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2019年2月14日 木曜日

有価証券の相続税評価方法と具体的な計算例

相続税における財産評価は複雑で難しいのですが、中でも有価証券は多くの種類があり、迷うかもしれません。

有価証券は種類によって評価方法と計算方法が異なります。

自分で計算するのは非常に複雑で難しいので、税理士や弁護士の専門家に依頼すると安心です。

今回は、有価証券の相続税評価方法と具体的な計算例について解説します。

有価証券とは?

有価証券とは、それ自体に財産的価値を有する株式・債券・手形・小切手などを呼びます。

金融商品取引法に列挙されている証券、国債、地方債、社債や株券、投資信託の受益証券などが挙げられます。

有価証券を譲渡すると、有価証券の持っている財産的権利を移転させることができます。

有価証券は、証券の持つ財産的権利を小口に分けることも可能です。

一般的に有価証券といえば、資本証券のことを指しますが商法上の有価証券は全部で3種類あります。

 

▼有価証券の種類

⑴資本証券…株式、社債券

⑵貨幣証券…手形、小切手

⑶物財証券…運送証券、倉荷証券

有価証券は国や企業の資金調達手段として利用されており、一般に一定の単位で売買できるため、企業や個人の投資対象となっています。

株式、社債券などは、一定額の資本の提供とそれに基づく諸権利を請求する権利を表すため、資本証券と呼ばれます。

商品やサービスに対する権利を表す証券や、手形や小切手など金銭の支払いを請求する権利を表す証券も、有価証券に含まれます。

有価証券には証券に価値がある「有価証券」と、証券そのものには価値のない「証拠証券」にも分けられます

実際に、簿記・会計上で有価証券として取り扱われるのは税法上の有価証券のみです。

 

▼簿記・会計上で有価証券として取り扱われる証券

  • 国債証券
  • 地方債証券
  • 社債券
  • 日本銀行等の発行する出資証券
  • 株券
  • 投資信託の受益証券
  • 貸付信託の受益証券

他にも、税法上でのみ有価証券となる証券は、合名会社、合資会社、合同会社の社員の持分、協同組合等の組合員の持分が挙げられます。

証券取引法上は有価証券ではありませんが、税法上は有価証券として扱われます。

有価証券の相続税評価方法

有価証券の相続において、最も難しいのが株式評価です。

株式の相続税を計算する前に、経営者が所有している株式が相続・贈与でどのくらいの評価額になるのか知りましょう。

株式には、市場取引相場がある「上場株式」と、上場されていない会社の株式「非上場株式」があります。

それぞれの計算方法は異なるため、ここから詳しく見ていきましょう。

上場株式の評価方法

相続税を課税する際、上場株式か非上場株式により評価方法が異なります。

上場株式は、金融商品取引所に上場されている株式のことで、自分で評価することは比較的簡単です。

相続税の財産評価は、相続した時点での時価で評価されるのが原則です。

そのため、相続開始時は被相続人が亡くなった日の終値(取引の最終価格)が評価額となります。

上場株式の評価方法は、株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期の最終価格によって評価します。

課税時期とは、被相続人が亡くなった日や贈与を受けた日のことです

被相続人が亡くなった日を基準として以下の4つの数値を算出し、その中で最も低い金額を評価額とします。

 

