2019年1月30日 水曜日
相続税の計算に使う路線価とは。調べ方や計算方法
相続税の税額を算出する際に使用される路線価。
新聞やニュースなどで取り上げられる機会が多いのですが、そもそも何の価格であり、どのような意味があるのか分からない価格かもしれません。
そこで、路線価の意味や調べ方、実際の土地評価額の計算方法などを一緒に確かめていきましょう。
目次
路線価とは
まずは、路線価とは何の価格を表しているのか、どのように決定されているのか、基本となることから確かめていきましょう。
相続税には相続税路線価を使う!
不動産を複数人で相続する時には、現金のように単純に金額を計算してきっちりと分割することはできません。
不動産の評価には4つのものさしがあります。
- 実勢価格
実際に取引される価格 - 公示価格
地価公示法における公示価格 - 相続税評価額
いわゆる路線価 - 固定資産税評価額
固定資産税を課税する際の評価額
不動産を相続する時の相続税には財産評価のうち、相続税評価額(路線価)を使います。
実勢価格の約8割程度が路線価といわれています。
路線価を使って不動産の大体の評価を確認できますが、不動産には一つとして同じ形状のものはありません。
接道や土地の形などを考慮して計算していく必要があり、国税庁の財産評価基本通達に計算の基準が定めてあります。
大まかに定めてあるだけですので、不動産の評価額の計算は人により差が出てきます。
また、一言で「不動産を相続する」といっても、地目は宅地だけでなく、雑種地や山林もありますし、農地もあります。
それは建物についてもいえることです。
住居用の建物かもしれませんし、会社などの事業用の建物、さらにそれを組み合わせた店舗付き住宅であるかもしれません。
不動産は評価額が大きく、全体の相続税額を左右するものにもなりますので、しっかりと調べて計算しなくてはなりません。
遺産分割協議の前には相続財産の総額を把握する必要があります。
決定時期と決定方法
路線価は毎年7~8月に国税庁が公表される、その年の1月1日時点の土地の価格です。
不動産などの土地ではなく、主要な道路に面した1㎡あたりの土地価格を表していることから、単なる地価ではなく路線価と呼ばれています。
また、路線価は地価公示価格や鑑定評価額などをベースに設定されており、地価公示価格の8割程度が路線価になるように決定されています。
つまり、路線価がわからない場合、地価公示価格を1.25倍することで、その地域の路線価を知ることができるのです。
路線価が必要な理由
相続など所有している土地に対する税金を計算する場合、正確な土地の価格を知ることが必要です。
ただ、土地の価格は計測する時点で変化をしていくため、その時どきの価格を計測して税金の計算を行わなくてはいけません。
しかし、相続が行われるたびに土地の価格を計測していては時間もコストも膨大になってしまい、手続きをしている最中でも価格が変動する可能性があります。
そこで、土地ではなく誰も所有していない公道に価格を設定し、一時的な需要による変動などを受けない土地の価格の基準としたのです。
つまり、計測時点にかかわらず公平に税金の計算を行う基準にするために路線価が必要になのです。
土地の相続が安くなる理由
路線価は土地評価額や公示地価の80%程度を目安に算出されています。
そのため、現金を相続する場合よりも土地を相続する場合のほうが、相続税は安くなる場合があるのです。
例えば、現金の場合1,000万円の価値は1,000万円として計算されます。
しかし、1,000万円の評価額の土地では、路線価が800万円として計算されます。
つまり、200万円分の相続税が安くなるのです。
もちろん、場合によっては購入時よりも評価額が上昇し、現金で相続する場合よりも高額な相続税が発生する可能性があります。
特に、路線価は1月1日時点の評価額として算出されますので、路線価の工事公示前に評価額が下がっても路線価は変化しません。
したがって、一時的な上昇でも路線価には大きな影響を与えてしまうため、100%土地での相続が安くなるとはいえません。
相続税・贈与税の計算時に使用する
路線価は税金を算出されるために使用され、目的別に「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類の路線価が用意されています。
それぞれ、相続税の計算時に使用される路線価、固定資産税の計算時に使用される路線価を表しており、相続の場合には相続税路線価をしっかりチェックしなければいけません。
相続税路線価は、相続税だけでなく贈与税の計算時にも使用されるため覚えておきましょう。
また、相続税路線価と固定資産税路線価を比較すると、相続税路線価のほうがやや高い金額となっています。
そのため、間違って固定資産税路線価で相続税を計算してしまうと、実際の税金よりも安く計算されてしまうため、個人で計算を行う場合には十分に気をつけましょう。
路線価の調べ方
さて、自宅に関する路線価を調べたい場合には、どのように調べればよいのでしょうか?
