2019年1月30日 水曜日
土地(不動産)の相続では登記が必要!手続きの仕方や流れ
土地を相続すると相続登記をしなければいけません。
しかし、相続登記は申請さえすれば良いというものでなく、多くの必要な書類を集め、適切な流れで行う必要があります。
今回は、土地を相続する際に相続登記を正しく行うために、手続きの仕方や流れを説明していきます。
目次
相続のおさらい
不動産を相続すると耳にして「うちは土地を持っていないから」「土地や建物のような不動産を売却した」などと思う方がいるかもしれません。
しかし、土地は持っていないと思っていたけれど土地を売ったつもりが共有持ち分の土地があった、などということが明らかになることがあります。
そのタイミングは相続が終わって土地の固定資産税の支払い帳票が届いた時かもしれません。
相続が開始されている方は今すぐ、いつか相続をすることがあるかもしれないという方は今後のご参考に、本記事では相続の中でも、土地や建物の不動産の相続について簡単におさらいしていきます。
相続とは
被相続人が持つ財産を誰かが受け継ぐことを相続といいます。
被相続人の財産と一口で言っても、預金や不動産などのほかに、借金などの負の債権も含まれます。
被相続人の財産の権利・義務等は、被相続人と関係のある法定相続人に移転されます。
法定相続人ではない人にも、遺言書などで指定すれば、財産を受け継がせることができます(遺贈)。
遺産相続の分配割合は、民法によって定められた法定相続人と、その法定相続分が定められています。
法で定められた割合とは違った割合で遺産を分けたい場合には遺言書などが必要です。
法定相続人は、遺言書に法定相続人以外が指定されていても、遺留分という最低限得られる財産が保障されています。
相続資産となるもの
相続税の課税対象となる財産は、土地や建物などの不動産をはじめ、現金や銀行預金(貯金)、株式などの金融財産、自動車や貴金属、会員権など財産として分かりやすいものから、著作権や商標権、特許権などのほか、売掛金や損害賠償請求権などの債権者としての権利など、保有している権利も含みます。
相続が発生する時には、さまざまな場所にある財産の情報を収集して集約し、総額を算出する必要があります。
不動産の中には所有が明らかなものがありますが、共有持ち分など、無自覚で所有している土地や建物もあります。
被相続人が購入していた海外の土地などもあるかもしれません。
相続資産についてしっかり調べてリストアップし、探していくといいでしょう。
相続の流れ
相続開始となったら、まず、遺言書の有無を確認します。
相続財産の相続人や相続登記申請の手続き、そのための必要書類が異なります。
「遺言は残していない」と聞いていた場合でも、気持ちが変わって作成しているかもしれませんので、しっかり探しましょう。
公証役場には公正証書遺言を検索するシステムがあり、便利です。
次に、被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本等の書類を集め、家系図を作成し法定相続人を確認します。
相続する遺産が多い場合には、相続開始から10カ月以内に相続税の申告をします。
債務が多い場合には相続放棄ができますが、これは家庭裁判所に相続発生から3カ月以内に相続放棄を申し出ます。
遅くともこの時期までには債務を含む相続財産を把握しておく必要があります。
その後、遺産分割協議を行います。
土地を相続する場合の相続税について
相続税は相続する全財産の総額にかかる税金です。
土地も相続税がかかる資産となりますが、総額を出すにはこの土地の価格を把握しなければなりません。
土地の価格の求め方は、
・相続する土地が位置する場所によって、路線価を使用する計算式か、倍率方式という計算式になります
(一般的に市街地にある土地は路線価、それ以外の田・畑・山林・牧場などの土地は倍率方式を使用して計算されます)
・相続する土地の形によって補正率がかかるなど、かなり難しく、税理士によって違う価格となることもあります
また、路線価は1年に1回更新されたり、その時々で評価額が変わるということも発生します。
相続税の申告の際に、なぜこの土地はその評価額になったのか、根拠となるものを示す必要があります。間違いがあると受け付けてもらえなかったり、のちに間違いが発覚して追加で罰金が発生するといったケースも考えられるので、専門家に依頼することなども含め、早いうちから検討しておくとよいでしょう。
