すてきな相続は大切な方を亡くしたあとの手続・届出から、
知っているようで知らない「相続」に関する情報をわかりやすく解説します。

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【相続の基礎知識】

相続について基礎知識を説明しています。相続とは、相続の手続き、生前にできる相続対策など、相続について知っておくべき情報をまとめています。

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親が亡くなると親名義の銀行口座はどうなる?|口座の凍結とは

亡くなった親の銀行口座を処理する必要が発生した時、葬儀の後では口座が凍結してしまっていると思われる方は多いです。

しかし、死亡公告が大々的に出ていたり、自分から銀行の職員に申し出ない限り、個人情報の徹底が厳しい今の時代に、銀行が家族の申し出よりも先に預金口座名義人が亡くなっていることを知るケースは意外に少ないのです。

さらに、口座を凍結される前であれば、他の親族には内緒でATMから預金を引き出すことも可能です。

そして、凍結前の口座から安易に預金を引き出すことが常にトラブルの原因になることはあまり知られていません。

この記事では親が亡くなったときの親名義の銀行口座の適切な扱い方とトラブルの回避について解説します。

亡くなった人の銀行口座は凍結される

口座が凍結されると

口座名義人が亡くなったことを銀行の職員が知ると、その銀行の口座は全て凍結されます。

口座が凍結されてしまうとどうなるのでしょうか。

・入出金

・残高証明

・振込の授受

・振替え(送金・入金)

・定期の解約

・積立金の払い出し・預け入れ・・・・・・etc.

上記全て、つまり凍結されたその口座のお金が一切動かせなくなるのです。

いつ口座は凍結される?

「親が死んで、火葬許可証をもらうために、葬儀社が死亡届けを役所に提出したら、親の名義の銀行口座等(その他金融機関の口座を含む)が凍結される」と思っている人は意外に多いようです。

例えば、父親が亡くなったときに、葬儀社の費用等の支払いや母親の当座の生活費を引き出しておくために、葬儀社に死亡届を出すのを少しの間待ってもらう人が少なくないそうです。

確かに、個人情報保護法が徹底される前の時代、とくに昭和の時代は、ご近所のお付き合いが密だったので、葬儀といえば、町内の掲示板に告示されたり、至急の回覧板でお通夜や葬儀の情報が周知されたりしていました。

自宅でお通夜・葬儀が行われることも多かった時代は、亡くなった方の家の玄関に「忌中」の紙や提灯が飾られ、「亡くなった」事がご近所にわかるようにしていたものです。

それを見たご近所の方々が、連絡網を自ら回し、亡くなった方の家のお通夜や葬儀のとき、申し合わせて皆で手伝うのが慣習でした。

このように、大々的に周囲に亡くなったことを周知していたので、外回りの銀行員の目にとまり、その情報を銀行に持ち帰って、亡くなった方の口座の凍結手続きがなされていたのです。

しかし、平成生まれの人は「その家の誰が亡くなってお通夜や葬儀があることがわかっても、その家の誰が亡くなったのかがどうしてわかるかの?」と不思議に思うかもしれません。

まだ個人情報が今みたいに厳しくなかった時代、そんなご近所の情報は、皆が知っていたのです。

だから、銀行員は、ご近所の家に寄ったときに、一言尋ねたら、ご近所の方がすぐに教えてくれます。

銀行員が何も言わなくても、自ら話してくれるご近所さんもいます。

このようにして、昭和の40年代以降は、親の葬儀が終わって親の口座からお金を下ろそうとしたときに、既に銀行口座が凍結されていることが多かったのです。

そのため、「死亡届が出たら銀行口座が凍結される」とまことしやかに噂されるようになったのです。

しかし、個人情報が厳しくなった現代では、訃報連絡に関して、掲示板に掲示したり回覧板を回したりする習慣が薄れてきました。

また、自宅で葬儀をする人も少なくなったので、「忌中」の紙や提灯が玄関に飾られることもなくなりました。

近所のお付き合いが希薄になったので、葬儀社にお通夜も葬儀も全てお願いする人が増えていき、ご近所が手伝うような習慣も少なくなりました。

その結果、銀行員に亡くなったことを知られて、知らない間に口座を凍結されることも減ってきたのです。

今や、大々的に死亡広告を出したり、有名人としてメディアで亡くなったことが報じられるようなことがない限り、銀行側が家族の申し出より先に、亡くなった方の口座を凍結してしまうことは非常に少なくなりました。

ですので、一人暮らしの高齢者が孤独死して、相続する家族が預金口座について知らなかったら、その口座はそのまま休眠口座になってしまうような事も増え始めました。

つまり、亡くなった方の家族や相続人が、銀行に連絡したり、その他何らかの形で銀行(口座を開設した支店・本店・出張所等)が預かっている預金口座の名義人が亡くなったことを知った時、銀行はその口座を凍結します。