路線価の調べ方についてもしっかり確かめていきましょう。
インターネットを活用する
土地の路線価を調べるには、その土地を管轄する税務署に、管内の路線価を記した路線価図がありますのでそれを使います。
税務署を訪問し、申請すればいつでも無料で閲覧できます。
しかし、相続予定の不動産が遠方にある場合などは、税務署に出向くのは大変な労力が掛かります。
さらに、複数の離れた場所にある不動産を相続するとなったら、路線価を調べるだけで相続税の申告期限の10カ月が到来してしまうかもしれません。
そのような時には、全国の路線価を閲覧できる、国税局ホームページの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のページ<http://www.rosenka.nta.go.jp/>を使いましょう。
路線価は毎年7月上旬に、その年のものを公開しており、過去6年分の路線価図も、さかのぼって確認ができます。
国税局以外にも都道府県や市町村のホームページでも公表されている場合があります。
一般財団法人資産評価システム研究センターが提供しているホームページ、全国地価マップにも路線価が掲載されています。
PC用:http://www.chikamap.jp/chikamap/
スマートフォン用:https://www.chikamap.jp/chikamap-sp/
複数の相続人がいる場合でも、1年365日、24時間、どこでもパソコンやスマートフォンで必要な時に必要な情報を調べられるので、情報の共有もしやすいでしょう。
スマートフォンであれば、画面をコピーした画像を複数の相続人で共有するといいでしょう。
税務署へ直接行くよりも、生活している自治体や国税局のホームページを確認して路線価を調べるほうが手軽で早く路線価を調べることができるので、スピーディーに把握することができるでしょう。
国税局のホームページの検索方法
インターネットで『路線価』を検索して、国税庁ホームページの路線価図・評価倍率表を表示します。
URLは<http://www.rosenka.nta.go.jp/>です。
国税庁のホームページから不動産の路線価を調べる方法を手順を追って紹介します。
- 国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」にアクセスする
- 地図上の都道府県名、もしくは日本地図の下部に表示されているリンク済みの都道府県の名称をクリックする。路線価図は、最新の年度のものがトップに表示されているため、過去の年度の路線価図を見たい時には、先に該当する年度を選択する
- 都道府県ごとに目次が表示されるので、目次の中にある路線価図をクリックする
- 市区町村一覧が表示されたら、相続する土地の名称をクリックする
ただ、路線価図を表示するのは簡単なのですが、路線価図には主要な建物の名称しかありません。
そのため、どこに調べたい住宅があるのかが非常に分かりづらいです。
そこで、白地図帳やオンライン上のグーグルマップなど見やすい地図と路線価図を並べて調べることで、ターゲットとする場所の路線価を探しやすくなります。
路線価図の見方を簡単に説明します。
【例】地図上のある場所に「180D」と書いて合った場合
この数字は、単位が1,000円です。
計算するとこの土地の路線価は、1平米あたり180,000円であることが分かります。
数字の後に付いているアルファベットA~Gは借地権の割合を示しています。
路線価に土地の面積を掛け算して、標準的な不動産評価額が計算できます。
路線価図を見るときの注意点
無事にホームページ上で相続予定の不動産の路線価図にたどり着いても、そのままの価格を不動産評価額とはしていません。
路線価を使って不動産評価額を算出するには、相続する土地が複数の道路に接道していたり、奥行があったりする場合には、補正をかけて計算します。
土地評価額の計算方法