相続税がかかるかどうかの大まかな計算については、『土地の固定資産税評価額×1.14』で計算することができます。
固定資産税評価額については、毎年、固定資産税評価明細書が送られてきているはずなので、そちらの土地価額を参考にしましょう。
しかし、この方法はあくまで概算のため、相続税の申告が必要な場合は正確な金額で申告する必要があります。
専門家に頼むこと、専門家への依頼費用も準備しておきましょう。
土地を相続する際に起こりやすいトラブル例
前項で説明した評価額の算出に始まり、権利関係の確認と変更手続き、相続後の運用方法など、遺産に不動産が含まれる場合は、相続手続きがとにかく複雑になります。
複雑であるがゆえにトラブルも起こりがちですが、被相続人が生きている間に関係者でよく話し合い、準備や対策をしておくことで避けられることも多くあります。
3つの例から、その原因と対策を考えてみましょう。
相続対象の土地が複数あり、相続人同士で揉める場合
相続対象の土地が複数あり、相続人も複数いる場合では「同じような価値の土地が2つあるが、相続人は3人いる」「土地は2つあり相続人は2人だが、資産価値はかなり差がある」など、全員が納得できる形で平等に分割することが難しいケースがよくあります。
このようなケースでは、すべて売却して現金化したうえで相続人に配分する方法がもっとも平等で現実的です。
ただし、土地の状態のまま相続したい相続人がいる場合などは話し合いが難航します。
相続人の人数に対して土地が足りないというケースであれば、土地を相続した人が相続できなかった人へ相応の代償を現金で支払う方法を取ることもできるでしょう。
また、「分筆」といって一つの土地を切り分け、それぞれ別の名義人が相続することも可能です。
この方法については、切り分けた結果、土地の価値が大幅に変わったり、面積が小さすぎて活用できないなどの問題が起こらないよう計画的に行うことが重要です。
被相続人が土地を貸しており、そこに家を建てている人がいる場合
これは、被相続人が「地主」として、「借地人」である他人に土地を貸し、借地人がそこに家を建てて住んでいる、というケースです。
相続人は「貸宅地」を相続することで、新たに地主となるわけです。
貸宅地であっても土地を相続したことになるため相続税が発生します。しかし、借地人が家を建てているために売却できず、地代(使用料)が安いため相続税を賄えないといった問題が発生することがあります。
相続税対策のひとつとして、相続税の「物納」を検討することもできます。これは、現金ではなく土地という「モノ」で税金を支払うという方法です。
手続きがかなり煩雑で時間がかかるため対応できる専門家も限られてきますが、どうしても相続税を支払えないという場合は一考の価値があります。
ただ、そもそも貸宅地は資産性・換金性・収益性が低い傾向にあり、有効活用しづらい資産であると言われています。このため、できれば被相続人が生前のうちに借地権を買い戻すなどして整理しておくことが望ましいでしょう。
相続する土地の価値が高く、相続税を支払う現金がない場合
家などの建物の価値は、1年毎に減っていきます。建物は劣化していくため、価値の減少は避けられません。数十年も経てばほとんど価値がなくなることもあります。
ところが、同じ不動産でも土地は劣化しないため、時が経てば必ず価値が下がるというわけではありません。
その価値は立地などによる利便性や周辺環境、形状、道路との接し方などによって決まります。また、人口減少やデフレなどの社会情勢に左右されることもあり、常にその価値が変動する資産です。
そのため、いざ土地を相続するとなった時に調査したところ、かつて取得した時よりも価値が上がっているというケースもあるでしょう。
当初はそれほど周辺地域の開発が進んでいなかったエリアに様々な商業施設や住宅が建設され、道路や線路が走り、駅が新設されたりすると価値が大幅に上がることもあり得るのです。
土地の価値が上がること自体は良いことですが、当然ながら相続税も高額になります。
このとき、手放してもよい土地であれば売却して現金をつくることで相続税に充てることも可能ですが、手放せない場合は相続税の支払いに苦慮することとなります。
価値の高い土地を維持したまま相続税を支払っていくためには、土地を活用して何らかの事業を行い収益をあげることが必須といえるでしょう。
土地を複数人で相続する場合の相続方法
土地などの不動産を複数の相続人で相続する場合、主に以下の4つの方法があります。
