会社:類似業種比準方式と純資産価額方式を用いて時価を評価
▼少数株主
配当還元方式で時価を評価
①類似業種比準方式
市場で時価が形成されている会社の株価をもとにして時価を決定し、相続税の計算をする。
非上場株式の大会社の場合は類似業種比準方式が採用されます。
②純資産価額方式
会社の資産から負債を引いた分の額に対して、相続税を課税するやり方。
③配当還元方式
配当の額を元にして相続税の評価を行う
評価方式
上場株式の評価方法は、市場価格は公開されているので比較的簡単に評価することができます。
▼上場株式の評価方式
上場株式は4種類の価格のうち最も低いもので評価します。
上場株式の相続税評価額は、被相続人の死亡日に当たる相続開始日の株価に保有株式数をかけて計算します。
株価は会社の業績や経済により変わるので、次の4つの価格のうち最も低いものを選択します。
- 相続開始日の終値
- 相続開始日の月の取引日ごとの終値の平均額
- 相続開始日の月の前月の取引日ごとの終値の平均額
- 相続開始日の月の前々月の取引日ごとの終値の平均額
※終値とは取引があった日の最後につけられた価格
相続開始日の終値、月間の終値の平均額は、取引している証券会社に問い合わせれば分かります。
相続開始日の終値はYahoo!ファイナンスの株価情報からも調べることができます。
相続開始日の日付を指定すれば、相続開始日の終値が確認することができます。
▼非上場株式の評価方法
非上場株式は市場価格がないため、会社の財務状況から株価を評価する必要があり、専門知識が必要です。
一般的に非上場株式の評価方法は非常に複雑なので、税理士に依頼することをおすすめします。
非上場株式の株価の評価方法は、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式の3種類あります。
株式を相続して、大株主になる場合は、類似業種比準方式または純資産価額方式、2つを併用して株価を評価します。
①類似業種比準方式
業種が類似している上場企業の株価・配当・利益・純資産を参考にして株価を評価する
②純資産価額方式
相続税評価額で求めた会社の純資産価額から、評価差額に対する税額を差し引いて株価を評価します。
評価差額は会社の資産・負債の帳簿価額と相続税評価額の差額です。
③配当還元方式による評価
株式を相続した人が少数株主または経営者一族以外にあたる場合の評価方法
配当還元方式では、類似業種比準方式や純資産価額方式よりも評価額が低くなります。
相続税を節税して事業を安定させるためには、適切な対策を取ることが大切です。
相続税の計算方法
株式には、上場株式、投資有価証券等があり、株式の相続税評価額の計算方法も変わります。
上場株式の相続税評価額は、4つの時価のうち、最も低い株価を選択します。
- 相続開始日の終値
- 相続開始日の月の取引日ごとの終値の平均額
- 相続開始日の月の前月の取引日ごとの終値の平均額
- 相続開始日の月の前々月の取引日ごとの終値の平均額
※終値とは取引があった日の最後につけられた価格
上場株式の場合は、相続発生日の終値だけではなく相続発生前3か月間の月平均の最も低い額も選択することが可能です。
投資信託の相続税評価額は、投資信託の1口あたりの基準価格×口数で算出できます。
正確な相続税評価額を知るためには、購入した証券会社に確認すると金額を知ることができます。
相続人がするべきことを確認しておく
ここらは、株式の相続をする際の流れを見ていきましょう。
株式の相続をするには、遺産分割協議を行い「遺産分割協議書」を作成します。
株券発行会社に対して名義書換の手続きをする必要があります。
相続財産になる株式が、どれだけあるのか相続株式を調査する必要があります。
株式は上場株式と非上場株式があり、証券会社、信託銀行などの金融商品取引業者等が管理をしています。
証券会社や信託銀行等から送付された書類を確認して、取引残高報告書を発行するように請求します。
取引残高報告書には、被相続人がどこの会社の株式をどの程度保有しているのかが記載されています。
非上場株式の場合は、証券会社は管理していないので、株券発行会社に問い合わせる必要があります。
上場株式なら取引先の証券会社に連絡を
上場株式は、証券取引所に上場して、証券取引所で取引されている株のことです。
被相続人が上場株式を保有していたかどうかは、さまざまな書類で調べることができます。
書類一例:
- 証券会社の取引報告書