少なくとも、死亡届けを出しても役所の職員が書く金融機関に亡くなった事を通達するようなことは、個人情報保護の観点からあり得ません。

ちなみに、銀行に、口座名義の当人が亡くなった事を連絡するのは、誰でも構いません。

窓口に出向いても良いですが、電話でも構いませんが、、口座を開設した支店・本店・出張所等に、住所・氏名・口座番号を連絡する必要があります。

同じ銀行に複数の口座を持っている場合は、一つの口座を開設した支店に連絡したらその銀行全ての口座が凍結します。…

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2019.3.31

単純承認とは何か|3つの遺産相続パターン

残念ながら、相続とは、放っておいても誰かが完了してくれるものではありません。

亡くなった方、そして相続されるご遺族の方々によるコミュニケーションと選択こそが相続です。

その一方で、私は「何か悪いことが起きた」時は、それ以上傷つかないように被害者になりがちです。

そのような在り方でじっとしていると、どこかの知らない誰かが定めたルールに当てはめられ、さらに被害者感が増長して、いつまでも不満を言い続ける立派な私を作り上げます。

相続では特に、誰もが自分の損失を避けたいと思うでしょう。

しかし、自分の利益を議論しているうちに時間が経ち、民法に従い「相続を単純承認した」と見なされ、自分が望まない結果を相続することもあります。

本コンテンツでは、被相続人に相続が発生した場合に相続人がとるべき相続の態様としてもっとも一般的な「単純承認」を中心に、他の態様である限定承認や相続放棄と比較しながらご説明します。

単純承認はもっとも一般的な相続の態様といえど、安易に選択すれば被相続人から資産を超えた額の債務まで引き継いでしまうこともあり得ます。

そのようなことにならないために、本コンテンツで単純承認以外の相続の方法についても知っておいて頂ければと思います。

この記事で紹介する知識を持つことで、読者の方がご自身の遺産相続を自ら選択し、悔いのない結果になることを願っています。

3つの遺産相続パターン

相続が発生した場合、被相続人(亡くなった人のこと)が残した遺産に対して相続財産に対して相続人が取る選択肢は「単純承認」、「限定承認」、「相続放棄」の3つとなります。

以下でこれら3つのパターンを詳しくみてみましょう。

単純承認

単純承認とは

単純承認とは、プラスの財産に加えマイナスの財産についても遺産分割協議などで決めた割合通りに相続することです。

相続の形式として、民法では単純承認を原則としており、実際の相続においても限定承認や相続放棄と比較すると圧倒的に単純承認が多いです。

相続人が積極的に単純承認の意思表示を示す場合のほか、相続人に以下の民法第921条のような一定の行為があれば単純承認したものとしています。

これを、「法定単純承認」といいます。

それでは、単純承認に関する民法第921条の規定をみてみましょう。

「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。

ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二、相続人が第915条第1項の期間(3ヶ月間)内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

三、相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。

ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

なお、被相続人の遺族として社会通念上相応の葬式費用を相続財産から支弁することは上記における法定単純承認には該当しませんが、形見分けであっても著しく財産価値の高いものを受け取ると法定単純承認に該当する可能性があります。

単純承認の効果

単純承認をすると、民法第920条「相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。」にあるとおり、相続人は被相続人の義務、つまり負債などについても無限に承継することになります。

したがって、相続財産にプラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合、相続人は被相続人の債権者(相続債権者)に対して相続財産だけでなく自分の本来の資産つまり固有財産からも弁済する義務を負うことになります。

つまり、単純承認することにより相続財産は相続人固有の財産と完全に一体化するわけですから、相続人は被相続人が債権者に対して負担していた債務の弁済もすべて負担しなければならなくなるのです。

また、被相続人の債権者は相続人固有の財産に対しても強制執行をすることが可能になります。

このように、単純承認において相続人は大きな利益を受ける場合もあれば、著しく不利益を被る場合もあるのです。

限定承認

限定承認とは

限定承認ついて、民法第922条では「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる」とされています。

簡単に言うと、限定承認とは相続するプラスの財産でマイナスの負債を解消し、プラスが余ったら相続する、と言う留保つきの相続のことです。

2019.3.31

特別受益とは何か?対象となるものや計算方法は?

遺産相続の時に初めて知る言葉は多いと思います。

特に、多くの人にとって初めて知る言葉は、「特別受益」だと思います。

特別受益を簡単に言うと、亡くなった方から生前贈与された財産のことです。

特別受益には、遺言による遺贈や死亡保険金の受け取りも含まれます。

そして特別受益を受けた相続人と、受けていない相続人の間における不公平性を解消するための遺産相続制度があるのです。

ご家族が亡くなられた時に、さらにご自身の遺産相続分が減ると、人間なら誰でも「悪いことが起きた」と思って落ち込んでしまいます。

しかし、言葉や知識を知り備えておくことは、そのように落ち込む時間を減らし、望む未来に向かって前進する足がかりになります。

この特別受益について知っていただくことで、将来に発生する、もしくは現在直面している被相続人の相続に関する備えの一助となることを願っています。

そして、私の立場としては、一概に定義できない極めて曖昧な特別受益に関して、なるべく早く専門家にご相談されることを心からお勧めします。

特別受益とは

概要

特別受益の定義について、民法第903条第1項の規定をみてみましょう。

「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」

つまり、特別受益の対象は、例えば起業のための資金・留学費用・結婚時の祝い金や住宅の贈与など、生前の被相続人から特定の相続人に為されていた高額の生前贈与や遺贈(遺言により財産を贈与すること)あるいは死因贈与契約のことです。