相続の状況に合わせてもっとも適切なものを選択するようにしましょう。
現物分割
不動産そのものを複数に分割し、相続人それぞれに振り分ける方法です。
相続したのがある程度の面積のある土地で、分割後も何らかの形で活用する手段がある場合は検討してもよいでしょう。
または先述した複数の土地があるケースにおいて、稀ではありますが価値がだいたい同じ不動産が相続人の数だけあるような場合も可能でしょう。
分割できない一軒家や、分割することで面積が極端に小さくなってしまい利用方法がなくなるケースでは不向きです。
代償分割
分割しづらい一軒家や、比較的小さな土地などの不動産を相続する場合に、不動産をそのまま相続した相続人が、他の相続人に相応の現金で代償を支払う方法です。
不動産を受け取る人に代償の支払い能力があることが前提となります。
不動産をそのまま相続したい相続人がいる一方で、現金で相続したい相続人がいる場合などは選択肢となりえるでしょう。
換価分割
相続した不動産を売却するなどして現金化したうえで分割する方法です。
そのままでは分割しづらい、維持管理することが難しい、または、不動産を受け取りたい相続人がいないなどの場合は有効な手段といえるでしょう。
先述したような価値の高い不動産が遺産に含まれていて、いずれの相続人も不動産の維持管理、相続税の支払いができないという場合もこの方法が現実的です。
あらかじめ、売却した場合にどれほどの価格で売れるのか、買い手があるのかを確認しておく必要があります。
共有
不動産はそのままの状態で、複数の相続人による共有名義として相続する方法です。
相続人の共有財産となるため、相続人それぞれがその不動産全体を使用することが可能です。
ただ、後々になって売却や改修などを行いたいとなった場合には、相続人全員の同意を得る必要があります。
また、相続人の一人が亡くなるとさらにその相続人へと権利が移っていくことで名義人が増えてしまい、あらゆる手続きや話し合いが困難になっていくことが懸念されます。
相続登記とは
相続登記とは、土地を相続した際に行う手続きの1つです。
土地の本当の所有者が誰なのかを管理するために登記という方法が行われています。
そこで、相続の際に行われる登記のことを特別に相続登記と呼んでいるのです。
土地を相続すると、亡くなった方から相続人へ土地の所有者が変わります。
つまり、新しくその土地の所有者が誰であるかをきちんと登記簿に記しておくために、相続登記を行うのです。
また、土地の名義が変更されていないと、その土地の売却も行えません。
そのため、土地を売却して得たお金を相続人で分配する場合にも、この相続登記が必要となります。
相続登記に必要なもの
それでは、実際に相続登記を行う際に必要となるものを確かめていきましょう。
登記に掛かる費用
登記のために必要な費用は大きく分けて2つあります。
そこで、それぞれどのような費用なのか解説します。
登録免許税
相続登記を行う場合、必ず掛かる費用が登録免許税です。
登録免許税は以下の計算式で求められます。
「不動産の固定資産税評価額×0.4%=登録免許税」
例えば、固定資産税評価額が3,000万円の場合、登録免許税は3,000万円×0.004(0.4%)=12万円となります。
この登録免許税は登記の際に現金で支払うのではなく、収入印紙を登記申請書に貼り付けて納付します。
そのため、申請を行う前にあらかじめ用意しておく必要があります。
また、固定資産税評価額が基準となっていますので、不動産の価値が高いほどこの登録免許税は高額になります。
司法書士への依頼費用
相続の際に必ず掛かる訳ではありませんが、司法書士へ登記申請を依頼する場合には、その報酬として費用が必要となります。
相続登記は誰でも行うことができるため、きちんと書類を用意すれば自分でも登記を完了させられます。
しかし、登録免許税のように細かな計算が必要となり、1つでも不備があると登記の申請を受け付けてもらえません。
そのため、相続登記を行う際には司法書士へ依頼するのが良いでしょう。
相続登記を行う場合の依頼料は住宅1件あたり5~10万円が相場だといわれています。
ただし、複数の不動産を相続する場合や県を跨いで相続する場合などは、それだけ依頼料も必要となります。
また、事務所ごとに報酬体系が異なりますので、複数の事務所を周りながら手続きだけでなく費用についても相談してみましょう。
必要な書類
相続登記を行う際には費用と同じようにさまざまな書類が必要となります。
では、どのような書類が必要となるのでしょうか?