- 証券会社の取引残高報告書(評価報告書)
- 証券会社の特定口座年間取引報告書
- 株の取引口座を開設した際の控え
- 株を発行している企業の目論見書※実際に株を所有しているかは不明
証券会社と対面や電話を使って株の取引をしていた場合には、相続人が営業マンの姿を見たことがあるかもしれませんが、最近では多くの証券会社が株のインターネット取引を採用しています。
パソコンのメールやインターネットブラウザの閲覧履歴、スマートフォンやタブレットの株取引アプリの有無などを調べることも重要です。
インターネット上の取引ページや株取引アプリなどのログインができなくても、証券会社が分かれば電話などで問い合わせることができます。
ログインができれば、取引残高報告書(評価報告書)を確認することで、保有する株式の種類や数が分かります。
書類やデジタルデータが見つからなかった場合でも、被相続人が保有していた株券の発行会社が分かっている場合は、株券発行会社が株主名簿管理人を任せている信託銀行に問い合わせて調べることができます。
紙の株券を見つけた場合にも、株券発行会社が株主名簿管理人を任せている信託銀行に問い合わせます。
紙の株券も信託銀行の特別口座で管理が行われているからです。
株を保有している人は、周囲に株を保有していることだけでも伝えておけば、相続財産に株が含まれる可能性を示しておくことができます。
遺言書がないか確認する
遺言書は、被相続人が生前に亡くなった後の財産分割方法について記したものです。
相続は、遺言書がある場合は、基本的には遺言の内容に従うことになるので、相続人は、まずは被相続人の残した遺言書を探すことから始めます。
遺言書の存在を被相続人から聞かされていて、どこに保管してあるか伝えられていればいいですが、そうでなかった場合、自宅などを探し回らなければなりません。
金庫やタンスの中、仏壇など、ありとあらゆる場所を大捜索する必要があります。
相続人となる人が、被相続人の生前に遺言について尋ねる機会があれば、それとなく聞いておくといいですし、年齢を重ねた方が遺言書を作成されたのなら、自分の死後に相続人を困らせないよう、遺言書のありかを伝えておくといいでしょう。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つがあります。
- 自筆証書遺言:被相続人が自筆で作成
- 公正証書遺言:公証人に作成を依頼
- 秘密証書遺言:被相続人が作成後、封をしてから公証人に確認をしてもらう
秘密証書遺言は、遺言書の内容を公証人に知られずに遺言書の存在を証明してもらうことができますが、あまり多く用いられません。
3つの遺言書の中で、家庭裁判所での検認が必要なのは、自筆証書遺言と秘密証書遺言です。
検認の手続きとは、家庭裁判所が遺言書を開封して用紙、日付、筆跡、訂正箇所の署名や捺印の状況や、遺言書の内容を確認し、検認調書を作ることです。
検認の当日に相続人や利害関係者が立ち会うことができなかった場合は、家庭裁判所での検認手続きが終了したことが通知されます。
遺言が見つかったからと勝手に遺言書を開封したり、家庭裁判所の検認手続きを経ずに遺言に沿って遺産分割を進めてしまったりすると罰則があり、5万円以下の過料に処せられます。
公正証書遺言は、平成元年以降に作られたものであれば、日本公証人連合会による「遺言書検索システム」で検索することができます。
このシステムには日本全国の公証役場で作成された公正証書遺言が登録されていますので、近くの公証役場から日本全国の公正証書遺言を検索することができます。
財産分与について書かれた大切な遺言書を検索するものですので、手ぶらで公正証書役場へ行っても検索することはできません。
以下のような書類を持参することが必要です。
- 被相続人の戸籍謄本(死亡の記載のあるもの)
- システムの利用者が相続人だと確認できる戸籍謄本
- システムの利用者の印鑑証明書(発行後3カ月以内のもの)
- 実印
- システムの利用者の本人確認資料(免許証など)
システムを利用し、遺言書を請求する人に代わって代理人がシステムを利用する場合には、以下の書類が必要です。
- 死亡の記載がある被相続人の戸籍謄本
- 遺言書を請求する人が相続人であることを確認できる戸籍謄本
- 遺言書を請求する人の印鑑証明書(3ヶ月以内)
- 遺言書を請求する人から代理人への委任状(請求者の実印を押印)
- 代理人の本人確認資料(免許証など)
遺産分割協議とは?