このような贈与や遺贈などが被相続人から特定の相続人にのみ為されていた場合、これらを特別受益として考慮せず相続人全員の相続割合を決めてしまうと、生前の特別受益を受けていた相続人と受けていなかった相続人の間で不公平が生じることになります。

したがって、相続人間の公平を図るために特別受益分は相続財産の実質的な前受けと考え、同条第2項「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない」にあるとおり、特別受益を受けた相続人の分割割合は遺産分割協議という相続間の話し合いにおいて特別受益相当分について減らすことができるのです。

ただし、同条第3項「被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する」とあるように、たとえ相続人に特別受益があったとしても被相続人が遺言でそれを遺産分割時に考慮しないことを定めていた場合は、遺留分(法定相続人に対して民法が定める最低限の取り分)を侵害しない範囲で特別受益相当分を遺産分割割合に考慮しないことも認められています。

(ただし、民法改正で相続開始前10年以内の贈与については持ち戻しが認められる可能性が出ています)

これはご参考ですが、特別受益と逆の概念として「寄与分」というものがあります。

寄与分とは、被相続人の生前に事業を手伝う、または身の回りの世話を行うなどして被相続人の財産の維持・増加に特別に貢献したと認められる相続人には、遺産分割協議における相続人全員の同意を前提に、その貢献度に応じて相続割合を多くするという制度です。

ただし、どのような行為が寄与分に該当するかの判断は特別受益と同様に難しいことから、被相続人が遺言で明記していたわけではない場合は寄与分をめぐって相続人で争いごとに発展するケースがあります。

特別受益の対象物

特別受益に該当する贈与や遺贈については、民法第903条で「被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者」との規定があります。

しかし、民法では特別受益に関する具体的な内容・基準などまでは明示されているわけではないため、その判断は非常に難しいものがあります。

そのため、遺産分割協議の場で特別受益をめぐる相続人間の主張の食い違いが生じ、争いごとに発展するケースは数多くあります。

特別受益の対象と認められたケース、あるいは可能性があるケースはきわめて多種多様です。

以下で代表的な具体例をみてみましょう。

金銭や不動産

基本的に、親元から独立し独立生計を始めたあとに受けていた贈与については、金銭や不動産など贈与財産の種類を問わず特別受益に該当するという考え方が主流です。

結婚費用

結納金や挙式費用については遺産の前渡しではなく、被相続人による社交上の出費という性質が強いことなどから一般的に特別受益には該当しないと考えられます。

しかし、相続人の他の兄弟姉妹と比較して著しく高額の支出だった場合は、その差分が特別受益とされる可能性があります。

また、持参金や支度金など、婚姻後の生活のために被相続人が支出した費用については原則として特別受益に該当すると考えられます。

学費

義務教育に支出した金額ついては、親の義務とされ特別受益には該当しません。

また、昨今の高学歴化に伴い高校や専門学校、あるいは大学への進学費用も同様とする風潮が強いようです。

ただし、大学院や海外留学などの高等教育については特別受益とみなされる可能性がありますが、これについても他の兄弟姉妹との比較した程度の度合いが判断基準のひとつとなります。

2019.3.31

代襲相続って??知っておきたい基礎知識まとめ

相続のパターンは、2つとして同じものはないといわれています。

例えば、父親が亡くなった時、相続するはずだった配偶者や子どもがすでに他界していて、直系の孫が相続する場合があり、このようなケースを代襲相続と呼びます。

代襲相続は、それが発生しないケースと比較すると少ないかもしれません。

仮に祖父母あるいは子のいない叔父叔母が高齢だとしても、自身の親が健在であれば自身が代襲相続人となることはあまり考えることがないでしょう。

しかし、数年先のことはわからないものです。

本コンテンツでは、誰もがなる可能性がある代襲相続人についての基礎知識を解説します。

もちろん、すでに代襲相続人になることがわかっている人は、ぜひこの記事を自身の相続に役立ててください。

代襲相続とは?

相続とは、被相続人(亡くなった人のこと)が死亡または失踪宣告・認定死亡を受けたことを発生理由に、被相続人が所有していた財産や権利義務を被相続人の配偶者や子どもなど特定の人が引き継ぐ制度のことです。

遺言によって財産を受け取る遺贈、贈与者が死亡したら受贈者に財産を残す契約を生前に贈与者・受贈者間で締結していたことにより財産を受け取る死因贈与についても、相続の定義に入ります。

簡単に言うと、法律で定められた人(配偶者、子供、兄弟姉妹)に遺産が譲渡されるのが通常の相続です。

そして代襲相続とは、本来の相続人が被相続人の相続発生までに死亡するなど一定の事情

により、本来の相続人の子などが代わって被相続人から相続することです。

たとえば、祖父の相続発生前に子が死亡したため、孫が代襲相続人として祖父の遺産を代襲相続する事例が当てはまります。

代襲相続をもっと分かりやすく言えば、父が亡くなった時に法律で定められた相続人(配偶者、子供、兄弟姉妹)がいない場合、遺産は世代を超えて直系の遺族(孫、ひ孫)に相続されることです。