それでは、実際に路線価を活用して土地評価額を計算してみましょう。
基本の計算方法
まずは、路線価を基準に土地評価額を計算する場合の基本となる計算方法を解説します。
土地評価額を計算する場合には、以下の2つの計算を行います。
- 路線価×奥行距離による奥行価格補正率=1㎡あたりの路線価
- 1㎡あたりの路線価×土地面積=土地の評価額
それでは、実際に路線価100万円、土地面積500㎡、奥行価格補正率0.97という例を用いて計算をしてみましょう。
まず、1つ目の計算式に当てはめて1㎡あたりの路線価を算出します。
「100万円(路線価)×0.97(奥行距離による奥行価格補正率)=97万円(1㎡あたりの路線価)」
そして、1㎡あたりの路線価を活用して、土地の評価額を計算します。
「97万円(1㎡あたりの路線価)×500㎡(土地面積)=4億8,500万円(土地の評価額)」
つまり、上記の例では土地の評価額は4億8,500万円だと算出でき、この評価額に応じて相続税や贈与税が再び計算されます。
二路線に面する宅地の計算方法
路線価は道路に割り当てられる価格のため、2つの公道に面している住宅の場合2つの路線価に接している場合があります。
この場合でも基本的な計算方法は変わらないのですが、新たに「側方路線影響加算率」という要素が加わります。
そのため、2つの計算式は以下のように変化します。
- 正面路線価×奥行距離による奥行価格補正率=1㎡あたりの路線価(1)
- 側方路線価×奥行距離による奥行価格補正率×側方路線影響加算率=1㎡あたりの路線価(2)
- (1)+(2)=全ての路線価を加味した1㎡あたりの路線価
- 1㎡あたりの路線価×土地面積=土地の評価額
文字だけだと分かりづらいため、早速例を用いて計算していきましょう。
今回用いる例は、上記の例を正面路線価として、側方路線価90万円、側方路線価に関わる奥行価格補正率は1、側方路線影響加算率を0.08として計算します。
「100万円(正面路線価)×0.97(奥行距離による奥行価格補正率)=97万円(1㎡あたりの路線価)」
正面路線価は上記の例と同じため、計算式も全く同じとなります。
続いて、側方路線価における1㎡あたりの路線価を計算していきます。
「90万円(側方路線価)×1(奥行距離による奥行価格補正率)×0.08(側方路線影響加算率)=7万2,000円(1㎡あたりの路線価)」
そして、2つの路線価の1㎡あたりの路線価を求めると以下のようになります。
「97万円+7万2,000円=104万2,000円」
これで1㎡あたりの路線価が算出できましたので、上記と同じように面積に応じた土地評価額を計算します。
「104万2,000円×500㎡=5億2,100万円」
つまり、今回の例では土地評価額は5億2,100万円となり、1辺の路線価のみで計算した場合よりも高額になることがわかります。
2つの路線価で計算をする場合、どちらの路線価を正面路線価にしても問題ありません。
しかし、どちらを正面路線価にして計算するかによって計算結果が大きく変化します。
そのため、奥行価格補正率を踏まえて、高額な路線価を正面路線価、低い路線価を側方路線価と設定することが一般的です。
借地権を含めた計算
住宅を所有している場合には、土地と建物全てを所有している場合だけでなく、建物は自分の所有物だが土地は借りているという場合があります。
この場合には、これまでの土地評価額だけではなく、借地割合に応じて評価額を再計算しなければいけません。
例えば、借地割合が70%の場合、4.1.の例では以下のように計算されます。
「4億8,500万円(土地の評価額)×0.7(借地割合)=3億3,950万円」
つまり、路線価に応じて算出された路線価に、借地割合をかけることで借地権のある場合の土地評価額を求めることができるのです。
そのため、土地を借りている場合などは忘れずに借地割合を調べておき、適切な土地評価額を算出するように気をつけましょう。
計算に必要となる数字