故人の書類
相続登記で必要となる書類には、亡くなった方に関するものがいくつかあります。
その中でも代表的なのが、以下のようなものです。
- 故人の出生から死亡時までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
- 故人の住民票の除票
これらは登記に記された方と亡くなった方が同一人物かを調べるために必要になる他、相続人を確定するためにも使用されます。
どちらも本籍のある自治体の役所で取得できるのですが、戸籍謄本の場合は引っ越しなどで本籍地が変わっている場合には、それぞれの自治体の役所で取得する必要があります。
例えば、5回引っ越している場合は6ヶ所の自治体で取得しなければいけません。
そのため、戸籍謄本を集めるために時間が必要となる場合がありますので、早めに収集を開始しましょう。
遺産分割協議を行う場合
遺産分割協議には相続人全員が参加することが必須です。
被相続人の死後10カ月以内が相続税の申告期限ですので、それまでに協議をまとめます。
遺言書の内容や法律と照らし合わせ、相続人が納得する形に遺産分割協議書をまとめていきます。
相続人が全員参加して遺産分割協議を行ったとしても、無効とされる場合があります。
それは、参加者の中に認知症などで判断能力が不十分とされる人や、未成年者がいた場合です。
認知症患者などの場合は、判断能力の程度にもよりますが、成年後見人を家庭裁判所に選任してもらい、その成年後見人が遺産分割協議を行うことができます。
未成年者がいる場合は、親が代わりに遺産分割協議を行いますが、親も共に相続人の場合は、家庭裁判所で親の代わりに特別代理人を選任してもらい、遺産分割協議に参加してもらいます。
行方不明の人がいる場合には相続財産管理人を選任してもらいます。
相続人同士が親しい間柄であっても、時に「争族」と呼ばれるように、話し合いの決着が付かない場合があります。
人間関係が築かれていない相続人同士であれば、協議を円滑に進めることは困難でしょう。
制限時間内に決着を付けなければならない話し合いのため、困難が予想される場合には中立な立場で相談に乗ってくれる専門家の力を借りてみるのもいいでしょう。
遺産分割協議を経て相続登記を行う場合には、適切に分割協議が行われたことを示すために遺産分割協議書を提出しなければいけません。
また、合わせて相続人全員の戸籍謄本や印鑑登録が必要になります。
これらの書類は遺産分割協議書が不正に作成されていないかを確かめる書類となっており、必ず全員分のものを用意します。
ただし、現在の本籍地で受け取れる戸籍謄本のみで問題ありませんので、出生時まで遡って取得する必要はありません。
遺言書がある場合
遺言書が残されている場合、遺産分割協議などを行わずにその土地を誰が相続をするのか決定することができます。
この場合には、遺言書のみを提出するだけで登記申請を完了できます。
また、遺産分割協議が開かれないのであれば、遺産分割協議書は必要なく、同時に相続人全員の住民票なども必要ありません。
ただし、相続する方の住民票などは別途必要となりますので、遺言書だけを提出しないように気をつけましょう。
固定資産評価証明書
登録免許税を算出するためには、該当する土地の固定資産税評価額を正しく知る必要があります。
そこで、相続登記を行う場合には相続する土地の固定資産評価証明書が必要になります。
また、固定資産評価証明書はその土地がある市町村の役所で取得できます。
ただし、固定資産評価証明書を取得するためには免許証などの本人確認書類が別途必要となりますので、きちんと用意しておきましょう。
相続登記手続きの流れ
それでは、実際にどのような流れで相続登記の手続きを行なうのか、4つのステップに分けて解説していきます。
相続の発生~相続人の確定
土地の所有者が亡くなると所有していたその他の財産や資産を含め、相続が始まります。