 

代襲相続の要件

代襲相続人になることができる人の定義および本来の相続人(被代襲者)の要件について、民法第887条2項では「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定(相続人の欠格事由)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない」と規定しています。

また、民法第889条では被相続人直系尊属及び兄弟姉妹の相続権について以下のように規定しています。

「次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

一、被相続人の直系尊属。

ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。

二、被相続人の兄弟姉妹

第887条第2項の規定は、前項第二号の場合について準用する。」

つまり、代襲相続は法定相続人が死亡、相続欠格に該当、相続廃除された時に発生します。

遺産の相続は、血の繋がりがある直系の家族である「血族」に代襲相続されます。

なお、民法の規定では、義理の息子・娘や義理の兄弟姉妹は法定相続人に該当しないため、代襲相続の権利は原則として発生しません。

代襲相続人が死亡・相続欠格・相続廃除のいずれかに該当している場合は、代襲相続人の血族が再代襲相続人となります。

したがって、被相続人の子が死亡・相続欠格・相続廃除に該当すれば孫が代襲相続人、曾孫が再代襲相続人、兄弟姉妹が死亡・相続欠格・相続廃除に該当すれば甥姪が代襲相続人となります。

代襲相続における相続分

民法第900条に規定する法定相続割合についてみてみましょう。

「同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一、子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二、配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三、配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四、子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。

ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」

分かりやすく言うと、代襲相続人は、代襲相続人の数と亡くなった被相続人との関係(順位)に応じた相続割合で相続できます。

例えば、被相続人の4人の子どもたちと2人の孫たちは、相続割合が違います。

また、同じ順位の代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者が本来相続するはずだった相続割合について代襲相続人の人数で均等に分割することが原則です。

2019.3.31

相続のやり方がわからない!安心して相続する方法を徹底解説!

相続は多くの人が経験しますが、その制度の複雑さと難解な専門用語の多さから、相続前に知識を得ておくことは敬遠されがちです。

この記事にたどり着いた方は、今、相続に関する情報を得ようと立ち上がったものの、心労も相まってより複雑に見えているかもしれません。

私から1つアドバイスできるなら、相続は今この瞬間が全てではないと言うことです。

何世代も前から選択されて残されてきた遺産もあれば、これから子供達に何世代にも渡り相続される遺産もあります。

相続とは、ご親族の意志を汲み、将来のご家族に大きな影響を与える人間特有の愛情表現です。

本コンテンツの目的は、相続のことについて何も知らない方に相続の基礎知識を理解していただき、ご遺族が望む相続の仕方を発見してもらうことです。

そして、発見してもらえたなら、次は税理士や弁護士などの専門家にご相談することをお勧めします。

彼らは、ご遺族が望む相続を実現するプロフェッショナルです。

相続に関する難解な専門用語や制度と直面しても、ご自身の望む未来と専門家のサポートがあれば必ず乗り越えて完了できます。

あともう少し、勇気を振り絞ってこの記事を読み、なるべく早く専門家へのご相談を検討してみてください。

相続とは

相続とは、被相続人(亡くなった人のこと)が死亡または失踪宣告・認定死亡を受けたことを発生理由に、被相続人が所有していた財産や権利義務を被相続人の配偶者や子どもなど特定の人が引き継ぐ制度のことです。

遺言によって財産を受け取る遺贈、贈与者が死亡したら受贈者に財産を残す契約を生前に贈与者・受贈者間で締結していたことにより財産を受け取る死因贈与についても、相続の定義に入ります。

相続は民法や相続税法などの各種法律や制度により規定され、これに基づき被相続人から財産を引き継ぐ相続人は遺産分割、相続税の申告・納付などの一連の手続きを行わなくてはなりません。

相続財産の分け方

民法第906条では、遺産の分割について「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定められています。

つまり、遺産の分割について民法では「相続人当事者間で決めること」としか規定されていないのです。

法定相続割合など一定度の基準はあるものの、さらに具体的な基準は何も無いことから、相続発生時の遺産分割は様々なトラブルが絶えないのです。

被相続人の遺言があれば、遺言書通りの遺産分割が行われ、トラブルが起きる可能性が低くなります。

もし遺言がない場合、遺産分割は相続人間で話し合い誰が・どの遺産を・どの割合で相続する「遺産分割協議」で決定されます。

相続人同士の協議分割の場合、すなわち遺産分割協議の結果として民法の原則である法定相続割合と異なる分割割合、あるいは被相続人の遺言とは異なる分割割合になったとしても、それが各相続人の自由な意思に基づくものである限り有効です。

遺産分割協議は相続人全員の合意をもって成立します。

したがって、原則として相続人全員が一堂に会して話し合うことが好ましい形でしょう。

しかし、遺産分割協議の決定そのものは必ずしも相続人全員が一堂に会して行う必要はありません。

実際には相続人が各地に分散していることも多いことから、全ての相続人に遺産分割の内容や各相続人の主張が明確にされていれば、本人不在の協議も認められています。

なお、遺産分割協議が合意に至らない場合は、民法第907条第2項「遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる」にあるとおり、家庭裁判所における調停または審判に移行することになります。