株式は現金や預貯金と異なり、相続人全員に共有されます。
遺産分割協議をして相続した人が名義変更をする必要があります。
売却して処分する場合も遺産分割協議をして名義変更の手続きをしなければなりません。
上場株式の評価額は東京証券取引所等で公表されている株価に基づいた取引残高報告書により確認できます。
非上場株式の場合は非常に複雑な計算が必要ですので、専門の弁護士や税理士等の専門家へ相談することをおすすめします。
名義書換手続き
遺産分割協議の末に、株式を相続した相続人は、株券発行会社に名義書換の手続き(名義変更)を行います。
通常は、会社が委託している株主名簿管理人である信託銀行や証券代行会社の窓口にて行われます。
株券が証券会社の保護預かりとなっている場合は、証券会社から株券を出庫して名義書換をします。
もしくは、出庫はせずに証券会社を通じて名義書換をするやり方もあります。
遺産分割協議が成立した場合の株式の名義変更手続きに必要な書類は以下の通りです。
▼株式の名義書換の際に必要となる書類
- 株券(株券が発行されていない場合は不要)
- 相続による株式名義書換請求書
- 名義書換をして新しく株主になる人の株主票
- 共同相続人の同意書または遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)
▼遺言書が存在する場合の株式の名義変更手続きに必要な書類
- 遺言書(検認済みのもの)
- 被相続人の戸籍謄本
- 移管される相続人の印鑑証明書
- 証券会社指定の各種書面
通常の場合、上場株式の名義書換は信託銀行や証券会社へ届け出れば、株券発行会社への通知は必要ありません。
しかし、非上場株式の場合は直接、株券発行会社へ問い合わせる必要があります。
被相続人が有していた株券が相続開始後に見つからない場合、株券を紛失した場合は、まずは株券発行会社に連絡します。
「株券喪失登録簿」に「株券喪失登録簿記載事項」を記載することを請求します。
株券喪失登録簿に登録されると、1年後に株券が無効となり、名義書換の請求をすることが可能です。
未上場株式を相続した場合の名義変更手続きは、定款で株式に譲渡制限をつけていることが多いです。
相続による株式の移転の場合は、譲渡について会社の承認を得る必要はありません。
定款で定めがある場合は、会社は株式の相続人に譲渡制限株式の売渡請求をすることができます。
上場と非上場の相続方法の違い
上場株式か非上場株式により手続きが異なります。
前述の通り、上場株式の名義書換は、信託銀行や証券会社に届けるだけで問題ありません。
非上場会社の場合は直接株券発行会社へ問い合わせましょう。
上場株式の場合の相続方法は、まずは被相続人が証券口座を開設した証券会社に被相続人の死亡を伝えます。
所有していた株券一覧と相続手続き依頼書を発行してもらい申請します。
上場株式の場合の相続に必要な書類を揃えて、証券会社に申請してください。
▼上場株式の場合の相続に必要な書類
- 相続による株券名義書換依頼書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
- 相続人全員の戸籍謄本または戸籍全部事項証明
- 相続人の実印
- 相続人が複数いる場合のみ、遺産分割協議書または相続人全員の記載がある共同相続人同意書
- 株券のコピー
- 証券会社の預かり証明書
- 家族全員の直近5年間の取引詳細(配当金通知)
非上場株式の場合は、非上場株式発行会社に直接問い合わせて相続手続きを行います。
上場株式の場合の相続に必要な書類と同じものを揃えて、直前3年の法人税の申告書一式と直近5年の株式名簿も用意します。
相続放棄をする場合は、被相続人が死亡した日から3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の申し立てを行います。
被相続人が所有していた株式を紛失してしまった場合は株券発行会社に連絡をして、株券喪失登録簿に「株券喪失登録簿記載事項」を記載することを請求します。
上場株式の相続方法
上場株式の相続方法は、被相続人が証券口座を開設している証券会社に死亡した旨を伝えます。
被相続人が所有していた株券の一覧と相続手続き依頼書を発行してもらい、以下の書類を提出します。
▼上場株式の相続に必要な書類
- 相続による株券名義書換依頼書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 遺産分割協議書(不要な場合もあります)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の戸籍謄本
上場株券は電子化されているため、相続によって株券を受け取る場合は証券口座が必要です。
株式を相続する相続人が証券口座を持っている場合は、その口座に名義書換をした株式を移す手続きが必要です。
名義書換が済めば、自動的にその名義人の証券口座へ株式は移管されます。
株券発行会社へ株主名簿の名義書換を請求する必要はありません。