この段階では葬儀の準備や実施、年金などさまざまな事務手続きが必要となる時期です。
相続登記に関して具体的な行動を行うことはできませんが、スムーズに遺産を分割させるために相続人が誰なのか、何人いるのかを確定させる必要があります。
つまり、この段階で亡くなった方の戸籍謄本を全て集める必要があるため、相続登記にも使用できるように漏れなく集めておきましょう。
また、その他の手続きで必要になる場合を見越して、複数セット集めておくのも効率的です。
遺言書の捜索
遺言書は故人の最後の意思を表すものであるため、相続に関する全てのことに対して遺言書の内容が優先されます。
そのため、遺産分割協議を始める前に遺言書があるかどうかを確かめましょう。
この段階で遺言書が見つかれば、内容に従って不動産を相続しますので、次のステップを飛ばして相続登記の申請を行います。
一方、遺言書が見つからなければ、相続人全員で遺産分割協議を開始します。
遺産分割協議
相続人ごとにどの遺産を相続するのかを決めるために、遺産分割協議を行います。
遺産分割協議では自由に相続の内容を決定することができるため、しっかりと話し合い相続人全員が納得できる相続の内容を決めましょう。
遺産分割協議が終わったら、協議の内容を記した遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名と実印を押します。
この際、実印がないという方や未成年の相続人がいる場合には、別途他の手続きが必要となります。
そのため、相続人が確定した段階で、遺産分割協議に向けて必要となる手続きを同時に行いましょう。
相続登記申請
誰が土地を相続するのか決定したら、本題である相続登記の申請を行います。
まずは、役所へ行き固定資産評価証明書や自分の住民票などを取得します。
必要な書類が集まったら、登記申請書を作成します。
このときには、登録免許税の収入印紙を法務局で購入できるのかを事前に尋ねておき、収入印紙か現金どちらかを用意しておきましょう。
また、申請書類は登記の種類や相続の状況によって書式が異なるため、必ず自分の状況に合った書式を選びましょう。
申請書類が作成できたら、実際に法務局へ行き申請を行います。
もし、書類に不備があればもう一度法務局へ行き修正を行います。
修正が必要ない場合や、修正が完了した場合には、相続登記に関する全ての手続が完了となります。
司法書士に依頼する場合は?
では、司法書士に相続登記を依頼する場合、どのような手順で行うのでしょうか?
司法書士へ依頼する場合、亡くなった方の戸籍謄本を集めることから依頼することができます。
つまり、相続人を確定する段階から依頼ができ、ほぼすべての段階を司法書士に任せることが可能です。
ただし、遺産分割協議の内容に関しては相続人が話し合って決めなくてはいけませんので、司法書士が大きく関与することはできません。
そして、遺言書の内容や書式が適切かどうかを判断するにも司法書士の力が助けになる場合があります。
また、どの段階からでも司法書士へ依頼することができますが、依頼する内容によって費用が変わりますので、最も手間がかからずコストパフォーマンスの良い方法やタイミングで依頼しましょう。
相続登記に期限はない?
さて、相続登記を行う際に気になるのが、登記を行うまでの期限。
いつまでに登記を行えば良いのでしょうか?
相続登記はいつでもできる!
不安になる相続登記の期限ですが、実は決められた期限がなく、相続した後ならばいつでも登記を行えます。
さらに、登記をしなくても罰則はありませんので、登記を行わないという選択肢もあります。
しかし、相続登記は必須といわれるほど重要な手続きとなっており、可能な限り早く登記を行うのが一般的です。
なぜかというと、登記を行わないことでさまざまなトラブルに巻き込まれてしまうからです。
では、どのようなドラブルが起きてしまうのでしょうか?