なお、遺産分割調停では離婚などの家事事件と異なり調停前置主義は採用されておらず、調停を経ずして審判や裁判に移行することも可能です(ただし、多くの遺産分割事案では審判の前に調停を行っているのが現状です)。

相続にかかる税金

相続税とは

相続によって財産を取得した人に課される税金(国税)のことを、相続税といいます。

相続税は各種法律や制度により財産評価額の算定など計算のルールが細かく定められており、非常に複雑です。

以下では相続税の計算に関するアウトラインをご紹介しますが、実際の計算には各家庭の特殊事情を反映する場合が多く、税理士などの専門家と相談しながら進めることをお勧めします。

相続税率とは

2019年3月時点における相続税率は以下のとおりです。

別途算出された相続財産評価額に以下の税率を乗じ、カッコ内の金額を控除して得られた額が相続税となります。

・1,000万円以下:10パーセント(控除額なし)

・3,000万円以下:15パーセント(50万円)

・5,000万円以下:20パーセント(200万円)…

column
2019.3.31

遺産相続の二次相続とは?知って得する二次相続の仕組み

今まさに相続が発生した人に対して私がいつもお伝えしたいと思うのは、

「本当の相続が終わるのはご遺族が二次相続まで経験してから」だということです。

ほとんどの人にとって、相続の発生は一度で終わりません。

例えば、お父さんが亡くなった後に、お母さんが亡くなった場合、その両親の子どもには二次相続が発生します。

そして、最もお伝えしたいことは、一次相続に比べて二次相続は相続税が高額になるため二次相続までを考慮して対策をする必要性です。

今回は、二次相続の基本事項から一次相続と比較した相続税のシミュレーション、二次相続に向けた各種の対策まで解説しております。

相続の話は、発生したその時にできる限りの対策を全て完了するのが鉄則です。

せっかく調べた知識を忘れた頃にそれが引き起こるのが人生であり、それが相続と言えます。

一次相続が発生した方は二次相続まで見据えて対策し、まさに今二次相続が発生している方はその対策に、ぜひこの記事をお役立てください。

二次相続とは?

たとえば、2015年に相続人の父が亡くなり2018年に母が亡くなったとします。

このうち2015年に父の遺産を配偶者(母)が相続することを一次相続といい、2018年に母の遺産をご遺族が相続することを二次相続といいます。

つまり、二次相続とはとあるご夫婦が亡くなられた時の遺産を相続することです。

二次相続における相続分と税率

二次相続の相続分

法定相続割合について規定している民法第900条第4号によりますと、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。

ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」とあります。

二次相続では配偶者がいないわけですから、亡くなった人の子ども・祖父母・兄弟姉妹の順番で相続することになります。

そして、同順位の相続人が複数名以上いる場合は特別受益や遺言による特別の指定がないかぎり、原則として同順位の相続同士で均等して相続します。

二次相続の税率

相続によって財産を取得した人に課される税金(国税)のことを、相続税といいます。

2019年3月時点における相続税率は、以下のとおりです。

別途算出された相続財産評価額に以下の税率を乗じ、カッコ内の金額を控除して税率をかけた金額が相続税となります。

なお、一次相続と二次相続において相続税率に差分は設けられておらず、同一です。

・1,000万円以下 :10パーセント(控除額なし)

・3,000万円以下 :15パーセント(50万円)

・5,000万円以下 :20パーセント(200万円)

・1億円以下  :30パーセント(700万円)

・2億円以下  :40パーセント(1,700万円)

・3億円以下  :45パーセント(2,700万円)

・6億円以下  :50パーセント(4,200万円)

・6億円超   :55パーセント(7,200万円)…

column
2019.3.31

相続における嫡出子と非嫡出子の関係とは

失礼に思う方もいるかもしれませんが、私の立場としては、率直にお伝えする必要があります。

亡くなった人の戸籍謄本を取り寄せたら隠し子(非嫡出子)が発覚した、というケースは、遺産相続においてよくあるケースだと言わざるを得ないでしょう。

非嫡出子への遺産相続をドラマチックに捉えすぎるとトラブルが長期化しやすい傾向がありますので、客観的な事実として対処できる専門家に代理交渉をしてもらうのが早期解決のポイントです。

民法で相続人になることが認められている子供とは、被相続人と法律上の親子関係にある者のことをいいます。

法律上の親子関係とは実子(嫡出子・胎児)、非嫡出子および養子(普通養子・特別養子)のことです。

認知されていない子供・配偶者の連れ子・養子縁組していない里子・他夫婦と特別養子縁組をした子供と親の関係は法律上の親子関係とは認められないため、子供には親が死亡し被相続人となった場合でも法定相続人になることはできません。

民法の規定において法定相続人と認められるのは、配偶者を除き被相続人と血のつながりのある直系の親族、すなわち「血族」であるためです。

いわゆる義理の親や義理の兄弟姉妹に法定相続となる権利が認められていないのは、これを根拠としています。

ですが、先述した通り、親子関係の法律の記載には、被相続人の実の子ではない非嫡出子も含まれています。

つまり、非嫡出子であっても、所定の条件を満たせば法律上の親子関係が認められて法定相続人になる権利も認められるのです。

本コンテンツでは、相続における嫡出子と非嫡出子の考え方から、非嫡出子であっても法定相続割合が認められる要件についてご紹介します。

そもそも嫡出子と非嫡出子とは

嫡出子

法律上の婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子供、つまり実子のことを「嫡出子」といいます。