▼上場株式の相続税評価

①前々月の終値の月平均値

②前月の終値の月平均値

③当月の終値の月平均値

④死亡した日の終値

市場取引相場のある株式は日々価格が変わるのが特徴です。

たまたま株価が急上昇して、ストップ高となった日に被相続人が死亡することもあり得ます。

そうなると相続人は損失が大きくなるため、調整できる制度が設けられています。

上場株式は前々月まで遡って平均値で比較できるなめ、万が一、亡くなった日の終値が急上昇してもリスクはありません。

複数の銘柄を所有している場合は、一つ一つ株価を見る必要があります。

上場株式の評価額を調べるには、それぞれの証券取引所の月間相場表で確認できます

証券会社にて「残高証明書」を発行してもらえるので詳しくは証券会社に相談してみましょう。

非上場株式の評価方法

非上場株式は取引相場のない株式のため、はっきりした市場の取引価格がなく、未公開株とも呼ばれています。

非上場株式を相続や贈与などによって取得した株主は2種類に区分されます。

一般的に非上場株式の評価をするためには、「原則的評価方式」か「特例的評価方式」の配当還元方式で評価します。

日本の株式会社のうち上場している企業は全体の1%未満ですので、株式はほとんど非上場と言えます。

相続人にとって、非上場株式がどのくらいの価値があるのかを判断するのは、客観的な評価は難しいと言えます。

非上場株式を評価するためには、税理士や弁護士といった専門家に相談するほうが最善策です。

 

▼非上場株式の相続税評価の基準

相続で株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主なのか、それ以外の株主等かによって計算方法が変わります。

主に原則的評価方式、特例的な場合は評価方式の配当還元方式により評価します。

 

▼非上場株式の評価方法

非上場株式の相続税における評価方式は、主に3つの方法があります。

まずは、相続・贈与された場合の相続税がどのくらいになるのかを確認します。

「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」は、原則的評価方式となります。

非上場株式を取得するのが同族株主等だった場合に限られます。

「配当還元方式」は、株主が非上場株式を評価する際に使われます。

①類似業種比準方式(原則的評価方式)

類似業種比準方式は、大企業の非上場株式に用いられる評価方式です。

同業他社の株価をもとにして、評価する会社の1株当たりの配当金額、利益金額、純資産価額を割り出して評価します。

②純資産価額方式(原則的評価方式)

純資産価額方式は、株式の取得者が経営支配権を持つ同族株主などの場合に評価する方法です。

会社の総資産と負債額から総資産の価額を評価して、法人税額に相当する金額を引いた差額により評価します

純資産額を株式総数で割ったものが評価額となります。

③配当還元方式(特例的評価方式)

会社の過去の配当実績を基準として評価額を算出する方法です。

非上場株式を発行した会社から受け取る株主配当金の金額に基づき、1株当たりの評価額を計算する評価方式です。

利付公社債の評価方法

利付公社債とは、国や地方公共団体、事業会社などが一般投資家から資金を調達するために発行する債券です。

利付公社債は、一定の期日に定期的に利息が支払われ、償還日になると券面金額が払い戻されます

従来は、紙の債券が発行されており、利払いは債権についている利札を切り取って金融機関で受け取っていました。

現在は、電子化されており現物は発行されず、投資家は金融機関の口座を通して自動的に利払い日に利息を受け取ります。

公社債には、利払いがない代わりに割引発行される割引債があります。

割引債は割引価格で発行されて、割引発行金額と償還日に支払われる券面額の差額が利息に当たります。

 

▼利付公社債の相続税評価方法

公社債は、銘柄ごとに券面額である100円当たりの単価で市場価額をもとに評価します。

利付公社債の評価方法は種類により評価方法が異なります。

 

▼金融商品取引所に上場されている利付公社債の評価額

評価額=最終価額+(既経過利息-源泉所得税相当額)×券面額÷100円

課税時期の券面額100円当たりの最終価額を確認します。

前回利払い日から相続開始日までの券面額100円当たりの既経過利息を足します。

 

▼日本証券業協会によって売買参考統計値が公表されている銘柄

評価額=平均値+(既経過利息-源泉所得税相当額)×券面額÷100円

日本証券業協会によって売買参考統計値が公表されている銘柄は上記の評価方法となります。

日本証券業協会が公表している銘柄ごとの「最終価額」を「平均値」に変えて評価に使います。

国庫短期証券・中期国債・長期国債などの国債、都道府県債・市債などの地方債、政府保証債、住宅金融公庫債、社債が挙げられます。

投資信託の評価方法

投資信託(ファンド)は投資家から集めた資金を一つにまとめて、プロの専門家(ファンドマネージャー)が運用します

運用して得た利益は投資額に応じて、売却益や分配金として投資家に分配されます。

親族に資産運用をしている人が亡くなった場合、投資信託を相続することがあります。

投資信託は金融商品の一種ですが、株式の相続とは異なり相続時の評価方法や必要な手続きが変わります。

投資対象資産には、国債や社債などの公社債を中心に運用する「公社債投資信託」と株式を運用する「株式投資信託」があります。

 