相続登記をしない場合のトラブル
相続登記は必須の手続きではありませんが、しないことによって大きなリスクが生じます。
そこで、相続登記をしない場合のトラブルについて解説していきます。
他の人が勝手に相続登記を行う
登記をしていないとその土地があなたのものだと証明することはできません。
すると、他の相続人や他人があなたに代わって相続登記を行い、その土地の所有者になってしまう場合があるのです。
さらに、相続登記を行えば自由にその土地を売却できますので、あなたの知らないところで勝手に売却され、その売却金を手にすることができない場合もあります。
もちろん、相続登記を行うためにはあなたの住民票などが必要ですが、法務局は誰が相続人で何人いるのか調べることはできません。
そのため、遺言書を捏造したり、他の理由で住民票を集めたりすることで、遺産分割協議と異なっていても相続登記が完了してしまうのです。
再び相続が起こる場合
土地を相続した方が亡くなってしまった場合、相続した土地は再び他の相続人が相続します。
通常なら亡くなった方の子供や配偶者が相続を行いますが、相続登記を行う前に亡くなった場合、登記上は亡くなった方の所有物ではありません。
すると、子供や配偶者に加えて、亡くなった方の親や兄弟も相続人となり、本来の人数よりも大幅に増えてしまう場合があるのです。
例えば子供が2人、配偶者が1人の場合、通常の場合、相続人は3人です。
しかし、兄弟が5人いる場合は、この兄弟も相続人となるため合計8人で遺産分割協議を行わなければいけません。
さらに、兄弟がすでに亡くなってはいるものの、兄弟に子供が2人ずついる場合はこどもに相続権が世襲されるため、相続人の合計は13人となります。
この状態で改めて相続登記を行う場合、相続人全員の住民票などが必要となりますので、集める書類も増大します。
不動産を差し押さえられる可能性
10カ月という厳しい期限が設けられている相続税の申告とは違い、土地や建物などの相続登記を怠って放置をしていても特に罰則規定はありません。
固定資産税を相続人の誰かが払っていれば誰からも登記を促されることはありません。
相続登記に期限はないものの、相続登記は早くしておかないと、大変なことになるかもしれません。
例えば、相続開始後、遺産分割協議をする前に土地や建物を差し押さえられる場合があります。
相続人の中に借金がある人がいて、債権者が相続財産の土地と建物を差し押さえる場合です。
債権者は借金のある相続人の法定相続分を相続登記し、さらにその1人の持分に差押登記をします。
こうなってしまうと借金のある相続人が、その土地と建物を取得することがなくても差押登記は消されません。
このような時には、借金のある相続人が相続を放棄することによって 相続登記と差押登記も、相続がなかったものとされ、無効になります。
相続放棄ができるのは、相続開始から3カ月以内なので、注意が必要です。
さらに、相続人の中に借金がある人が含まれていて、差押登記の可能性があると判断した場合は、その債権者より先に、借金のある相続人以外の相続人が相続登記をしてしまえば大丈夫です。
売却・担保にできない
土地や建物などの相続登記には期限がありませんが、相続登記をしないままだとその不動産を売却できません。
売主名義の土地と建物でないと売却ができないないのです。
代々受け継がれてきた土地や建物を相続したら、相続登記がしばらくされておらず、だいぶ前のご先祖様だった、ということがよくあります。
時代の変化などの理由で、土地や建物を維持していくのが難しく、売却しようと決意したものの、ご先祖様の未知数の相続人たちに連絡を付けていくのは至難の業です。
売却を諦めることになるかもしれません。
土地と建物が被相続人名義になったままだと、それらを売却や借り入れ担保にすることもできません。
実は、法律的には手続きすることもできるのですが、正当な権利関係としては認められません。
事前に確認しておきたい相続登記の注意点
土地や建物などの相続登記に期限はありませんが、登記をしないことで不利益になることも多数あることが分かりました。
相続税申告を終えたら一段落ではなく、あと少し、相続登記までがんばってみましょう。
つまり、相続登記をしておかないと、1つの土地を適切に相続するだけでも多くの手間や時間が必要となってしまうのです。
生前贈与でも土地を引き継ぐことができる
ここまで相続の登記の方法を説明してきましたが、亡くなってからではなく、生前に土地を引き継いでおくこともできます。
生前贈与とは
生前贈与とは、生前に自分の資産を別の誰かに贈与する法律行為のことをいいます。
生前に資産を贈与しておけば、相続税の節税になると思う方もいるかもしれませんが、贈与にも贈与税というものがかかります。