さて、土地評価額を計算する場合、いくつか見慣れない割合や数字を用いた計算式を用いていました。
そこで、それぞれの割合や数字についての理解を深めていきましょう。
奥行価格補正率
道路に面した路線価から土地評価額を計算しますが、実際の住宅は線ではなく面で建設されているため、道路から離れた場所の価格も求める必要があります。
しかし、路線価は道路の価格であるため、隣接しているからといって土地の面積がどこでも同じ価値とは限りません。
特に、一般的には道路から遠ざかるほど価格は減少していると考えられています。
そこで用意されているのが、奥行価格補正率です。
これは、土地の価格を算出する根拠となる路線価を用いて、道路から離れている場所を含めた土地全体の路線価を求めるために定められた割合です。
この奥行価格補正率は、道路に面した場所と道路から最も離れている場所の距離に応じて1.00~0.80まで段階的に定められています。
そのため、正しく評価額を求める場合は、あらかじめ道路からの奥行きを書類などで調べておき、正しい奥行価格補正率を把握する必要があります。
側方路線影響加算率
2つの道路に面しており、2種類の路線価を元に計算しなければいけないときに必要となるのが側方路線影響加算率です。
このような土地は角地と呼ばれており、側方路線影響加算率も角地と準角地の2種類に分けられています。
角地とは交差点やT字路の角にある土地のことで、普通住宅地区の側方路線影響加算率は0.03です。
一方、曲がり角のように一続きの道路内側の場所を準角地と呼び、普通住宅地区の側方路線影響加算率は0.02となっています。
難しく感じますが、使用する数字は2種類しかありませんので、住宅の周りを見渡してみてどちらの角地に当てはまるかをきちんと確かめておきましょう。
借地割合
土地などを借りている場合の評価額を求める場合に使用される借地割合。
実は、路線価の隣に記載されているアルファベットにより、適応される借地割合が下記のように定められています。
- A:90%
- B:80%
- C:70%
- D:60%
- E:50%
- F:40%
- G:30%
つまり、面積や路線価とは関係がありませんので、同じ路線価でも借地割合が異なっている場合があるのです。
そのため、路線価図を見る場合には価格だけでなくアルファベットにも注意しておき、借地割合がどのように定められているかをしっかり調べておきましょう。
路線価の計算に困ったら専門家へ!
不動産評価額には、さまざまな計算方法があることをご紹介してきました。
同じ地域にある同じ面積の土地でも、接道や間口、奥行などの形状など、さまざまな要素で評価額の計算方法は異なります。
そもそも、素人にはどのような計算方法があるか覚えることは非常に難しく、土地の形状を見て、どの計算式を使うのか、どの加算率などを使って計算する必要があるのか、その判断も必要なため、不動産評価を計算するのは素人には困難なことです。
不動産の評価額を正確に算出するには、複雑な計算が必要です。
不動産は正確に計算して評価しないと、その後の遺産分割や、相続税の申告時に困ることになります。
相続税の申告期限は10カ月ですので、短時間に正確に計算し評価額を出すことが求められますので、難解な計算に悩むよりも、専門家に相談して解決してしまいましょう。
専門家に相談すれば、不動産評価額の計算だけでなく、予期せぬ相続のトラブルにも、対応してもらえる可能性があります。
不動産の相続や分割割合などに詳しい専門家に相談できるといいですね。
まとめ
路線価や評価額と聞くと難しく感じますが、実際に計算方法を知ると意外に簡単に評価額を算出することができます。
そのため、これをきっかけに路線価図を見て、実際に一度計算してみましょう。
きちんと計算できればおおよその相続税や贈与税の税額を知ることができ、生前贈与などにも役立ちます。
路線価を有効活用して、相続に必要なお金の問題を今のうちに解決させましょう。