ここでいう法律上の婚姻関係とは、役所に婚姻届と出生届を提出・受理されており、民法上も戸籍法上も正式な夫婦であり、親子関係にあることをいいます。

嫡出子には父母の実の子供である生来嫡出子のほかに、生来嫡出子ではないものの父の認知もしくは父母が法律上の婚姻関係になることにより嫡出子となった準正による嫡出子が含まれます。

戸籍謄本上は、父母との続柄欄には、嫡出子(実子)は出生順に「長男・次男~」「長女・次女~」と記載されることで非嫡出子と区別できます。

非嫡出子

これに対して非嫡出子とは、内縁の配偶者や愛人など法律上の婚姻関係にない男女の間で生まれた子供のことをいいます。

戸籍謄本上、非嫡出子は嫡出子と異なり「男」または「女」と表示され、「婚外子」と呼ばれることもあります。

嫡出子と非嫡出子の相続分

相続における第1順位の相続人は、民法第887条第1項「被相続人の子は、相続人となる」の規定による「子供」です。

被相続人の子供である限り、性別、年齢、既婚・未婚、実子・養子、氏の相違、国籍などが問われないのと同様に、嫡出子・非嫡出子の別も問われません。

胎児も相続人になることができます。

ただし、非嫡出子の方が相続する場合は後述する要件を備えていることが前提です。

法定相続分の法改正について

民法第900条第四号によりますと、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。

ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」とあります。

つまり、嫡出子であろうと非嫡出子であろうと子供の法定相続割合は同一なのです。

従前は、ただし書き以降の部分に「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、」との文言がありました。

非嫡出子は嫡出子が相続する割合の半分しか相続することが認められなかったのです。

この不平等性について2013年9月に最高裁判所で違憲判決が出たことから、2013年12月に民法第900条が改正され相続における嫡出子と非嫡出子の法定相続割合は平等となっています。

嫡出子の相続分

民法第900条第一号では、法定相続割合について「子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする」と定めています。

たとえば、配偶者の相続分および嫡出子の相続分は2分の1ずつです。

嫡出子が数人いる場合には、嫡出子それぞれの相続分は均等になり、これは嫡出子と非嫡出子が混在している場合でも同様です。

また、嫡出子の全員が非嫡出子の場合は全員嫡出子の場合と同様に均等で相続します。

つまり、先妻(夫)の子と後妻(夫)の子の間には相続人としての地位に差はありません。

非嫡出子の相続分

先述のとおり、改正後の民法第900条第四号では嫡出子と非嫡出子の相続割合について差分を設けていませんので、非嫡出子の相続割合は嫡出子と同等になります。…

2019.3.31

指定相続分で遺産の割合を自由に決められる!

この記事にたどり着いた方は、未来の家族のために行動を起こそうとされているのだと思います。

遺言とは、自分が死んだ後の家族の人たちを想い、大きな感謝と愛情を表現することができる最後のチャンスです。

法律で定めている遺産相続分は、あくまで均等に計算された割合です。

自身の財産を民法で定められた法定相続とは異なる方法で、自分の大切な人に大きな割合で相続させたいとき、被相続人(遺産を渡す人)は遺言で指定することができます。

この記事では、遺言方法の種類と、指定相続分について解説します。

遺言によるあなたの言葉は、未来のご家族の関係に計り知れない影響を与える言葉です。

ぜひ、この記事の内容をご理解の上、ご自身の望みを遺言に書き記し、ご家族への感謝と愛情、そしてさらなる信頼関係を築いてもらうことが、私の願いです。

指定相続分は遺言によって決まる!

遺言とは

遺言とは、あなたの死後に、あなたの財産をあなたの希望通りに相続させるための方法です。

この遺言書を残すだけで、法が定める法定相続人に対する法定相続分による相続よりも、遺言内容が優先されます。

ただし、法的に有効な遺言書を残した場合のみ優先されます。

そして、公正証書遺言以外の遺言書は、原則として家庭裁判所の検認手続きを経たものでなければ、遺言書の執行ができません。

一般的には、遺言内容によって相続の分配まで明確に決定されます。

そして、遺言内容において「妻に全財産を残す」、または「妻に全財産の3分の2を残し、息子に全財産の3分の1を残す」等、法定相続分と異なる割合で遺産相続分を明記されたものを「指定相続分」といいます。

遺言の種類

法定相続人同士の人間関係が良好で、遺言として言葉で言い残しただけで、法定相続人の全員がその遺言に従い、速やかに相続が決定する場合もあります。

遺言書もなく口約束ですから、家庭裁判所の検認等手続きは必要ありません。

しかし、死後に大切な人々に争うことなく相続して欲しい場合は、一般的に遺言書を残します。

遺言書の種類は、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言が一般的です。

自筆証書遺言

一番身近で簡単な遺言書です。

「自分が死んだ後に、大切な人に財産を残したい」という思いを手紙に残すような感じの遺言書です。

本人直筆の遺言書として、本人が書いたことがわかるように、消えない筆記用具で、全文直筆の手書きの遺言書です。

便箋にお手紙を書き残すような気持ちで気軽に書くことができます。

しかし、下記の要件が記載されていなければ、自筆証書遺言は無効になりますので、下記の項目をよく読んでからお書きください。

・ 「遺言書」と冒頭に明記(表題として明記)