株式を相続する相続人が証券口座を持っていない場合は、名義書換の請求と同時に証券口座を開設する手続きが必要です。
開設方法は、直接証券会社の窓口に行く、インターネットを利用して申し込む方法があります。
インターネットからの申込みの場合は数日後に郵送されて来た書類に必要事項を記入押印し返送する流れです。
必要書類が揃っている場合は、窓口での手続きの方が早く終わります。
相続した株を売却する場合も、相続人の証券口座に移してから処理されます。
まずは、被相続人の証券口座のある証券会社へ証券口座を持っている必要があります。
相続人の証券口座ができて、名義書換の済んだ株式が相続人の証券口座へ移管されたら、売却しても保有しても自由です。
非上場株式の相続方法
非上場株式の相続方法に証券会社は関係ないので、非上場株式発行会社へ直接手続きを行います。
非上場株式発行会社には株主名簿が保管されているので、相続人全員で話し合い合意を得てから、株主名簿の書換を進めてください。
相続人全員の同意後は、相続による株主名簿の書換はいつでも可能です。
非上場株式でも多額の相続税が発生する場合は、税務署が株主名簿を確認します。
その際は、税務署に説明ができるように株主名簿を確認しておく必要があります。
譲渡制限付株式の相続方法
非上場株式会社の場合、譲渡制限付株式を発行していることが多いです。
譲渡制限付株式であっても、相続人は相続によって当該株式を相続されます。
本来、株式は財産的価値を有するものが対象となります。
しかし、譲渡制限付株式の場合、相応しくない相続人が株主となるのを防ぐため、株式の売渡を請求できる規定があります。
会社から株式の売渡請求を受けた場合、譲渡制限付株式の相続人は株式そのものを相続することはできません。
株式を相続して相続税が払えない際の対処法
相続税は現金で納付することが前提となります。
ただ、相続財産に多くの株が含まれていて、納税のための現金の準備が困難なケースもあることでしょう。
相続税は相続が開始した日(被相続人が死亡した日)から10ヶ月以内に納税しなくてはならず、期限内に支払いを行わない場合、延滞税や無申告加算税が課されてしまいます。
このような事態に陥らないためにも、相続した株やその他の資産を売却して現金を用意する方法、相続放棄という選択を行う方法など、相続税の支払いが困難な場合の具体的な対処法についてご紹介していきます。
相続した上場株式を売却して現金化する
相続した株が上場株式である場合、その株を売却して株を現金に換え、相続税の支払いに充てることが可能です。
相続によって取得した上場株式を売却するには、次の2つのやり方があります。
・各相続人がそれぞれ証券口座を作り、相続した株を口座に移管した上で、各々の好きなタイミングで売却する
・相続人の代表者が株の名義書換、売却を行い、株を現金化した上で、相続人それぞれの相続分に応じて現金を按分する
各相続人がそれぞれ証券口座を作って株の売却を行うやり方は、手続きが煩雑になること、売却のタイミングによっては相続人の間で売却金額に差が出てしまうという事態も考えられることなど、デメリットがあります。
一方で、相続人の代表者が一括して株の売却を行う方法ならば、これらの問題は解決可能です。
株の売却について、相続人同士の間で同意が得られているのであれば、相続人の代表者が一括して株を売却する方が円滑に株を現金化し、相続税支払いの元手として備えることが可能であると言えます。
相続した非上場株式を売却して現金化する
非上場株式を相続によって取得した場合は、上場株式とは違って証券会社などを通じて市場で売却することができません。
非上場株式の売却には、自ら買い手を見つけて売却するか、株券発行会社に買取を依頼するか、という2つの方法のいずれかを選択することになります。
ただし、譲渡制限が付いている株の場合は、株券発行会社の承認を得なければ売ることができないので注意しましょう。
譲渡制限のない株で、自分で買い手を見つけられたら、次に株券発行会社に対して株式譲渡承認請求を行います。
請求を受けた会社は、その請求を承認するか、会社で株を買い取るか、他に買受人を指定するか、という選択をします。
株式譲渡請求が株券発行会社に承認されると、株の売り手と買い手との間で売買についての協議を進めることになります。
株の価格や支払い方、取引のタイミング等が具体的な協議事項です。
このように、非上場株式を売るには上場株式売却の場合と比べて、自身で買い手を見つける、売却価格を買い手との間で協議する等の手間が発生します。
ただ、自身で買い手を見つけさえすれば、売却によって株を現金に換えることが可能ですから、非上場株式の売却も相続税が払えない際の対処法として検討してみましょう。
その他の資産を売却して現金化する
相続財産に株以外の資産も含まれるケースでは、株以外の資産を売って現金に換え、相続税の支払いに充てるという方法もあります。
売却が可能な資産の代表的なものに不動産が挙げられます。
不動産を売却する際、まず必要となるのが、不動産の名義変更(相続登記)です。
売却予定の不動産がある住所を所轄する法務局で、不動産の名義を相続人に変更する手続きを行いましょう。