贈与税は毎年110万円を超える資産については税金がかかってきます。
相続税は『3000万+600万×法定相続人の数』を超える金には税金がかからないので、土地など高額な財産については節税にならないことも多いでしょう。
しかし、婚姻期間が20年以上ある夫婦については、実際に住んでいる自宅がある土地に限り2000万円まで贈与税がかからないという特例があります。
ただし、次の年に確定申告が必要となることを覚えておきましょう。
また、相続時精算課税制度という制度もあり、2500万円までの贈与であれば、贈与した時点では贈与税がかからず、亡くなったタイミングで相続の資産の一つとして計算される制度があります。
この制度のメリットとしては、
・特に土地など分割するのが難しい財産を生前に誰に譲るのか示せる為、相続する人同士の争いを防げる
・将来値上がりしそうな土地の場合、贈与した当時の価格が加算されるため、値上がり分は節税に繋がる
などがあります。
しかし、この相続時精算課税制度を使用してしまうと、被相続人が亡くなる直前まで住んでいた自宅を、配偶者や親族に譲るときに使用できる小規模宅地等の特例という節税制度を使用することができません。
この制度は一定の面積までの評価額を8割カットして計算できる制度です。
そちらについても留意し使用することをおすすめします。
土地を生前贈与する際の手続きの流れ
土地を生前贈与する際の流れは下記の通りです。
①贈与契約書の作成
土地を贈与することを書面に残し、その内容を証明するものです。
この書類を作成しないと、次の②と③の手続きが出来ないので作成しておきましょう。
土地の贈与契約書は地番などを正確に記載しなければならない為、登記事項証明書を確認しながら作成することが重要です。土地の贈与契約書の文言についてはネット内にテンプレートもあるのでそちらも参考にするといいでしょう。
不動産の価格によって収入印紙を貼らなければいけないので、そちらも忘れないようにしましょう。贈与者と受贈者双方の捺印を押して、それぞれ1部ずつ保管してください。
②土地の名義変更登記
法務局で名義変更登記を行います。この時、「登録免許税」と「不動産所得税」が発生します。登録免許税は固定資産税評価額の2%、不動産所得税は、固定資産税評価額の1.5%かかります。
③贈与税の申告
先ほども説明したように110万円を超える部分については、贈与税がかかるのでそちらについては申告が必要です。
土地の生前贈与で気をつけること
土地の生前贈与は、土地の価格をまず決めることが難しいので、そちらについては専門家に相談することをお勧めします。
税金の節税にはならないケースが多く、むしろ登録免許税や不動産取得税がかかり、支払いが多くなってしまうこともあります。
毎年、110万以内に抑えた分の土地を贈与する方法もありますが、その度に、登録免許税や不動産取得税、評価を依頼する専門家への依頼料金を考えるとあまりおすすめできません。
生前に贈与することで、本人の意思を反映できやすく、相続の揉めごとを防げる可能性が高いなどのメリットはありますが、支払う額のことも考え贈与しましょう。
相続で遺言書をしっかり残して土地を譲れば、不動産取得税は発生せず、登録免許税も0.4%に抑えることができます。
困ったらプロに相談!
相続登記は誰でも行えるため、自分で行うことができます。
特に、自分で行えば依頼料がなくなるため、費用での負担がなくなります。
ただし、登記申請は不備があると修正が必要です。
一度申請した書類を修正する場合、法務局に直接出向いて修正しなければいけないため、働いている場合には再び平日に休みを取らなければいけません。
さらに、修正の内容によっては他の相続人に修正を依頼する場合もあります。
つまり、相続登記の申請は修正するだけでも非常に大きな手間がかかり、登記が完了するまでに長い時間が必要となる場合があるのです。
そのため、1人で行うよりも司法書士など法律上の手続きを行うプロに相談したり依頼したりして、スムーズに登記を完了させることがおすすめです。
専門家別に下記にでご紹介しますので参考にしてみてください。
<司法書士>
こちらでご紹介した不動産の相続登記ができる専門家です。
土地など不動産の相続がある場合はほぼお世話になる専門家です。
<税理士>
相続において相続税が発生する場合、相続税の申告に必要な書類や手続きなどを行ってくれる専門家です。
<弁護士>
相続人同士でトラブルが起こりそう、もしくは起こった場合に相談すると良いでしょう。
裁判手続きなども行ってくれます。
<行政書士>
相続の手続きに必要な書類を集めたり、遺産分割協議書を作成したりしてくれます。
不動産登記や相続税申告手続きは行えません。