・ 遺言内容(財産の具体的分割方法:「誰に何をどのように」あるいは「誰にどれだけを」)

・ 付記:訂正印(署名下の印鑑)を押した加筆、訂正箇所の明記。必要なら気持ちや希望も書ける

・ 日付(○年○月○日:年は、西暦でも元号でも可)

・ 署名・押印(シャチハタはNG)

冒頭に、「遺言書」であることを明記し、次に自分の財産を誰にどのように相続させるのかを、具体的に、誰でもわかるように書き残します。

また、遺言内容に関しては、気が変わったらいつでも書き直せば良いのです。

遺言書が複数となったら、最も新しい日付の遺言書が法的に有効な遺言書となります。

また、財産目録や、財産の明記に誤記がないように、添付資料(*日付と署名押印必須)としてなら、コピーや写真、ワープロやパソコンで作成したものでも可、というふうに、2019年1月から遺言書の制度の法改正がありました。

2019.3.31

限定承認を知る、相続前に知っておきたいこと

相続のときによくあることの一つに、ご遺族の方も知らなかった遺産というものがあります。

その遺産の中には、プラスの資産もあればマイナスの負債が含まれる場合もあるでしょう。

そして、マイナスの負債を相続したいという人は少ないと思います。

ですが、現行の法制度では、預貯金や不動産などプラスの財産を相続する人は住宅ローンなどマイナスの財産も引き継ぐことを原則としており、プラスの財産だけ相続することは認めていません。

そこで、被相続人(亡くなった人のこと)が残した遺産に対して相続が発生した場合、相続人が取る選択肢は「単純承認」、「限定承認」、「相続放棄」の3つの選択肢を選べます。

どうしてもマイナスの財産を引き継ぎたくない人は、限定承認や相続放棄などの手続きをとる必要があります。

本コンテンツでは、このうち限定承認にクローズアップして手続きの方法やメリット・デメリットについてご説明していきます。

なお、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に手続きをしないと、全ての遺産を無制限で相続する「単純承認」が適用されてしまいますので、マイナスの遺産の相続に考慮がある人は、お早めに税理士にご相談されることを本当にお勧めします。

限定承認は遺産相続方法のひとつ

限定承認ついて、民法第922条では「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる」と定められています。

つまり、限定承認を選べば、被相続人のプラスの財産で負債を清算した後、プラスの財産が余った場合に遺産として相続する事を表明できるのです。

民法上、相続による財産上の権利義務の承継は、相続人が相続するか否かの意思に関係なく、また相続人が相続開始を知っていたかどうかにかかわらず当然に生ずるということになっています。

民法第896条「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」とあるように、相続財産にはプラスの財産だけでなくマイナスの負債も含まれます。

たとえば、常に不動産・現金・有価証券などのプラスの財産だけが相続財産とは限らず、借金などのマイナスの負債も相続財産に含まれます。

そして、場合によってはこのマイナスの負債が多いこともあります。

マイナスの負債がプラスの財産よりも多い遺産を相続することは、多くの相続人は喜んで受け入れないでしょう。

また場合によっては、たとえプラスの財産だけであっても相続人の意思によりその遺産を相続することを選ばない場合や、自分以外の相続人にすべて譲りたいと思う場合も考えられます。

そこで民法では、相続の単純承認・放棄の制度を設け、相続する遺産を確定させるか(単純承認)または否認するか(相続放棄)の選択の自由を相続人に与えているのです。

被相続人が残した遺産がプラスの財産とマイナスの負債が混合している場合、マイナスの負債をプラスの財産で弁済することが可能であれば、単純承認または限定承認を選択することになるでしょう。

限定承認を選択した場合、相続税評価額はプラスの財産からマイナスの負債を差し引いた正味の財産について計算され、それが基礎控除額(3,000万円+法定相続人の人数×600万円)や配偶者控除額(1億6,000万円)の範囲を超えた分に対して相続税が課税されます。

なお、限定承認は、すべて相続人の合意のもと共同で行う必要があり、他の単純承認や相続放棄を同時併用することはできません。

限定承認以外の相続方法

単純承認

単純承認とは、プラスの財産に加えマイナスの負債についても遺産分割協議などで決めた割合通りに相続することです。

相続の態様として民法では単純承認を原則としており、実際の相続においても限定承認や相続放棄と比較すると圧倒的に単純承認が多いようです。

単純承認に関する民法第921条の規定をみてみましょう。

「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二、相続人が第915条第1項の期間(3ヶ月間)内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

三、相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。

ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。」

相続の単純承認は限定承認や放棄と異なり特別の方式は要請されておらず(不要求方式)、相続人が積極的に単純承認の意思表示を示す場合のほか、相続人に上記民法第921条のような一定の行為があれば単純承認したものとしています。

限定承認や相続放棄の手続きをせずに自動的に単純承認による相続形式になることを、「法定単純承認」といいます。

相続放棄

2019.3.31

換価分割は遺産分割方法の一つ、その他分割方法との違いは?