▼投資信託の相続税評価

投資信託の残高証明書は相続税の計算資料として使用できます。

ここからは、相続時の投資信託の評価を見ていきましょう。

被相続人の取得時の取得価額は売却するときに必要なもので、相続税の評価には関係ありません。

中期国債ファンド、MMFなどの日々決算型の投資信託の場合は以下の算式により計算した金額によって評価します。

1口当たりの基準価額×口数+再投資されていない未収分配金(A)-(A)について源泉徴収されるべき所得税相当額-信託財産留保額および解約手数料(消費税に相当する額を含む)

一般的な投資信託の場合は、以下の算式により計算した金額によって評価します。

課税時期の1口当たりの基準価額×口数-課税時期において解約請求等をした場合に源泉徴収されるべき所得税相当額-信託財産留保額および解約手数料(消費税に相当る額を含む)

ETF、REITなど上場している投資信託の場合の評価は上場株式に合わせて以下の4つのうち最も低い価額で評価します。

⑴課税時期の終値

⑵課税時期の属する月の毎日の終値の平均額

⑶課税時期の属する月の前月の毎日の終値の平均額

⑷課税時期の属する月の前々月の毎日の終値の平均額

課税時期の終値がない場合は、課税時期前後で最も近い日の値となります。

以上のように、被相続人が保有していた投資信託の種類により評価方法が異なります。

貸付信託の評価方法

信託財産の運用方法や運用対象が、信託契約によって指定されているものを指定金銭信託と呼びます。

貸付信託は、貸付信託契約により受託者が元本を保証しており、設定日から1年以上経過した場合には、受益証券の買取り制度により買い取りが行われます

貸付信託受益証券とは、信託財産を運用することより得られた利益を受けることができる権利を表示した有価証券です。

貸付信託受益証券には、信託期間が2年と5年のものとがあります。

貸付信託受益証券は、その証券を発行した信託銀行などが買い取った買取価格が評価額です。

貸付信託受益証券の評価方法は以下の方法により評価されます。

元本の額+既経過収益の額-(既経過収益の額につき源泉徴収される所得税額)-買取割引料

貸付信託設定日から1年を経過していない貸付信託の受益証券の価額は、この算式に準じて計算した金額が評価額となります。

有価証券の相続税評価の計算例

▼投資信託の相続税評価額の計算例

相続開始日時点の1口当たりの基準価額×口数―(相続開始日に解約した場合に源泉徴収される所得税の額)―(信託財産留保額及び解約手数料)

1万口あたりの基準価額:11,000円

1万口あたりの取得単価:10,000円

保有口数:100口

源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額:15,315円{=(11,000円-10,000円)×100×15.315%}

信託財産留保額および解約手数料:なし

この場合の評価額は、11,000円×100口-15,315円=1,084,685円です。

上場株式の相続税評価額は、次の4つの時価の内、最も低い株価を選択します。

  • 相続開始日の終値
  • 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
  • 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
  • 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

まとめ

今回は、有価証券の相続税評価方法と具体的な計算例について解説しました。

有価証券は種類によって評価方法と計算方法が異なるため、ケースバイケースです。

有価証券の評価や計算は非常に複雑なため、相続財産に有価証券がある場合には、専門の税理士にご相談することをおすすめします。

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監修者太田諭哉
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公認会計士・税理士
自身の親族の相続を経験し、複雑で難解な手続の数々を特別な知識がなくても簡単にできる方法を提供しようと思い立ち、『すてきな相続』を設立。
一般家庭の相続や申告のサポートはもちろん、会社の相続ともいえる、中小企業の事業承継にも早くから取り組んでいる。
日本公認会計士協会東京会渋谷地区会長。

執筆
「小説で読む企業会計」(法学書院)
「公認会計士試験合格必勝ガイド」(法学書院)
「オーナーのためのM&A入門」(カナリア書房)
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