「相続財産が知らない間に使い込まれている」という相続トラブルは、実はよくあるケースです。
使い込んだとしても何事も無く、誰も知らないまま相続が実行されてしまうこともあります。
そして、相続実行後に何らかの理由で財産の使い込みが発覚したとしても、指摘しにくい場合もあるかもしれませんし、同居や介護、その他の理由で、確かに正当性もあるかもしれません。
しかし、大切な人を亡くした時、知らされていない事実に冷静に対処できる可能性は極めて低く、対処にミスがあると、相続トラブルへと発展します。
相続財産の使い込みに対しては、どのように対処すればトラブルを回避できるのでしょう。
この記事では、相続財産の「使い込み」が発覚した場合の対処法について解説します。
相続時に使い込みが発覚することがある!

遺産分割協議に入ったときに「あれ?預金がこれだけ?」、または「株や債権があったはずだけど」、もしくは「○○の土地の権利書は?」と、相続人達が期待していたほどの財産が残っていなかった時、相続財産を無断で使い込んだ可能性が浮上します。
被相続人の財産を管理していた同居家族や、被相続人の家をよく訪れていた人に疑惑の目を向けてしまう気持ちも仕方がないかもしれません。
被相続人の同居家族は、「療養費や介護費用等に必要だった」と主張することもあるでしょう。
使い込みが発生するいくつかの事例を見ていきます。
故意ではないが使い込みと判断された事例
認知症が始まってしまっていた被相続人が、譲る約束をした財産が相続時には存在しなかったケースです。
生前に娘の子供(孫)の学費のために、被相続人が娘に不動産を売却さあて利益を渡したことを他の親族の誰も知らなかったとします。
不動産を売却したことを被相続人が忘れてしまって、死ぬ前に、同居家族の長男に介護の御礼に売却済の不動産を譲る約束を重ねてしてしまった、とします。
不動産を売却した娘からすると、親の許可を得て、親の不動産の売却を代理で手続きしたに過ぎないので、脱税や使い込みの意識が無かったでしょう。
しかし、長男からすると、親から相続するはずだった不動産を無断で使い込んだと思ってしまうのも仕方ありません。
さらに、被相続人が遺言書を残していなければ、不動産の相続の意志を証明する術もありません。
例え故意ではなくとも、使い込みであると状況判断された場合、望まないトラブルが起こる可能性は非常に高くなります。
親が病気や認知症で、正常な判断ができない状況にある場合は、娘は財産の処分について親族全員に相談するべきでした。
同様に、親の介護のためにどうしても必要なお金も、相続トラブルを防ぐために相続人となり得る人たちの許可が必要となります。
その手続きを経ずして、勝手に行動を起こしては、よほどの証拠がない限り、後でトラブルの原因になります。
自分が受取人の生命保険を解約した事例
生命保険に関するお金も、使い込みと判断されてしまう可能性があるケースです
受取人が長男となっている生命保険の掛け金を、親の年金では足りないため、同居家族の長男が払っていたとしします。
その掛け金の支払いも難しくなり、親の生命保険を相談なく解約して受取人としてして利益を得た時に、使い込みとして判断されます。
なぜなら、死亡保険金を相続するはずだった、他の法定相続人に不利益をもたらすためです。
保険料が親の収入で払えないなら、そのことを他の相続人、保険の担当者と相談するべきでした。
その解約払戻金が介護費用として必要だったと主張しても、使い込みのトラブルと発展してしまいます。
このように、使い込みの範囲は、預貯金だけで無く、不動産や生命保険・医療保険等の解約による払戻金、株や不動産による賃料、年金等、被相続人名義のあらゆる財産に及びます。
その使い道が、たとえ介護・療養費用だったとしても、「使い込み」だと一旦疑われては、トラブルを防ぐのは難しいでしょう。
しかし、上記のような使い込みに関する相続問題は、遺産分割協議についてのトラブルを解決する場所である調停(遺産分割調停)では解決できない問題となります。
まずは相続財産を明確にした上で、相続人同士での遺産分割協議が必要です。
相続財産が他の相続人に使い込みされたときの対処法

相続人が使い込みをしたと判断された場合、使い込まれたのは被相続人の財産です。…