抵当権等の権利が付随する不動産ならば、その権利を抹消する手続きもあわせて行う必要があります。
名義変更等の手続きが完了したら、不動産業者を通じて売却を進めましょう。
相続税には、相続が開始した日から10ヶ月以内という納付期限があることは上述の通りですが、不動産の売却には時間がかかる可能性もあり、納付期限直前での売却となると条件が不利になることも考えられます。
不動産を売却することで相続税の納付に備えるなら、早めに検討を開始し、少しでも有利な条件で売却できるようにしましょう。
また、不動産を売却すると譲渡所得が発生することから、所得税と住民税が課税されることもあります。
不動産の売却時にかかる税金も考慮して売却価格を設定し、納税資金を用意することが必要ですが、一定の条件を満たせば「相続税の取得費加算の特例」の利用が可能です。
この特例は、相続により取得した不動産や株などを、相続が開始した日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できるというものです。
この特例を受けることで税金を低く抑えられますので、要件を満たすなら利用を検討してみましょう。
相続放棄をする
株を相続して相続税の支払いが困難になった場合の対処法の4つ目は、相続放棄です。
相続できる財産をすべて相続しないという選択を「相続放棄」といい、負債などマイナスの財産だけでなく、現預金や不動産を含むプラスの財産も相続する権利を放棄します。
そのため慎重な選択が求められますが、評価額の高い非上場株式を相続したために相続税が高くなってしまう場合は、有効な手段の一つとなり得るでしょう。
相続放棄を行うには、まず被相続人(亡くなった方)の最後の居住地を管轄する家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
手続きに必要なものは下記の通りです。
・被相続人の戸籍謄本や住民票または戸籍の附票
・相続を放棄する者の戸籍謄本
・相続放棄申述書や収入印紙等
裁判所に書類を提出すると、「照会書」が送られてきますので、記載された質問に回答し、返送します。
照会書の内容確認後、裁判所から問題ないと判断されれば、1週間~10日程度で申述を受理した旨が記された「相続放棄申述受理通知書」が届き、この受理通知書の到着をもって手続き完了となります。
ここで注意すべきなのは、相続放棄の申請には期限があり、「自身の相続開始を知ってから3ヶ月以内」に申請の手続きを行う必要があるということです。
期限を過ぎてから申請を行うと、場合によっては裁判所に受理してもらえないケースもあるため、早めに手続きを行うとともに、期限を過ぎてしまいそうな場合は専門の税理士や弁護士に相談すると、円滑に手続きを進めることができ安心です。
先にも述べましたが、一旦相続放棄の手続きを行ってしまうと、現預金などのすべての財産を相続できなくなります。
非上場株式を相続したくない場合、まずは株券発行会社に買取を請求し、買取を拒否された場合などに、最終的な手段として相続放棄を考えてみることをおすすめします。
株券が見つからない場合の対処法
株の取引を行っていたことが分かっていて、何の痕跡も見つけられなかった場合には、証券保管振替機構に登録済加入者情報の開示を請求してみましょう。
被相続人が株を保有していた場合は、証券保管振替機構に加入者として登録されており、登録済加入者情報を確認すれば、被相続人が株の口座を開設していた証券会社が分かります。
譲渡制限付株式の場合は?
株は自由に譲渡できるものではありますが、定款で株を譲渡するには承認が必要だと定めていれば、譲渡に制限を設けることができます。
こうした株のことを「譲渡制限株式」といいます。
この譲渡制限株式は、発行した企業に不都合な第三者へ株式が譲渡されるのを防ぐことができるので、多くの中小企業で採用されています。
譲渡制限株式を譲渡する場合は、発行企業の取締役会や株主総会、定款で定めている場合は代表取締役などの承認を得る必要があります。
しかし、譲渡制限株式を持っている株主が亡くなり、相続が発生する場合については、株を発行した企業の承認を得ずに、譲渡制限株式は相続人へ相続されます。
被相続人の生前に株式を譲渡して現金化した方がお得なケースもある
被相続人が企業を経営し、株を保有していた場合に買い手に株を譲渡することで経営を承継させることができます。
これを株式譲渡といい、M&Aの一つの手段として多くの中小企業に取り入れられている手法です。
経営者は、対外的には廃業のように大きな影響を与えることなく引退できることに加え、取引先への影響も少なく、従業員の雇用を存続させてもらえる可能性もあります。
経営者には株と引き換えに現金を手にできるというメリットがあります。
まとめ
今回は、株式の相続税、株式(上場、非上場)の評価方式や計算方法についてご紹介しました。
株を相続するには、株価の調べ方や評価の方法の専門的な知識が必要です。
株式の計算方法がわからなく悩んでいる方は、弁護士や税理士の専門家に依頼するのがオススメです。