被相続人が亡くなった直後の「共有」状態にある遺産は「遺産分割」の手続きを経て、最終的に各相続人の所有や権利に属することになります。

この記事をご覧の方は、おそらく遺産分割において現金以外の遺産をどのように相続をするのかを懸命に話し合われていることでしょう。

現金は数字だけ見れば協議できる一方、土地や住宅などの不動産はその遺産価値を明確に分割しづらく、税金制度も含めて検討されていることでしょう。

おそらく、この記事にアクセスしているあなたは「悪い事が起きた」にも関わらず立ち上がり、現金以外の複雑な遺産についての話し合いを進めようと勇気を振り絞っているのだと思います。

勇気あるあなたの遺産分割の話し合いが前進するために、今回は現金以外の遺産価値をどのように相続人と分割するのかを決める「換価分割」を解説していきます。

本コンテンツでは、不動産の遺産分割方法について重要な換価分割の基本的な知識を得て頂くとともに、特に注意して頂きたいポイントについてご紹介します。

読み慣れない説明箇所もありますが、あなたの遺産分割が後悔なく解決されるように、詳細に説明していきます。

最後に、この記事を読み終わった方へ、弁護士と税理士を本当にお勧めしたい理由をお伝えします。

換価分割とは??

換価分割とは、各相続人の同意のもと分割前の相続人全員で共有状態となっている不動産を相続人の共有名義あるいは代表する相続人の名義で第三者に売却し、各相続人がそれぞれの相続割合に応じて売却代金を取得することです。

もっと分かりやすく言うと、お金の形ではないものをお金に換金して、そのお金を相続人同士で合意した割合で分配する方法です。

他の遺産分割方法との違い

現物分割

現物分割とは、亡くなった方の遺産である土地、建物、現金をそれぞれ別の相続人が100所有する分割方法です。

換価分割と異なるのは、それぞれの遺産の金銭価値が違うケースが多く、すなわち各相続人が所有する遺産の価値が不平等となり得る点です。

さらに、不動産自体を分割することもあります。

例えば、亡くなった方名義の土地を各相続人間で物理的に分割して、分割後の不動産を各相続人名義で100パーセント単独所有とする方法です。

ただし、仮に均等の面積で分割するとしても、分割後のそれぞれの不動産に道路への接面状況や高低差、日照状況などに違いが出ると、財産価値の観点から不平等な遺産分割になります。この場合は一般的に面積割合で調整することになります。

しかし、そもそも不動産は価額的に均等に分けることが難しいことから、調整の過程で相続人それぞれに主張の食い違いが生じ、トラブルに発展してしまう可能性があります。

また、周辺の環境から一団の土地を分割することで1坪当たりの価額が低くなる(面少減価)場合、あるいは分割したあとの土地の面積が建物を建築することすら不可能なほど極端に狭くなってしまう場合は、現物分割そのものを再検討する必要があります。

現物分割をするときは、協議の際に知識を持つ専門家と一緒に検討しなければいつまでも合意ができない恐れがあると言えるでしょう。

代償分割

現物分割が難しい不動産である場合、当該不動産を特定の人が相続し、その不動産を相続する代わりに他の相続人にお金を支払う方法です。

例えば、実家の住宅を相続した人が、相続しなかった人に1000万円を代償として支払うのが代償分割です。

代償分割の対象となる不動産の経済的価値をどのように評価するか、当該不動産を相続する人が代償分の金銭を確保できているかがポイントになります。

共有

共有とは、上記のような分割をせずに、ひとつの不動産を相続人の数とそれぞれの相続割合に応じて、それぞれの持分という形で共同所有することです。

円満かつ公平な方法に思えますが、相続人の間で最もトラブルになりやすいのが共有なのです。

まず、民法では共有する不動産の売却や建て替えなどを行う場合、原則としてその不動産の共有者全員の合意が必要と定められています。

相続税納税資金が不足していた際に物納する場合も同様で、共有者全員が物納要件を満たしたうえで共有者全員で物納しなければなりません。

これらについて共有者間で意見の食い違いが生じた場合、裁判にまで発展する可能性があります。

共有者が配偶者や子供なら、このような心配は少ないかもしれません。

しかし、時が流れて相続発生時の共有者が死亡してその相続人が新たな共有者となり、共有による相続を繰り返すと、権利関係は複雑となってしまいます。

たとえば、叔父・叔母が甥・姪と不動産を共有するようなことや見知らぬ人が共有者になっていたということも想定されるのです。

このようになると、トラブルが生じる可能性は一層高くなります。

後々の子孫のことを考慮すれば、共有による相続は避けたほうがよいでしょう。

換価分割のメリット・デメリット

メリット

各相続人の相続割合通りに分割することが難しい不動産でも、売却・換価後の金銭であれば平等に分けることが可能です。

また、例えば、現金ではなく不動産を相続した人の遺産価値が下がった場合、なぜ現金を相続した人との不平等感が高まります。…