相続は多くの人が経験しますが、その制度の複雑さと難解な専門用語の多さから、相続前に知識を得ておくことは敬遠されがちです。
この記事にたどり着いた方は、今、相続に関する情報を得ようと立ち上がったものの、心労も相まってより複雑に見えているかもしれません。
私から1つアドバイスできるなら、相続は今この瞬間が全てではないと言うことです。
何世代も前から選択されて残されてきた遺産もあれば、これから子供達に何世代にも渡り相続される遺産もあります。
相続とは、ご親族の意志を汲み、将来のご家族に大きな影響を与える人間特有の愛情表現です。
本コンテンツの目的は、相続のことについて何も知らない方に相続の基礎知識を理解していただき、ご遺族が望む相続の仕方を発見してもらうことです。
そして、発見してもらえたなら、次は税理士や弁護士などの専門家にご相談することをお勧めします。
彼らは、ご遺族が望む相続を実現するプロフェッショナルです。
相続に関する難解な専門用語や制度と直面しても、ご自身の望む未来と専門家のサポートがあれば必ず乗り越えて完了できます。
あともう少し、勇気を振り絞ってこの記事を読み、なるべく早く専門家へのご相談を検討してみてください。
相続とは
相続とは、被相続人(亡くなった人のこと)が死亡または失踪宣告・認定死亡を受けたことを発生理由に、被相続人が所有していた財産や権利義務を被相続人の配偶者や子どもなど特定の人が引き継ぐ制度のことです。
遺言によって財産を受け取る遺贈、贈与者が死亡したら受贈者に財産を残す契約を生前に贈与者・受贈者間で締結していたことにより財産を受け取る死因贈与についても、相続の定義に入ります。
相続は民法や相続税法などの各種法律や制度により規定され、これに基づき被相続人から財産を引き継ぐ相続人は遺産分割、相続税の申告・納付などの一連の手続きを行わなくてはなりません。
相続財産の分け方
民法第906条では、遺産の分割について「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定められています。
つまり、遺産の分割について民法では「相続人当事者間で決めること」としか規定されていないのです。
法定相続割合など一定度の基準はあるものの、さらに具体的な基準は何も無いことから、相続発生時の遺産分割は様々なトラブルが絶えないのです。
被相続人の遺言があれば、遺言書通りの遺産分割が行われ、トラブルが起きる可能性が低くなります。
もし遺言がない場合、遺産分割は相続人間で話し合い誰が・どの遺産を・どの割合で相続する「遺産分割協議」で決定されます。
相続人同士の協議分割の場合、すなわち遺産分割協議の結果として民法の原則である法定相続割合と異なる分割割合、あるいは被相続人の遺言とは異なる分割割合になったとしても、それが各相続人の自由な意思に基づくものである限り有効です。
遺産分割協議は相続人全員の合意をもって成立します。
したがって、原則として相続人全員が一堂に会して話し合うことが好ましい形でしょう。
しかし、遺産分割協議の決定そのものは必ずしも相続人全員が一堂に会して行う必要はありません。
実際には相続人が各地に分散していることも多いことから、全ての相続人に遺産分割の内容や各相続人の主張が明確にされていれば、本人不在の協議も認められています。
なお、遺産分割協議が合意に至らない場合は、民法第907条第2項「遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる」にあるとおり、家庭裁判所における調停または審判に移行することになります。
なお、遺産分割調停では離婚などの家事事件と異なり調停前置主義は採用されておらず、調停を経ずして審判や裁判に移行することも可能です(ただし、多くの遺産分割事案では審判の前に調停を行っているのが現状です)。
相続にかかる税金
相続税とは
相続によって財産を取得した人に課される税金(国税)のことを、相続税といいます。
相続税は各種法律や制度により財産評価額の算定など計算のルールが細かく定められており、非常に複雑です。
以下では相続税の計算に関するアウトラインをご紹介しますが、実際の計算には各家庭の特殊事情を反映する場合が多く、税理士などの専門家と相談しながら進めることをお勧めします。
相続税率とは
2019年3月時点における相続税率は以下のとおりです。
別途算出された相続財産評価額に以下の税率を乗じ、カッコ内の金額を控除して得られた額が相続税となります。
・1,000万円以下:10パーセント(控除額なし)
・3,000万円以下:15パーセント(50万円)
・5,000万円以下:20パーセント(200万円)…